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馬淵建設株式会社

今も受け継がれる、創業者・馬淵曜氏の言葉。若手社員2人が提案した、その頃はまだどんな可能性を秘めているのかわからなかったBIM の導入を決めたのも、社員の根底にそのスピリッツが宿っていたからなのかもしれない。発起人は、現 […]

馬淵建設株式会社 

所在地

神奈川県 横浜市 南区花之木町 2-26

代 表 馬淵 圭雄

創 業 1909年

業務内容
① 建設業
② 工事・解体工事業
③ 一級建築士事務所
④ 宅地建物取引業
⑤ 発電事業

建築の真価は10年後20年後に問われるものだ
目の前だけの仕事をするな
誠実な工事こそが建築業者の魂である

今も受け継がれる、創業者・馬淵曜氏の言葉。若手社員2人が提案した、その頃はまだどんな可能性を秘めているのかわからなかったBIM の導入を決めたのも、社員の根底にそのスピリッツが宿っていたからなのかもしれない。発起人は、現在工務設備部の山田修作さんと設計室課長の秋元清太郎さんだった。それぞれの立場からBIM の必要性を感じ、上司の高橋孝匡さんと鈴木禎二郎さんに直談判した。

「なんとなくこのツールが、いずれ自分たちを助けてくれそうだな、という感覚がありました。習得するのはすごく大変そうだけど、その先にはやっていなかったら成し得なかったものができそうだと期待を持てたのです」
当時を振り返りながら語る、秋元さん。

「発起人の2人がやりたいという思いを一番大切にしたかった」と、上司の高橋さん。最初は周りの関心は薄かったという。高橋さん、鈴木さん、山田さん、秋元さんの4人は揃って、建築・建設業界の最新製品が出展されるBIM の展示会や講習会に出向き、知識を深めていきながら、会社として何ができるかを模索・検証した。そうした地道な活動の積み重ねと社会の流れも相まって、2016年、BIM を取り入れることが決まった。Archicad を導入したのは2018年のことだ。

設計と施工の2本立てで、
やれることから取り組んでいく。

BIM は設計から施工まで一貫した取り組みができると聞いてはいたが、実際にできるようになるまでには時間がかかりそうだった。そこで設計も施工も、まずは「できることからやってみる」を合言葉に、設計は計画図やパースなどのプレゼン資料作成、施工は仮設計画や施工検討から使い始めた。社内の発展を見据えて、部署の垣根を超えて取り組むことを心がけた。
2020年6月からは、外部講師を呼んでのトレーニングを試みた。設計図の図面化を目的に、過去に施工した物件を題材にして操作方法を学ぶ。設計室の秋元さんは、梁とか壁を入力してモデルは作れたけれど、その3D モデルを図面に書き出すことができなかった。

「馬淵建設(Mabuchi)は、熱意(Zeal)を持って自然との調和(Ecology)、人とのふれあいを大切にする社会環境を創造・提供するクリエーター(Creator)として、社会との係わりを深めていく」いう意志を明確にした「Mzec」。

左から秋元さん、高橋さん、山田さん。

「ボタンひとつで出てくるものかと思っていたけど、いろいろな表現の仕方がある。最初はその設定がわからなかった」外部講師によるトレーニング終了後も、秋元さんが主体となって、選出されたワーキンググループメンバーで社内トレーニングを続けた。週に1回、2~3時間程度で、参加者は10人くらい、部署はばらばらだ。毎回課題を設定して取り組んだトレーニングは、それぞれの業務にBIM が浸透してきた頃には、業務内容を共有する場に変わっていった。

自動車ショールームの設計では、Archicad を使って様々な図面を書いた。「これまでCAD 上で一本一本線を描いていた図面が、Archicad にデータを打ち込んだら一気に関係する図面に反映されたので感激しました」と秋元さん。BIM を計画段階でプレゼンに使ったり、事前の計画資料をそのまま仮設計画や実施設計で使ったり、工事中の材料を決定する際のプレゼンに使ったりと、一つのデータで使えるシーンがぐんと増えた。

「現場で、この場合とあの場合とでは?と実際に試してみることはできないので、そういうときにBIM を使えば、どっちがコスト的に安いか、工期的に合理的かという検証はしやすくなる。これまでは、大きな損失がなく工期の中で終われば、現場のことは現場の技術者任せで、それがベストかどうかの検証はやってなかったんです。でもBIM を使えば、条件が限りなくベストに近い状態まで整えたものを現場に引き継ぐことができるようになります。現場に限らず、事業主や協力会社に対しても、われわれがどういうふうに考えているのかを具体的に伝えるには、BIM を使うのが一番効果的な方法だと感じています」
あらゆる場面で使い勝手が良いものにするには正確性が求められるので「BIM モデル作成の川上となる立場の設計者として、日々の知識習得は怠れないです」と秋元さんは言う。

BIM について議論を交わす吉田恵子さん(左)、栗原知己さん(右)。

[設計室の取り組み]

意匠・構造モデルを一つのファイルで作るメリットの検討。

BIM 導入初期から、秋元さんたちはBIM の価値を高めるために、社内の技術発表会でBIM の成果物を発表していた。最初は「要するにプレゼンツールでしょ?」という印象を持たれていたが、秋元さんたちのBIM 技術が高まるにつれて、発表内容も高度になり、図面も書けるし数量も算出できることが次第に認知されていった。現在設計業務において、モデルを作って図面を描き出し、成果品として設計図を作るという作業がメインだ。今まで記号だけで表記していた構造スリットをモデルとして入力しておくと、積算段階で数量まで算出できる。発表ではそういうメリットをフローにして伝えた。

意匠と構造の図面を一つのファイルを使って描くことで、意匠・構造間での不整合がなくなるのではないか、という発想が元になっている。3D で「見える化」すれば納まりの不具合も一目瞭然だ。「設計はゼロからイチを作り出すので、どうしても自分だけで検討して形にしていく時間は必要。さらにお客さんの意向も反映しながらどんどん変化していくので、他部署が介入できるタイミングを見極めるのはとてもむずかしい」と秋元さん。

施工検討でBIM を利用した共同住宅「ヴェレーナグラン茅ヶ崎東海岸」。
モデル作成により、
・既にCAD で作図していた躯体図の整合性の確認
・工区分けでのコンクリート数量算出
・モデル作成により外構構造物の形状把握
をすることができた。

[積算課の取り組み]

地面から下の無駄をなくすための活用。

Archicad を導入して最初の利用は、積算との連携だった。馬淵建設では崖や傾斜地での建設案件が多く、地面から下をどのように施工するかによって工事費が大きく変わる。積算では掘削土量と盛土量を算出する。何度も土を出し入れするとコストが非常にかかる。出す量と入れる量をいかに精度良く差を少なくするかが肝。Archicad ではソリッド編集という機能が土量算出において便利なツールだ。株式会社バル・システムのBIM 対応の建築数量積算システム「ヘリオス」を使って、躯体モデルを作ったデータをArchicad に取り込み、そこに敷地と仮設を付けて簡略的な仮設計画を作る。すると、これまで一人で複数の図面を描いていた最初の作業を一気になくすことができた。

事例発表会でArchicad を使った土量算出の効果を発表。

2020年3月に竣工した「聖ヨゼフ病院」建替え増築工事。急傾斜地崩壊危険区域に指定され、工事に一定の制限がある地域での建築工事だった。土量として約28,000㎥の建設発生土を搬出し、新規擁壁の築造と建物を置きかえる。さらに山側の擁壁については、漏水・結露の対策が必要で、その裏面の埋め戻しにおいても流動化処理土を採用し沈下等にも配慮した。Archicad 上では、躯体モデルに協力会社で作成していた設備モデルを重ね合わせる試行をした。

BIM マネージャーが中心となって
BIM という広い世界を発展的に使っていく。

現在は委員会組織でBIM の推進活動を行っており、本業との兼務でBIM 業務に専念しづらい状況であるため、馬淵建設では今後、組織としてチーム編成をしていく方針。昨年夏、秋元さんと建築CSサポート室の栗原さん、設計室意匠課の山口哲也さんの3人は、グラフィソフトが主催するBIM マネージャートレーニングプログラムを受講し、Graphisoft 認定 Archicad BIM Manager の資格を取得した。プログラムは10週間1セットで、週に1回3時間ずつの講義のほか、ワークショップもある。秋元さんはプログラムを受講して、「BIM の世界の広さを知りました。BIM = 情報なので、その膨大な情報をモデルにどれだけ入れるのかを決めることが大事。全ての情報を入れなくてもできるけれど、情報を入れるほど精度の高いものができる。いろいろな角度から見ることもできる。自分たちが今までやってきたことはほんの一部でしかなかったんだなって」と語る。

現在会社でBIM を使える職員は8人。栗原さん(左)と山口さん(右奥)と秋元さんをはじめとしたメンバーで、2週間に1回ミーテイングを実施し、BIM マニュアルの整備を進めている。

BIM の使い方は無限にあるので、それぞれ個々のやり方をしてしまうと、学んだり教えたりする手間がかかるし、教えられた人も他のやり方を知ると混乱する原因になる。栗原さんは、「教えたり、使いたいツールを探したりするのにも時間がかかるので、その手間暇を削減するために、ルールやテンプレートを作る必要性を感じました」と話す。現在栗原さんと山口さんが中心になって作成しているテンプレートは、最初のとっかかりだけで60P。この後およそ1年かけて完成を目指すという。「でもきっと、完成はなくて、ソフトの進化と環境の変化に合わせて、どんどんアップデートしていくことになると思います」。
今後は、例えば本社サイドで計画立案したものを現場に渡してBIM マネージャーがオペレーションしていき、現場はそれを具現化する。そういうふうにBIM マネージャーや推進メンバーが核となってより効果的なBIM の取り組みを進めていくことを目指す。さらに、協力会社とも、先を見据えて発展していけるような形でBIM を使っていきたい。10年後20年後を見据えた馬淵建設の挑戦は続く。

事例発表会で発表した「意匠図と構造図のBIM コラボレーションによる設計図作成及びBIM 活用事例」。

Archicadの詳細情報はカタログをご覧ください

ー カタログと一緒にBIMユーザーの成功事例もダウンロードできます ー

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  • 設計時の裏話や、BIMの活用方法など掲載
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