石井工業株式会社
施工管理とプレゼンにBIMを活用し60%の工数削減に成功 地場ゼネコンから、日本のBIM推進をリードする

石井工業株式会社

石井工業株式会社は、1904(明治37)年に創業した100年企業である。千葉県香取市に本社を構える地場ゼネコンとして、総合建築業を通じて社会貢献を担ってきた。特に千葉・茨城においては、物流倉庫、冷凍冷蔵倉庫、各種工場の建築実績のほか、公共工事などの社会基盤の整備など、多数の実績を誇る。このような伝統企業が、現在どのようにBIMを活用し、さらに、これからの建設業にどのように寄与していくのか、代表取締役の石井良典氏と、実務を担当する営業部主任の北田望美氏に詳しく伺った。

石井工業株式会社

  • 所在地 千葉県香取市
  • 代表者 石井 良典
  • 創 業 1904年5月
  • 創 立 1958年7月
  • 業務内容
    土木建築施工請負及び土木建築資材の販売
    不動産の売買・仲介及び管理
    上記に関連する一切の業務ほか

官民一体となって、
若手がBIM推進の中心に

「ますます建築が複雑になるなかで、竣工後の管理をする面で非常に可能性を感じています。これは私だけでなく、国土交通省も同じことを考えているでしょう」と話すのは、石井工業の代表取締役石井良典氏だ。

石井工業がBIMを導入したのは、2015年。現在、同社のBIMを担当する北田望美氏の入社と同時に、Archicadを活用した施工管理を行うようになった。ここで北田氏のプロフィールを紹介しよう。

代表取締役
石井 良典 氏

“「建築した建物の管理を視野に入れ、国土交通省もBIM活用を後押ししています」と石井氏”

営業部 主任
北田 望美 氏

“「前職で、建設工事の発注条件を出す際、複雑な条件を可視化すべくArchicadを手探りで使いました」と北田氏。今ではArchicadを操る10年選手だ。”

北田氏はもともとインフラ系の発注・維持管理を行う会社に勤務しており、結婚を機に石井工業に転職。
前職で、より視覚的に、協力会社に向けて建設工事をプレゼンするツールを探していたところBIMと出合い、独学でArchicadを学び始めた。
「前職で携わったインフラ工事は複雑で、発注条件を提示するのに言葉だけで伝わりにくいものでした。
そこで“一目瞭然で伝わるツール”を探し、Archicadの無料体験版で作ったボリュームモデルを添付資料として使いました」と北田氏は振り返る。

1度使ってから1~2年はBIMに触れずにいたが、転職後に再びBIMを活用する転機が訪れた。北田氏がBIMを使いこなす姿と重ねて「国土交通省も加速度的にBIM導入に力を入れています。

こういった新しいツールを推進しているのは、北田さんと同世代の20代、30代のワーキンググループです。我々の次の世代のスタンダードになっていくでしょう」と語る代表の石井氏。官民一体となって、若手を中心にBIMが浸透し始めている。それでは実際に同社ではどういった使い方をしているのか紹介する。

“3Dモデルを作ったことで、大工が天井裏からビス止めをするための出入口が必要なことが判明。
現場で担当する協力業者とともに具体的な手順を打ち合わせた。”

Archicadの活用事例その①
2Dの図面を3Dで表現し、施工管理に活用

“「横利根閘門」における監視塔の仮設足場工事”

北田氏が入社してすぐに担当したのは、茨城県稲敷市と千葉県香取市の県境付近に位置する横利根川にかかる「横利根閘門」における監視塔の仮設足場工事だ。
Archicadでつくった3Dモデルを使って職人たちと打ち合わせをしたことで、予想外のよい反応を得られたという。「横利根閘門監視塔の足場工事は直近直下が道路だったので通常の足場工事ができませんでした。

そこで事前に図面を理解するために3Dモデルをつくって、壁つなぎが取れない場所や、複雑なせり出し工事の具体的な構造を可視化しました。このモデルを見ながら熟練の鳶職人たちと打ち合わせをしたところ『すごくわかりやすい!』と言ってもらえ、その後の工事も手戻りがなくスムーズに進みました」と北田氏。
これまでBIMは「設計」の場面で活用するもので、施工管理での活用方法がつかめずにいたというが、「BIMは施工管理の相棒になる!」と確かな手ごたえを感じた成功体験だった。

また、千葉県香取市にある香取神宮「神徳館」の施工管理では、複数の業種の協力業者が同時に工事を進める中で、効率のよい手順を探るのにBIMが一役買っている。
寺院建築特有の「格天井」をつくる際、2Dの図面だけではわかりにくい複雑な構造を、あらかじめ3Dで見える化していることで、互いの業者の仕事を理解しながら柔軟に工程を決めることができた。施工管理を担当していた北田氏は「内装業者と大工の工程を調整するときに、順序を間違えると工事ができなくなる箇所がでてきます。
こういったモデルを使って打ち合わせをすることで、具体的な手順の確認や調整ができました」と振り返る。さらに、公立中学校の校舎の大規模改修工事では、市の職員との協議資料にも3Dモデルを活用した。
4期にわたる長期工事の工事区域、工期によって変わる生徒たちの避難ルートや通学ルートの確認もBIMを使うことで誰にでもわかりやすく説明ができるようになっている。

“Archicadでつくった格天井の天井裏の3Dモデル3Dモデルをつくることで、「現場で行う作業が先回りして見えるようになった」と北田氏は話す。”

“1期工事から4期工事までの工事区域と仮設工事を可視化”

Archicadの活用事例その②
営業部でプレゼン資料作成

北田氏は、施工管理でキャリアを積んだ後、出産を機に営業部に異動した。具体的な仕事の内容は、施主向けの提案資料作成で、現場で得た知識を戦力に、より納得感を得てもらうためのプレゼンツールをつくっている。これまで、営業部で得られたBIM活用のメリットは大きく2点。
ひとつは施主に対する説得力のあるプレゼン手段である点、もうひとつは社内の業務効率化に大きく貢献できた点だ。「営業部でBIMを使って提案資料を整えておくことで、具体的なご要望をお聞きできるようになりました。
弊社は倉庫の建築工事が多いので、出入口のプランが練りやすかったり、空間の広さがわかりやすかったりと、内容が伝えやすく、施主との行き違いもありません」と北田氏。

“営業用の提案資料から正確な数字が出ていると現場の数量誤差も減る。「私が現場で苦労してきた経験もあるので、提案から施工まで一貫して管理することで、数量の齟齬を減らしていきたい」と北田氏”

“プレゼン用の資料一式。手の込んだ内観パースまでArchicadを使って制作。視覚的にわかりやすい情報を提出することで、営業マンも自信をもって提案でき、施主からも具体的な変更指示を受けられる。”

また、土地の検討段階から提案をする際にも、近隣への日照の影響や景観の変化が事前にわかるため営業マンの信頼感アップにつながっていく。さらに、社内の業務効率化の部分では、これまで2週間かかっていた資料作成がBIMを使うことでわずか4日間に短縮することに成功した。
営業マンのヒアリングから提案までの期間が短縮でき、それに伴う人的コストや時間的コストの削減に直結している。
「BIMを使ってスピード感のある対応ができることは、すなわち営業の提案数増加につながります。これまでお断りしていた案件も、取りこぼすことなく提案することが可能になりました」と話す。

提案数が増えれば、単純に受注数にもつながってくるだろう。これから工事が追い付かないほどの受注件数になる日も現実になりそうだ。

Archicadの活用事例その③
子どもたちに向けたキャリア教育を提供

同社は地域密着型のゼネコンとして、近隣の小中学校へ県からの要請で「出張授業」を行う機会があった。出張授業とは、専門的な知識を持った社員が教育現場に出向いて授業を行うキャリア教育のひとつで、同社では建築業の役割や魅力について授業を行った。

石井氏は「今後、建設業の人材不足が叫ばれている中で、建築DXの流れは若い人たちが興味を持つきっかけになっています。出張授業でArchicadを使って説明をした時も、子どもたちの食いつき方が違いました」と語る。
生まれながらにしてデジタルネイティブの「Z世代」が、将来、建築業界で活躍できる素地を養うためにも、建築を魅力的に紹介できるArchicadには期待が集まる。

“地域の小学校高学年の児童に向けて、Archicadを使って建築業について話す北田氏。3Dモデルを使ってプレゼンをすることで子どもたちも興味津々と話に引き込まれていった。”

OPEN BIMの精神が
Archicadの魅力のひとつ

“ユーザー会でコミュニティを広げる北田氏。同じようにArchicad
を使いこなす協力会社と仕事のご縁が生まれることもあるそう”

「建設業は機密情報に触れる業種ですので情報の取り扱いには非常に注意が必要です。ところがArchicadのユーザーたちはとてもオープンで、情報交換に積極的です。ユーザー会などのコミュニティの活動も楽しいです」と、北田氏は笑顔で話す。
これまで、北田氏がArchicadを習得する手段としては、入門書「ArchicadMagic」を使って基礎を学んでからは、ユーザー会を情報収集の場として活用している。「例えば、Archicadのプロパティの設定の仕方など、OPENBIMの精神で惜しみなく教えていただくことがあります。コミュニティのなかではArchicadが相互理解を深めるコミュニケーションツールとなっていてBIMの話がはじまると、皆さん、夢中に」と北田氏。
インターネットを探してもヒットしない情報に関しては地域のユーザー会や、オンライン上のナレッジベースを頼りに、試行錯誤することも。Archicadは自由度が高いソフトだからこそ、何を取り入れたら効率的に業務をこなせるのか、先人の話を頼りに自ら必要なものを取捨選択している。

ちなみに千葉県のBIM推進会では、Archicadを含むBIMソフトを使っている意匠、構造、設備、施工、積算と、建設に関わる異業種が50名ほど集まって互いに活用方法をシェアしている。関連ソフトとの互換性の話など、リアルタイムの情報を収集できる場として活用中。
こういったコミュニティは日本国内のみならず世界中に点在しており、Archicadの輪を広げる絶好の機会となっている。

Archicadから始まる
石井工業のニュースタンダード

2023年現在、北田氏は未就学児を育てるワーキングマザーだ。Archicadが使えることでやむをえない場合の在宅ワークが可能となり、場所・時間を問わず業務をこなすことに成功している。「弊社では子育てと仕事を両立させるために、定時帰宅やテレワークの実現は喫緊の課題です。
まずは私が、場所を選ばずに仕事ができるArchicadを使いこなしてテレワークを推進中。建築業界で働く女性のロールモデルになっていきたい」と北田氏。男女問わず、これからのニューノーマルの時代の新しい働き方を定着させるべく、北田氏の挑戦は始まったばかりだ。

さらに社長の石井氏は、建設業界が一丸となって業務効率化を推進することが大事だと話す。「BIMが様々な企業間をシームレスにつなげる手段となり、業界全体が潤滑になるよう私たちも活動していきます」と、石井氏は締めくくった。

“石井工業のみなさん”

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