3話: BIM導入で、建築業界を変革! 建築BIM加速化事業とIT導入補助金の完全ガイド

少子高齢化と人口減が加速するなか、担い手の確保は建築業界においても喫緊の課題となっています。そういった背景も影響し、建築設計から施工、さらには、完成後の維持保全のプロセスに至るまで、一気通貫に建築データの管理と共有化、生産性の向上を実現するBIM(Buildin Information Modeling:3Dを活用し、建築物のライフサイクルにおけるデータを構築・管理するためのシステム)が注目されています。 

また、国の補助金による建築BIM加速化事業も進み、これからBIM活用が建築業界のスタンダードとなっていくことが予測されます。このコラムでは、建築BIM加速化事業とIT導入補助金について解説します。これから導入を検討されている方、ぜひ、国の助成制度を活用し、BIMを導入しましょう! 

目次

  1. 建築BIM加速化事業とは?
  2. IT導入補助金によるBIM導入の推進
  3. 補助金を使って、どのようにBIM導入を進めていくべきか?
  4. まとめ

建築BIM加速化事業とは?

高層ビルが立ち並ぶ東京都心

令和5~6年(2023~2024年)度 建築BIM加速化事業の概要

建築BIM加速化事業は、国土交通省が推進し、令和4年より開始されました。建築BIMを活用する事業者を拡大することによって建築BIMの社会実装を加速化し、建築業界全体のデジタル化と生産性の向上、品質の向上を図ることが目的とされています。

建築BIMとは、建築物のライフサイクルにおけるデータを構築・管理するためのシステムです。具体的には、3Dを活用し、建築物の物理的および機能的特性をデジタルモデルにすることで、設計、資材調達、施工、エンジニアリング、維持保全のプロセスをデジタルで効率的に管理します。

建築BIM加速化事業では、一定の要件を満たす建築プロジェクトにおいて、複数の事業者が連携して建築BIMを使用する際、BIMのソフトウェアやハードウェア、講習など要する費用に対して国が補助を行います。

令和5~6年(2023年~2024年)度の 建築BIM加速化事業では、2023年度の補正予算で60億円が計上されました。さらに、建物の階数や面積要件を廃止し、小規模プロジェクトや、改修工事も対象となった点がポイントです。このように使いやすい要件となったことで、BIM導入を検討している企業や団体にとって、導入費用の負担の軽減と活用できる機会が拡大しました。

また、この事業の一環として「建築BIM加速化事業実施支援室」が設けられており、BIMの導入支援や技術的な問い合わせ対応などを行っています。さらに、国土交通省はBIMロードマップを作成し、BIMの全国的な普及と効果的な活用を促進するための具体的な行動計画を示しています。

ここまで読み進めただけでも、国土交通省がBIM推進に、どれほど力を入れているのか、ご理解いただけたのではないでしょうか?

建築BIM加速化事業の3つのポイント

建築BIM加速化事業には3つのポイントがあります。

1)令和5年(2023年)度末までの基本設計・実施設計・施工のBIMモデル作成が対象。

2)設計BIMモデルや施工BIMモデルの作成など要する費用について幅広く補助。

3)協力事業者(下請事業者など)だけではなく、代表となる元請事業者など補助の対象。

BIM導入の補助の恩恵を受けるためには、まずは、プロジェクトの代表となる事業者の登録が必要となります。なお、事業者登録後のプロジェクトの変更は可能となっています。

引用:国土交通省「建築BIM加速化事業の代表事業者の登録を開始します」

補助対象となるBIMモデル作成費

建築BIM加速化事業では、BIMモデル作成費は補助の対象となります。BIMモデル作成費とは、BIMモデルを構築時に必要な費用であり、次の3点が補助金の対象となります。

1)BIMライセンス等費:
BIMソフトウェア利用費(ビューワーソフト、アドオンソフトの利用費、BIMモデルを利用するための、PC・タブレット・ARゴーグルなど、周辺機器などのリース費用を含む)・CDE環境(共通クラウド)構築費・アクセス費

2)BIMコーディネーター等費:
BIMコーディネーター人件費・委託費、BIMマネージャー人件費・委託費、BIM講習に要する委託費・人件費・諸経費

3)BIMモデラー費:
BIMマネージャーをサポートするBIMモデラー委託費(施工BIMに限る)

なお、補助額は次のようになっています。

※設計費は設計BIMモデル作成費、建設工事費は施工BIMモデル作成費を上限とする    ※延床面積に応じて次の額を上限とする

延べ面積設計費建設工事費
10,000㎡未満25,000千円40,000千円
10,000㎡以上、30,000㎡未満30,000千円50,000千円
30,000㎡以上35,000千円55,000千円

申請プロセス

タブレットを見ながら書類を揃えるビジネスマン

建築BIM加速化事業の申請プロセスは、まず、国土交通省のウェブサイトで詳細を確認し、代表事業者の登録から始まります。なお、申請に関わるスケジュールは変更の可能性があるため、該当のウェブサイトを確認するようにしましょう。(※令和6年(2024年)6月現在の情報)

1)事業者登録
最初に代表事業者となる、元請け事業者など(設計事務所・ゼネコンなど)の登録を行います。事業者登録は、令和6年(2024年)1月より開始され、登録期限は令和6年(2024年)12月31日までとなっています。

2)交付申請
令和6年(2024年)4月1日から随時、補助金の交付申請が行われています。代表事業者として登録し、準備が整ったプロジェクトから交付申請を行います。

3)完了実績報告
完了実績報告までの成果に応じて、補助金額が決定します。令和7年(2025年)2月が、報告期限の予定(*)となっています。

(*)令和4年(2022年)12月発行 国土交通省「建築BIM加速化事業について」による

引用: 国土交通省「建築BIM加速化事業について」

IT導入補助金によるBIM導入の推進

パソコン画面をのぞき込む建築業従事者

IT導入補助金による、BIM導入の方法について次に説明します。この補助金は、経済産業省 中小企業庁が管轄しています。

令和6年(2024年)度IT導入補助金とは

IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者などの労働生産性の向上を目的に、業務効率化やDXなどに向けた ITツール(ソフトウェア、サービスなど)の導入を支援する補助金です。IT導入補助金の事業は、経済産業省 中小企業庁が管轄しています。先述の建築BIM加速化事業は、国土交通省が推進しており、IT導入補助金と建築BIM加速化事業の補助金では所轄官庁が異なります。

IT導入補助金の対象となるITツールは、事前に事務局の審査を受け、補助金HPに公開(登録)されているソフトウェアやサービスなどで、建築BIMの導入も対象となっています。また、相談対応などのサポート費用やクラウドサービス利用料等も補助金の対象に含まれます。

IT導入補助金では、通常枠(1プロセス以上)において、次の金額が補助されます。

  • 上限150万円未満、下限5万円を補助 
  • 最大必要経費の1/2を補助
対象中小企業・小規模事業者等
補助内容・ITツールを導入するための事業費などの経費を一部補助 通常枠(1プロセス以上)
・上限150万円未満、下限5万円を補助
・最大必要経費の1/2を補助

引用:サービス等生産性向上IT導入支援事業『IT導入補助金2024』の概要

・交付申請や実施スケジュール

IT導入補助金2024 交付申請・事業実施スケジュールについては、予算上限まで随時予定が更新されます。最新情報は、下記IT導入補助金のホームページでご確認ください。 

補助金を使って、どのようにBIM導入を進めていくべきか?

築BIMで建物を3D化した画像

補助金を活用してBIM導入を進めるにあたっては、建築BIM加速化事業による補助金とIT導入補助金の2つの方法があります。ここでは、補助金を使ったBIM導入の使い分けと注意点について説明します。

建築BIM加速化事業による補助金とIT導入補助金の違い。それぞれの使い分けについて

建築BIM加速化事業の補助金とIT導入補助金は、ともにBIM導入を支援するための補助金ですが、その使用目的や対象が異なります。

建築BIM加速化事業の補助金は、BIMを導入することで、建築業界全体の生産性の向上を図ることを目的としています。そのため、建築BIM加速化事業の補助金は、BIM作成に取り組む元請け事業者を「代表事業者」として登録した上で、プロジェクトに参加する専門設計事務所や専門工事業者がBIMモデル作成に要した経費についても補助金の対象となります。

建築BIM加速化事業の補助金は、交付に際してBIM導入の成果を具体的に示すことが求められます。具体的には、設計BIMモデルまたは施工BIMモデルによる出来高の確認です。

一方、IT導入補助金は、中小企業がITツールを導入することで業務の効率化を図るための補助金であり、BIMは対象となるITツールの1つです。

したがって、どちらの補助金を活用するべきかは、自社の状況や目的によります。例えば、具体的なBIMの活用事例を示し、業界全体の生産性の向上に貢献したい場合は、建築BIM加速化事業の補助金を、業務効率化を主に目指す場合はIT導入補助金を活用すると良いでしょう。また、両方の補助金を併用することも可能ですので、自社のニーズに合わせて適切な補助金を選択し、BIM導入を進めていくことが重要です。

補助金の利用において、注意すべき点は何か?

補助金を利用してBIM導入を進める際には、いくつかの注意点があります。

1つ目は、申請準備に十分な時間を確保することです。BIM加速化事業の補助金やIT導入補助金の申請には、事業計画の作成や必要書類の準備が求められます。これらの申請準備は時間がかかるため、早めに手続きを始めることが重要です。

2つ目は、補助金の規定を理解し、適切に申請することです。補助金の申請には、多くの規定があります。また、申請書類に誤りがあると、補助金の採択が遅れるだけではなく、補助金が下りない可能性もあります。そのため、補助金の規定をしっかりと理解した上で、適切な申請が必要です。

3つ目は、交付に必要な報告義務を忘れないことです。建築BIM加速化事業では、補助金の交付を受けるために成果報告が必要です。報告を忘れないように注意してください。

この3つの点に注意し、補助金を適切に利用してBIM導入を進めましょう。

まとめ

BIM導入の補助金は、建築業界にとって大きなメリットを提供します。BIMは設計・施工・維持保全の各プロセスで、生産性の向上や効率化をもたらします。補助金を活用することで、BIMの導入コストを削減することが可能です。

さらにBIMの導入は、建築データの共有や次世代へのデータ、知見の継承などの価値を提供します。それは、新たなビジネスチャンスの創出や、業務の質・効率の向上、顧客満足度の向上など、競争力を高める要素を含んでいます。このような観点からも、補助金を活用したBIM導入は、企業にとって大きなチャンスと言えるでしょう。

この記事では、補助金の概要から申請方法、活用事例までを詳しく解説しました。1982年の設立以来、グラフィソフトは、BIMソフトウェアArchicadで建築設計に革命を起こしてきました。

IT導入補助金を利用してArchicad の購入をご検討の方は、下記よりお問い合わせください。

建築BIM加速化事業の補助金を利用してArchicad の購入をご検討の方は、下記よりお問い合わせください。



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