アーネストアーキテクツ株式会社
設計事務所におけるBIM活用確認申請による確認済証交付。 ARCHICADとBIMxで実現目指す

アーネストアーキテクツ株式会社

建築設計事務所のアーネストアーキテクツは、指定確認検査機関である日本ERIの協力のもと、社内で取り組んでいるBIMによる設計の拡大を目的に、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)ソフトとBIMモデルビュワーを使い、非木造住宅を対象としたBIMによる確認申請ワークフローに取り組んだ。今回の取り組みの結果は良好で、主に確認申請前の事前相談時にBIMを活用し、大きな成果を上げている。

アーネストアーキテクツ株式会社

所在地 : 東京都港区芝5-5-1

代表者 :
代表取締役会長 山口 徹
取締役社長   久保 文孝

設立 : 1990年

事業内容 : 個人住宅、セカンドハウスなどの住宅設計、病院建築、リゾート施設、外国公館、ホテル、店舗、オフィス等の商業建築

webサイト : http://www.earnest-arch.jp

アーネストアーキテクツ株式会社
設計部 部長
板橋 友也 氏

アーネストアーキテクツ株式会社 設計部 部長 板橋 友也 氏

アーネストアーキテクツ株式会社
第二設計部 設計室 室長
荒井 大輔 氏

アーネストアーキテクツ株式会社 第二設計部 設計室 室長 荒井 大輔 氏

日本ERI株式会社
BIM推進センター長
関戸 有里 氏

日本ERI株式会社 BIM推進センター長 関戸 有里 氏

株式会社 大塚商会
首都圏PLMサポート2課
専任課長
飯田 千恵 氏

株式会社 大塚商会 首都圏PLMサポート2課 専任課長 飯田 千恵 氏

グラフィソフトジャパン株式会社
BIMインプリメンテーション 部長
飯田 貴

グラフィソフトジャパン株式会社 BIMインプリメンテーション 部長 飯田 貴

「非木造住宅」でBIM確認申請を

BIMモデルを指定確認検査機関に提出し、審査を受ける建築確認申請(以下、BIM活用確認申請)はこれまでも、大手建設会社や規模の大きい建築設計事務所で試行的に行われてきた。

また、建築確認申請に使う設計図書をBIMソフトで作成できるテンプレートも開発され、公開されているが、書類作成が目的で、BIM本来の3Dによるわかりやすさや、属性情報が確認申請業務に生かされていないという課題もあった。

「私たちは、BIMと呼ばれている前から3Dによる設計を行っていました。これまでの経験をふまえ、これまで取り組んできた設計手法をほかでも利用できないかと検討している中で、ソフトウェアベンダーである大塚商会に相談したところ、BIMを利用した確認申請を提案いただきました。そこで当社は指定確認検査機関の日本ERIと連携し、大塚商会、グラフィソフトジャパンの協力を得て、BIM活用確認申請のワークフロー開発に乗り出しました」東京・芝に本拠を置く建築設計事務所、アーネストアーキテクツ設計部の板橋友也部長は語る。

GRAPHISOFTのBIMソフト「ARCHICAD」のユーザーでもある同社は、指定確認検査機関の日本ERI、そして大塚商会とグラフィソフトジャパンと共同で、設計事務所や確認検査機関が手軽に導入でき、しかもBIMモデルを有効活用しながら確認申請を行える方法の検討を始めた。

そして、対象とする建物は「非木造住宅」とした。これまでの4号特例の住宅とは異なり、確認申請の手続きも本格的になる。

「BIMのわかりやすさを生かして申請者と確認検査機関の双方にメリットがあり、確認申請以外の業務にもBIMを有効活用できる方法を模索した」と板橋氏は続ける。

確認検査機関にもメリットがあるBIM

確認検査機関側にとっても、審査業務を効率化する上でBIM活用確認申請に取り組むメリットは大きい。

例えば、BIMモデルから作成された図面などは、整合性がとれており、照合作業が省力化できる。審査員の貴重な労力を、データの食い違いを見つけるような照合作業から解放する効果は大きい。また、3Dによるグラフィカルな表現により、建物の形状や、周辺の道路などとの位置や高さ関係が直感的にわかるため、建物の形状を立体的に把握しやすくなり、法適合判断において大きなメリットとなる。

日本ERIでBIM推進センター長を務める関戸有里氏は「斜線制限など集団規定では、建物の位置や高さ、敷地や道路の高さの関係を把握し、規定の範囲に収まっているかをチェックしますが、BIMモデルによる3D表現はクリティカルになるポイントを一目瞭然で把握することができます。」と語る。

一方、課題となるのはBIMモデルを開いて確認するためのハード、ソフトに大きな投資が必要となることだ。そして審査員にも、BIMソフトの操作方法をマスターするための時間や労力が必要となる。

「当初は、ARCHICADのBIMモデルデータをそのまま確認検査機関側に提出し、審査してもらう方法を検討していました。しかし、BIMモデルデータには確認申請に関係の無い個人情報が大量に含まれており、審査に不必要な情報まで確認検査機関に情報が流れてしまう問題が有ります。また、審査途中の作業でBIMモデルデータ自体が不必要に改ざんされる可能性も否定できませんでした。そこでビュワーである『BIMx』を使うことを思いつきました」と、設計室室長の荒井氏は振り返る。

タブレットで表示されたBIMx
タブレットで表示されたBIMx

審査業務に役立つ機能がそろったBIMビュワー

今回の事前相談では、Graphisoftの「BIMx」を利用することとした。「BIMx」とはARCHICADで作られたBIMモデルを軽量化して、3Dイメージや2D図面として閲覧できるビュワーソフトだ。WindowsやMac OSのほか、iOSやAndroidにも対応したマルチプラットフォームのアプリなので、パソコンはもちろん、iPhoneやiPadなど、幅広いハードで使える。

価格も標準的な機能がそろった「BIMx」が無料、距離や角度、面積を正確に測れる計測ツール、PDFの印刷機能が付いた「BIMx PRO」版も6000円程度と、BIMソフトに比べて非常に安価だ。さらに近く公開予定のWEB版は、普通のWEBブラウザーがあるだけで使え、しかも無料なので主張先や空港待合室のレンタルパソコンからでも使えるのだ。

「BIMxは、内容確認作業時に操作してもデータの内容が変わる心配がありません。しかも、操作は簡単なのですぐに覚えられます。ARCHICADのネイティブファイルに比べてデータが軽いので、普通のパソコンやタブレットで十分使えるもことも、確認検査機関にとって導入しやすい点だと思います」と関戸氏は言う。

BIMxを使った電子申請の手順は、次のようなものを想定している。

まず事前相談段階において、設計事務所側でARCHICADを使って建物の設計を行い、そのBIMモデルデータをBIMx用に変換する。このとき、確認検査機関がチェックしやすいように、平面図や断面図などの図面や面積表、建具表など設計図書が見られる画面や、斜線制限などの把握に使うBIMモデルの視点などを設定しておく。

設計事務所は正式な建築確認申請に先立って、BIMxのデータやその他の書類を電子申請システムを介して確認検査機関に提出。確認検査機関側ではBIMx上で2D図面や3Dモデルを見ながら、設計内容が法令や基準を満たしているかどうかをチェックしていく。

1つのBIMモデルから作られた平面図等の間は、整合性が保たれるので、これまでのように数値の食い違いを見つけるような照合作業が省力化できる。斜線制限は3D画面を見ることで、最も条件が厳しくなる建物の出っ張り部分の位置関係を把握できる。この時点で質疑等が発生すればその内容を設計者側にフィードバックし、これを繰り返す。

そして質疑などがなくなり問題がないと判断された際には、チェックに使用したBIMxデータから出力した設計図書により、設計者等の押印の代わりとして電子署名を行い、正式に建築確認申請を行う。

後は従来と同じ流れだが、実質的な法適合性のチェックはすでに終わっているので、設計事務所側にとっては手戻りが発生するリスクは少なくなる。

BIMで効率化し、個人情報も守る

BIMモデルには建築物に関するあらゆるデータが「属性情報」として埋め込まれ、それが図面などの設計図書作成や建築コストの見積もり、様々なシミュレーションなどを効率化する原動力となっている。

「BIMxのよいところは、文字通り2Dの図面と3DのBIMモデルが融合していることです。例えば平面図を敷いた上に、部屋のBIMモデルを立ち上げて表示することができるので、図面とBIMの対応がとてもわかりやすく悩むことはありません」と、システムインテグレーターの立場からサポートする大塚商会首都圏PLMサポート2課の飯田千恵専任課長は、BIMxならではメリットを指摘する。

一方、その中には個人情報も含まれる。そのため、個人情報保護の観点からBIMモデルを社外に渡してしまうことに不安を示す声もある。

「その点、BIMxのデータはARCHICADのBIMモデルから変換するときに、残す情報を選ぶことができるので、安心です。個人情報はBIMxのデータに受け継がないようにすることで、BIMによる効率化のメリットと個人情報保護を両立できます」と、荒井室長は説明する。

また、面積表などの数値計算がBIMによって自動化されると、どのようにしてその数値が求められたのかが“ブラックボックス化”してしまうのではないかという心配もある。「その点、BIMxでは面積表、図面情報とゾーンによる部屋の3D形状が重ねられていることで、整合性を容易に確認でき、図面に記載されている寸法も確認できるので、いざとなったら検算することもできます」と、グラフィソフトジャパンBIMインプリメンテーション 部長の飯田貴は語る。

BIMxによる建築確認申請ワークフローは、BIMならではの効率化を実現しつつ、従来の手計算による確認方法も残している点で、スムーズな導入が期待できそうだ。

将来的には完了検査や消防との協議にもBIMを

マルチプラットフォーム化されたBIMxは、iPadなどのタブレットでも軽快に動く。そのため、建築確認申請だけではなく、竣工後の完了検査でも現場にBIMモデルを持ち込み、任意の寸法や面積をその場で実測しながら設計と比べてチェックできる。

「本取り組みは、活用内容にまだまだ課題があります。しかしながら、そんなに遠くない将来には、タブレットや普通のパソコンがあれば簡単にBIMモデルを閲覧できるBIMビュワーなどを従来の紙図面の代わりに使えば、消防署などの関係省庁との協議もずっと効率的に行えるようになるかもしれません。また、建築確認申請に限らず、BIMの活用を多方面に広げていければと思います」と関戸氏は抱負を語った。

アーネストアーキテクトでは、この経験をふまえ、社内へのBIMを活用した申請手続きの浸透を目的としたマニュアルの整備を進めるとともに、500㎡以上の案件に対しても対応できる可能性を探っていく予定だ。また、今回の取り組みのノウハウが、小規模設計事務所におけるBIMを活用した確認申請への発展に繋がればと公開等を検討している。

1~2人の小さな設計事務所も、BIM確認申請の敷居は低くなりつつある。そろそろ、BIMxでその準備をしておいてはいかがだろうか。

BIMxによる建築確認申請の実現を目指すメンバー

(左から)

– ERIホールディングス株式会社

竹之内 哲次 氏

– グラフィソフトジャパン株式会社

村田 晶規

飯田 貴

– 株式会社 大塚商会

飯田 千恵 氏

– 日本ERI株式会社

関戸 有里 氏

– アーネストアーキテクツ株式会社

荒井 大輔 氏

板橋 友也 氏

石黒 さやか 氏

高原 千都 氏

Archicadの詳細情報はカタログをご覧ください

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