清水建設株式会社
設業界を牽引するスーパーゼネコンがBuild Live Tokyo2009 IIに初挑戦でベストプロジェクト賞を獲得 ARCHICADを核とした"設計施工のBIM"に向け本格稼働を開始

清水建設株式会社

2009年春、わが国を代表する総合建設企業・清水建設は、その意匠設計部門へARCHICADを正式導入し、これを機に全社のBIM普及へ向けた本格的な取り組みを開始した。さらに同年9月には本邦唯一のBIMコンテストである「Build Live Tokyo 2009 II」(BLT2009II)に参加。初参加にもかかわらず、見事ベストプロジェクト賞を受賞した。スーパーゼネコンの実力を遺憾なく発揮した今回の経緯について、同社設計本部の4氏に伺った。

清水建設株式会社

創業:1804年(文化元年)

事業内容:建築・土木等建設工事の請負(総合建設業)

代表者:代表取締役社長 宮本洋一 氏

所在地:東京都港区

資本金:743億6,500万円

従業員数:11,535名(09年4月1日現在)

設計本部 生産設計部
BIM推進グループ
グループ長 東山恒一 氏

集合住宅設計部1部
部長 吉田 博 氏

設計本部
集合住宅設計部1部
大西宏明 氏

設計本部 生産設計部
BIM推進グループ
三浦大作 氏

設計者自身が試用・選定した3次元CAD

清水建設の3次元への取り組みは2000年頃に始まる。この頃同社は”3Dツール”を自社開発し、これを核に実施設計から施工段階に至る業務の3次元化に取り組んだのだ。しかし、莫大なコストを必要とする自社開発と並行し、2006年頃同設計本部では、意匠、構造、設備の設計部署の各担当者が、当時市場に流通していた3次元CAD製品のリサーチを開始した。特に意匠設計部署では、複数の設計者が実際に各製品を試用して比較、検証。活用に際し、選択したのがARCHICADだったのだ。

「理由は明確です。操作性もスピードも優れたARCHICADなら、3次元設計もストレスなくできると感じたのです」(東山氏)。こうして試験導入したARCHICADを同社はさらに1年半にわたり実務で検証していった。この試用期間中にARCHICADは11から12へとバージョンアップされたが、検討においては、このことも大きなポイントとなった。マルチコアプロセッサに対応したARCHICAD12のスピードは格段にアップし、それまで不安のあった大規模建築モデルを扱う際のレスポンスも実用レベルに近づいた。この効果により”これはいける!”と、自信を深めたという。そして2009年春、意匠設計のBIM運用メインツールとしてARCHICADの正式採用を決定したのである。

“設計施工のBIM”の実践を目指したBLT2009IIへの挑戦

このような流れを受けて2009年4月、ARCHICADを1つの核にBIMの本格稼働を目指す同社の新たな戦略が動き始めた。意匠、構造、設備など各設計部署の代表による推進委員会が編成され、その全体を取りまとめるリーダー役に任命されたのが、集合住宅設計部の部長、吉田博氏である。

「まず各部署1件ずつBIMのモデル案件を選び、それぞれが取り組み課題を決めて推進することにしました。BIMで何ができ、どんな可能性があるのか、当時はまだ十分に見えていなかったのです。そこで、とにかく案件ごとに課題のリストを作って”まずはやってみようよ”という雰囲気になりました。そうして動き始めて、わずか数ヶ月後の8月に知ったのがBLT2009IIの開催だったのです。」

Build Live Tokyoとは、事前公開される敷地データや設計条件を元に、わずか48時間という制限時間内に意匠/構造/設備/統合BIMモデルやプレゼン資料を制作して競い合う国内唯一のBIMコンテスト。2009年2月開催の第1回に続く第2回は同年9月の開催となった。清水建設にとっては、BIMの本格始動後半年も経過していない段階だったが、吉田氏は果敢に挑戦を決意したのである。

「四半期が経過して、我々のBIMもできることとできないことの把握が進み、次に取り組むべき課題として”設計施工のBIM”の実践という目標が見えていました。そこで、この”設計施工のBIM”の実践をBLT2009IIでチャレンジしてみようと考えたのです」(吉田氏)。同氏は意匠、設備、構造、施工など関連部門にBLT2009 II参加の同意を取り付け、準備を進めた。さらに部門代表を集め個々の作業と成果物、スケジュールを詰め、ARCHICADを中心に各部門の専用CADを結ぶ連携など、想定される課題についてディスカッションを重ねたのである。その一方でまた、設計部門はデザインの方向性等のプレスタディを進めていた。「すとりーむ」と名付けた吉田氏のチームは、こうしてBLT2009 IIの当日を迎えたのである。

Build Live Tokyo 2009 II Leaf 環境コンセプト

ベストプロジェクト賞受賞で加速するBIMの全社展開

「当初は48時間で施工まで行けるのか不安でしたが、始まると想像以上に皆がのめり込みましたね。ポイントは普段やれないことを取り入れた点です。もちろんすべてが予定通りにとは行かず、協力会社に深夜に足を運ぶなど、予想外の事態もありました」(大西氏)。チーム「すとりーむ」の提案は、曲面を多用した3棟の建物が、現状の敷地の緑を取り囲むように建つユニークなプラン。実案件では提案しにくい内容だったが、だからこそメンバーのクリエイティビティに火が点いたのも事実だ。

「もう一つの課題は、当社の各部門の保有技術を成果にどれだけ盛り込めるか。個別に存在していた当社の多彩な技術を結合する手段としてのBIMの活用でした」(三浦氏)。

結果として同社のプランは、企画設計から構造、各種の解析、施工まで精密にプランニングされ、仮設計画や数量まで決め込まれた”架空ではなく必ず建てられるもの”として提案された。この実現性とBIMへの果敢な挑戦が高く評価され、ベストプロジェクト賞に選ばれたのである。そして、そこから同社が得た成果は単なる栄誉だけではない。受賞を機にBIMに対する全社の意識そのものが大きく変わったのだという。

「当社にとってBLT2009 IIへの参加は非常にタイムリーなもので、一定の成果を出すこともできました。特に、BIMでここまでできるという概念が部門間で共有できた事は非常に大きいですね。今後は、”設計施工のBIM”の実現へ向けたARCHICADデータのより効率的、効果的な活用で、いかに本当のBIMに近づけるかが課題となるでしょう。効率化などの成功事例を実案件で出していきたいと考えています。また、今後のBIM活用によって、設計初期段階の環境シミュレーションへの適用など、その効果には我々も大きな期待を持っています。各種シミュレーションが容易にできるようになれば、意匠設計にとって新たな視界が開けるとも考えています。そういった意味でも、アドオンソフトであるEcoDesigner等の開発やデータ連携なども含めて、ARCHICADには今後もデザインの可能性を広げるような進化を期待したいですね」(吉田氏)

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