施工BIMとは?メリットや設計BIMとの違いを詳しく解説

2025年1月15日

施工BIMとは?メリットや設計BIMとの違いを詳しく解説

施工BIMとは、建築・建設業界において利用が拡大しているデジタルツール「BIM」を、施工段階で活用することをいいます。これは、設計段階で作成されたBIMのデジタルデータを活用し、施工プロセス全体を効率化する手法です。
施工BIMは、現場での干渉チェック、施工手順の検討、施工図作成、数量算出などを行います。さらに、現場の業務に直結して作業ミスや手戻りを減らすことで、プロジェクト全体の生産性の向上を実現します。本記事では、施工BIMを活用するメリットや設計BIMとの違いについて、わかりやすく解説します。

目次

  1. 施工BIMとは?
  2. 施工BIMの活用メリット
  3. 施工にも対応するArchicad
  4. まとめ

1. 施工BIMとは?

施工BIMは、設計BIMの3次元モデルと属性情報を施工段階で活用できるようにしたものです。デジタルデータを活用し、設計と現場をつなげる施工BIMについて説明します。

施工BIMの概要

BIMとは、建築物の3次元モデルと部品や部材などの属性情報を併せ持ち、設計から維持管理までのライフサイクルで建物情報モデルを構築するシステムです。その中でも施工BIMとは、建築・建設プロジェクトの施工においてBIMを活用することを指します。

施工BIMで行う作業とは

施工BIMは、主に次のような作業を行い、建設プロジェクトの効率性、精度、品質を向上させていきます。

1)施工図の作成と詳細化
設計BIMモデルを基に、施工に必要な図面や詳細情報を追加します。これにより、現場での施工に必要なデータを提供できます。

2)干渉チェック
予め、鉄骨の構造部材や設備の配管などの干渉を可視化し、施工前に問題を解決します。

3)工程シミュレーション
工程計画を可視化し、進捗やリスクをシミュレーションします。

4)資材管理と手配
必要な資材の数量を正確に算出し、適切に管理したり、発注プロセスにつなげたりできます。

5)現場の進捗管理
現場の状況をリアルタイムで3次元モデルに反映し、施工計画との整合性を確保します。

設計BIMと施工BIMの違い

設計BIMが「計画の可視化」を重視するのに対し、施工BIMは「現場での実行の可能性」に焦点をあてています。

1)設計BIMについて
設計BIMは、建物を設計する際、建築物の形状や意匠、構造の検討を目的としています。デザイン設計や構造設計に関わる関係者が、建築物全体のコンセプトやデザインの整合性を図るために活用します。視覚的にわかりやすい3次元モデルや干渉チェックを通じて、設計ミスを減らし、設計意図を正確に伝えることが重視されます。

2)施工BIMについて
施工BIMは、設計BIMを基に施工段階に適応させたものです。施工に必要な詳細情報をモデルに追加し、干渉の確認、工事関係者の合意形成、資材管理、施工手順の計画、現場での進捗管理などに活用できます。また、施工現場の作業に対応したデータを提供することで、施工精度の向上と効率アップにも寄与します。

2. 施工BIMの活用メリット

続いて、施工BIMを活用するメリットを具体的に説明します。

施工BIMを活用するメリット

1)品質・精度の向上
施工をする前に、3次元モデルで干渉チェックをすることで、配管やダクトなどの設備間の干渉を早期に発見・修正でき、施工段階での手戻りを防ぎます。また、複雑な納まりも3次元で確認できるため、現場での判断ミスを減らし、精度の高い施工が実現します。 特に天井裏など、配管・ダクトが集中している個所で、その効果は高くあらわれます。

大末建設株式会社での活用事例。事務室天井内の熱交換機、空調機をはじめ、複数の設備が梁と干渉。また、ダクト同士の干渉や小梁の貫通補強が未計画だったため、是正した。

2)生産性・効率化のアップ
BIMモデルから正確な数量を自動で算出できるため、資材の過不足を防ぎ、無駄のない調達計画が立てられます。また、基本設計の段階から施工手順などの施工についての検討ができれば、容易にシミュレーションできるため、工程管理もしやすく、作業の集中や遅延が防げるなど、工期短縮とコスト削減を図れます。BIMを見ながら施工方法も事前に相談でき、職人さんたちの準備も万全に整えることができます。

古郡建設株式会社での活用事例。Archicadを使うと、モデル形状を変更すれば、連動して体積や表面積も自動で再計算ができるのは、積算する上で大きな利点になる。

3)コミュニケーションの改善
3次元モデルを用いることで、図面だけでは伝わりにくい複雑な構造や施工手順を、発注者や協力業者と視覚的に共有できます。今後、さらに増えていく外国人労働者への指示出しも、3次元でできることにより、言葉の壁の超えたコミュニケーションが可能に。
さらに、現場に行かずとも、遠隔での打ち合わせが効率的に行えるようになり、移動時間の削減にもつながります。

佐伯綜合建設株式会社での活用事例。確認したい個所に印をつけて、画像とともにBIMxからBIMcloudを経由して質問を送る。テキストコミュニケーションだけではなく、イメージを添えることで、作業の高速化、効率化、フィードバックの正確さをもたらしてくれる。

4)安全管理、リスク管理の実現
仮設計画や重機配置のシミュレーションにより、安全面の確認ができます。特に、クレーンを使う揚重作業や高所作業など、危険作業の作業範囲や動線を可視化することで、事故防止に役立ちます。

石井工業株式会社での活用事例。4期にわたる小学校の長期工事において、工事区域、工期によって変わる生徒たちの避難ルートや通学ルートを可視化。誰にでもわかりやすく説明ができるようになっている。

5)技術の継承や働き方改革への貢献など
建設現場のDX推進により、若手技術者の早期戦力化や技術継承の効率化が図れます。また、施工の効率化による労働時間の削減は、働き方改革や人材確保にもつながっていきます。

6)データ活用
施工段階で活用したBIMデータは、類似案件での見積もり精度の向上や、AI活用による施工計画の最適化にも活用できます。また、施工記録のデータは、維持・管理や将来の改修の情報として、建築物のライフサイクル全体で活用できます。

施工BIMで行う作業の詳細

施工BIMでの中心的な作業は、施工図作成と干渉チェックです。設計BIMモデルを基に、より詳細な施工用のモデルを作成し、設備配管やダクトなどの干渉を事前に確認します。特に、設備が集中する個所では、配管ルートの最適化や施工スペースの確保などについて検討します。

次に重要な作業が、数量拾いと工程計画です。BIMモデルから必要な部材の数量を自動で算出し、発注する数を正確に把握します。また、工期や稼働スケジュールなど、時間軸のデータを工程情報に組み込むことで、施工手順のシミュレーションや工程の最適化を行います。

現場では、タブレット端末などを使用して施工図の確認や施工記録の入力を行います。

3. 施工にも対応するArchicad

国内でも多数の利用実績があるArchicadは、設計段階だけではなく、施工段階にも対応しています。

施工にも対応するArchicad

Archicadは、設計段階から施工段階まで、シームレスなBIMワークフローを実現する高機能ソフトウェアです。施工段階においては、次の機能を提供します。

施工図の作成機能では、設計BIMモデルから直接データを引き継ぎ、効率的な躯体図の作成が可能です。平面詳細図から躯体図まで、必要な情報を段階的に追加していけるため、整合性の高い図面作成をサポートします。

3D施工図の作成機能では、通常の水平・垂直な断面図に加え、斜め方向からの立体的な表現が可能で、複雑な納まりの説明に威力を発揮します。これにより、現場での意思疎通が格段に向上します。さらに、ビジュアライゼーション機能により、従来の2D図面では伝わりにくい部分も、立体的に可視化して共有できます。

3D で「見える化」すれば納まりの不具合も一目瞭然。馬淵建設株式会社の活用事例。

参考:https://graphisoft.com/jp/solutions/products/archicad

4. まとめ

施工BIMは、建設業界のDXを牽引するツールであり、現場の生産性の大幅な向上が期待できます。今後、人口が減少し、建設業界の担い手が不足するなか、施工BIMの導入は、働き方改革や技術継承といった課題解決につながる不可欠な取り組みともいえるでしょう。

Graphisoftでは、施工段階の業務の効率化とプロセスの円滑化を実現するArchicadを提供しています。施工現場の生産性の向上を図る選択肢の1つとしてご検討いただけます。お気軽にお問い合わせください。

Archicad / Graphisoft



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