大成建設株式会社
BIMモデルにSolibri Model Checkerと独自開発ルールを適用 大成建設が図面チェックを大幅合理化

大成建設株式会社

大成建設はグラフィソフトジャパンの「Solibri Model Checker」を導入し、図面の干渉チェックに要する時間を大幅短縮した。設計者が図面確認を行う約50の項目を独自にルール化。意匠と構造のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)モデルの干渉部分や天井ふところの高さ不足などを自動的に発見し、その結果を3DモデルやExcelのレポートで即座に共有できるようになった。

大成建設株式会社

創業:1873年(明治6年)10月

設立:1917年(大正6年)12月

資本金:1,227億4,200万円

事業内容:国内外における建築事業、土木事業、開発事業他、及びそれらに関する設計、監理、施工、エンジニアリング、マネジメント、コンサルティング等

代表者:代表取締役社長 村田 誉之

本社:東京都新宿区西新宿一丁目25番1号

従業員数:8,327名(2015年4月1日現在)

HP:http://www.taisei.co.jp

大成建設設計本部
テクニカルデザイン室
シニア・アーキテクト
福田 純 氏

大成建設設計本部
構造計画部構造計画室
横山 聡 氏

20日かかった図面確認作業がわずか3日で完了

「約2万m²の建物の設計にSolibri Model Checkerを導入した結果、これまで3人かがりで約20日間必要だった意匠図と構造図の干渉チェック作業が、わずか3日間に短縮できるようになりました」と語るのは、大成建設設計本部テクニカルデザイン室シニア・アーキテクトの福田純氏だ。

Solibri Model Checker(以下、SMC)とは、意匠、構造、設備など複数のBIMモデルデータをIFC形式によって読み込み、ルールに従って干渉部分や部材間の位置関係などを自動的にチェックし、不具合のある部分を自動的に検索するソフトだ。

この建物は車両が各フロアに出入りするために、らせん状の3次曲面車路を備えている。「車路の表面と、上の斜路を支える鉄骨までの高さが所定の寸法をすべてクリアしているかどうかをチェックする必要がありました。鉄骨部材は車路のカーブ内側に傾き、しかも耐火被覆が吹き付けられているため、手作業ではとてもチェックしきれません。しかし、SMCのおかげで全数を瞬時にチェックすることができました」(福田氏)。

大成建設の設計部門ではこれまで、施工部門に渡す前の最終チェックとして、意匠図と構造図を2次元CAD上で重ね合わせて、干渉や部材の位置、通路の高さなどを確認していた。

「しかし、当社では意匠図は各フロアを見下ろすように描く“見下げ”、構造図は逆に“見上げ”で描くため、チェック用の図面をわざわざ作る必要がありました。そして意匠図は青、構造図は赤で表示し、図面の線が重なる部分は黒になるようにして目視でチェックしていたのです」(福田氏)。

「従来の紙図面によるチェック作業には、規模にもよりますが、概ね、チェック用の図面を作成するだけで10日間、さらにチェックに10日間の合計20日かかっていました。

そこでBIMモデルとSMCでこの作業を行ったところ、人間が行う作業の7~8割を自動化することができました。「現時点ではBIMでチェックできないこと」は人間が行う、「BIMが得意なこと」はチェックソフトによる自動化を目指す、すなわち、いいとこどりをすることで、効率化が図れると考えています。」(福田氏)。

約50のチェック項目をルールセット化

BIMソフトには干渉チェック機能が付いているものも多い。部材同士が完全に空間上でぶつかっている「ハードクラッシュ」は簡単に発見できるが、ぶつかってはいないものの間隔が適正でないなどの「ソフトクラッシュ」は発見が難しい。

「さらにわれわれが必要としたのは、『吹き抜け空間の中に柱が出てはいけない』『外壁と柱の間隔を近すぎず、遠すぎず適正に確保する』など、単なる干渉問題とは違ったチェックでした」と横山氏は語る。この図面チェック作業を大幅に効率化するきっかけとなったのは、同社構造計画部構造計画室の横山聡氏が「SMCというソフトを使えば、できるのではないか」と思ったことだった。

そこで福田氏と横山氏は、図面をチェックするポイントを約50個リストアップし、グラフィソフトジャパンに相談したところ、7~8割のチェック項目はSMCでルール化できるメドが立った。そして2014年2月から両社が協力し、SMC上でのBIMモデルチェックに使われる「ルールセット」と呼ばれるデータの作成作業が始まった。

SMCのルールセット作成は複数行のプログラムを書くといった複雑な作業ではなく、あらかじめ用意された「一般干渉ルール」「部材間の距離」などの基本的なルール作成画面上に、チェック対象となる部材の種類をプルダウンメニューで選んだり、チェック項目をクリックしたりすることで作れる。

SMCでの干渉チェックで確認した車路の高さ
紙図面によるチェック作業について語る福田氏

社員が作ったBIMモデルでルールセットの動作確認

こうしたルールの中には、コンクリート梁を配管などのスリーブが貫通した部分が設計上で許容されている範囲に入っていることをチェックするもの、同じ床でも単なる床と構造部材としての床を区別して鉄筋本数をチェックするものなど、細かい設定が要求されるものもあった。

そこで大成建設では社内の有志12~13人で、SMCのルールセットが目的通りに動作するかどうかを検証するためのBIMモデルをルールごとに作成した。

一方、グラフィソフトジャパンでは、大成建設が実務で行っている図面のチェック項目を、SMCのルールセットを作成していった。

そして大成建設では検証用のBIMモデルにこれらのルールセットを適用し、動作を検証する、という作業を繰り返した。

こうした努力の結果、開発開始から7カ月後の2014年9月、SMCのルールセットが完成したのだ。

意匠が青、構造が赤で描かれたチェック用図面
1つのルールセットは1つの画面上で設定して作れる

コストパフォーマンスの高い建物の設計に有効

これまで設計の最終段階で行っていた意匠と構造の干渉チェックをSMCとルールセットでほぼリアルタイムに行えるようになったことは、設計のクオリティーにもよい影響を与えそうだ。

「SMCでチェックした結果の3Dデータは、無料のSolibri Model Viewerによってプロジェクト関係者が見られるので、問題点が即座に共有できます。また、これまでは図面上で問題があった個所をExcelの表に別途、整理していましたが、SMCは問題のある部分の画像付きレポートをExcelファイルとして自動的に書き出したり、BCFを使い問題個所をBIMソフトに返してくれます。チェック後のデータ整理や情報共有も楽になりました」(福田氏)。

「干渉チェックを基本設計の途中で行えるので、意匠と構造の取り合いを考慮しながら階高を下げられます。極限まで合理的な設計を追求することで、コストパフォーマンスの高い建物が設計できそうです」(横山氏)。

両氏の言葉からは、BIMによる設計・施工ワークフローの中で、SMCはフロントローディング(業務の前倒し)を効果的に行えるツールであるという実感が伝わってくる。

そして、福田氏が「SMCの導入に当たっては、基本的な講習と、ルールセットについての講習を2時間ずつ受けただけです。その後は自力でマスターしていくことができます」と語るように、SMCは設計者や施工管理者が簡単に使えるのだ。

今後、SMCを実プロジェクトに適用しながら、実務で必要となるルールセットを少しずつ増やしていく予定だ。

梁と衛生器具のチェック

Excelファイルとして自動的に作成された画像付き干渉チェックレポート

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