
株式会社キューブデザイン 代表取締役社長/一級建築士 弦巻大輔 氏

経営企画 坪谷雅史 氏
美しくユニークなバーチャル建築
2013年、設立90周年を迎えたワーナー・ブラザースは、多彩な記念事業を開催した。その中心となったのが90周年記念公式サイト「ワーナーミュージアム」である。次々と開催されたキャンペーンはもちろん、「ミュージアム」を擬したWebサイト自体が大きな注目を集めたのである。特にトップを飾るミュージアム建築は文字どおり建築として設計され、高品位CGで仕上げられたバーチャル建築。エッジの効いたフォルムの外観や個性あふれる各ルーム、そして建物全体に仕掛けられた仕掛けが大きな話題を呼んだ。このバーチャル建築を設計し、ARCHICADでCGを制作したのがキューブデザインである。
Web制作会社をやっている知人の仲介で飛び込んできた仕事でした。すごくタイトなスケジュールだったんですが、面白そうだし、成功すれば当社のブランディングにも大きな追い風になります。となれば見逃す手はありませんでした」(弦巻氏)。
発注元との最初の打合せでは、必要な「施設」などの要素が幾つか指定されただけで、デザインについては完全にお任せだった。とはいえ、何千平米もある巨大なミュージアム建築を、リアルに建築的に考え、提案修正を繰り返していったのでは到底間に合わない。ならば、それ一つで発注者を喜ばせ、納得させて、エンドユーザに訴えかけられるような強力なアイデアで勝負するしかない、と弦巻氏は考えた。
「ワーナー・ブラザースといえば、盾型のWBマークのロゴをご存知ですよね。 最初の打合せで、そのロゴを見て思いついたんです。これを立体にすれば、それ自体が建築にできる、と」(笑)。新潟に帰った弦巻氏はすぐにマスタープランを制作。
「WB」マークをベースに、先方の求める各ルームの要素を盛り込みながら、複雑な立体形状の建築をデザインしたのである。これを坪谷氏がARCHICADで3Dを立ち上げてCGを制作し、 実質3日ほどでプレゼン用のムービーに仕上げたのである。
「横から見ると近未来的な建築なんですが、カメラがその回りをぐるりと回りこみ、最後に上空に舞い上がって俯瞰すると、WBロゴ型の建物形状が明らかになる……というムービーです。これが先方に大受けで、“すごい、このままの方向でお願いします!”と」(弦巻氏)。まさにキューブデザインの戦略である、マーケティング重視の発想に基づいたアイデアと、ARCHICADのビジュアルパワーを活かしたプレゼンの勝利だったのである。



クリエーションとビジネスを両立
「新潟の設計事務所――特に所員1〜2名の小規模な所では、クリエーションにこだわる割りにビジネス面への注力が不十分な会社が少なくありません。そうなるとビジネスの足場が不安定なため、クリエーションへも注力できない悪循環に陥りがちです。当社はその双方を両立させた事務所を目指しています」。そう語る弦巻氏が作りあげたキューブデザインの組織は、設計事務所としても異色なものだ。所員11名のうち建築系出身者は6割で、4割はファイナンシャルプランナーやWebデザイナーなど異業種出身者が占める。この多彩な人材のスキルが同社の成長の原動力なのだ。
「クリエーションとビジネスを両立させる上で重視しているのが“コア(core)からマッス(mass)へ”の流れです。まず納得いくまで徹底的に作り込む。その上でそれを“いかにプロモーションするか”こそ勝負と捉え、より大きな力を注いでいます。ARCHICADを導入したのもその一環でした」(弦巻氏)。
同社では設立当初からスタディやプレゼンを中心に3次元を活用していたが、プロモーション戦略の強化にともない、2.5次元CADやフリーソフトによるビジュアル表現に限界を感じるようになっていた。そこで、若手から「高性能なのに使いやすい」3DCADとしてARCHICADを勧められた弦巻氏は、その導入を決断。運用を当時入社したばかりの坪谷氏に託したのである。
「私は以前Web等の仕事をしており、いろんなソフトに触れていたので、初めての3次元CADにも戸惑いはありませんでしたね。半日基本を教わったら、後は電話サポートに助けてもらいながら、独学で操作を学びました。ただし建築の専門知識はないので社長から教わりながら技術を磨いて、質の高いビジュアルでスピーディな提案が可能になったんです」(坪谷氏)。


初回プレゼンの品質では新潟県随一
「ARCHICADの高品質なビジュアルは非常に効果的でした。実際、坪谷のARCHICAD修得が進むにつれ当社のプロモーションは急速に強化され、これと歩調を合わせるように受注も増えていきました」(弦巻氏)。倍々ゲームで受注を拡大し、供給棟数はいまや住宅だけで年間20棟を超え、売上は6億弱に達した。だが、同社のARCHICAD運用は特別なものではない。
基本的にはまず弦巻氏が施主と会って敷地調査を行い、要望を聞いてマスタープランを作成。坪谷氏と連携してARCHICADで3Dを立上げ、詳細にやり取りしながら3週間〜1カ月程でパースを仕上げていく。
「アングルや“見せる”ポイントなど、設計者のイメージをいかに的確に、リアルに見せるかを重視しています。施主の要望を反映させた箇所等もひと目で分るよう工夫し、お客様に出力をお持ち帰りいただけるくらい作り込むんです」(坪谷)。それだけに表現面ではテクスチャにこだわって実画像を集めた独自のライブラリを構築したり、部品もオリジナルを多数制作するなどし、CGクオリティはきわめて高い。
「初回プレゼンの品質では新潟県随一と自負しています。施主へのインパクトも、設計意図を的確に伝えるという点でもとても効果的で、他社差別化に大きな威力を発揮しています」(弦巻氏)。もう一つのポイントは、この強力なビジュアライゼーションを実施設計後も活用している点だ。
「より精密なパースをお見せして“完成後”を具体的にイメージしていただくことで、打合せがスムーズになるのはもちろん、付加的要素の提案で追加契約も狙えるんです」(弦巻氏)。まさにビジュアルパワーを原動力に躍進続ける同社では、海外も視野に入れた展開をめざしている。
だからこそ今は本物指向のものづくりを積み重ね、設計事務所として密度を高めていきます。もちろんプロモーションについてもより幅広くARCHICADを活用していきますよ。BIMxを活かしたバーチャル展示場等ぜひ挑戦したいですね」(弦巻氏)

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