BIM Classesの年間パスを活用し、1年間で全員が全コマをクリアする予定のイチケンBIM推進のメンバー。
左から佐々木拓実氏、宮田賢作部長、上條育朋氏、一森健太郎氏
月間130コマを開催する「BIMの常設ジム」
東証1部上場の総合建設会社、イチケン(本社:東京都港区)は2016年にBIMの導入教育を始め、19年にBIM推進の部署を立ち上げた。同業他社に比べて、BIM歴が浅い同社の課題は、いかに短期間で実務レベルのBIM活用力を持った社員を増やすかだ。
そんな同社が活用しているのが、グラフィソフトジャパンがArchicadなど自社製品を題材にして、ほぼ毎日開催している「BIM Classes」というオンライン講座だ。
イチケン技術本部設計部設計四部(BIM推進)部長の宮田賢作氏は「この1年間で、BIM推進の4人と設計部の9人、計13人がBIM Classesの年間パスで、実務でのBIM活用力をさらに身に付けられそうです」と語る。
例えばBIM推進のメンバーだと、受講開始から約5カ月間で宮田氏と上條育朋氏が全41コマをクリアし、一森健太郎氏、佐々木拓実氏もあと少しを残すだけになっている。
これまでのBIM講習会は、不定期に時々、開催されるものがほとんどだった。しかし、BIMClassesは、平日の10時〜17時に、ほぼ毎日開催しているので、オフィスに居ながら仕事の合間に受講しやすい。
「毎日少しずつ、目指すスキルを決めて『BIMの常設ジム』のような感覚で受講しているうちに、気がついたら全クリしていました。Archicadの操作だけでなく、ソフトの開発思想も理解できるので、体系的な活用スキルが半年間で身に付きました」と宮田氏は語る。
例えば、2021年3月だけでも1カ月に130コマ、延べ462人もの受講生が学んだ。コースはArchicadの基本スキルを学ぶ初級から、BIMの設計ワークフローやコラボレーションを学ぶ中級、そしてオブジェクト作成や属性情報の活用による情報管理などを学ぶ上級まで、全41コマが用意されているのだ。
セキュリティーが確保されたマイクロソフトのTeamsによって行われる授業は、カリキュラムが1コマ2時間に分けられているので、仕事の合間に職場や自宅にいながら受講できる。授業が終われば、そのまま仕事を続けられるので、効率的だ。
教わった方が早いし、近道
授業を担当する講師も実務経験豊富な実力派ぞろいだ。最低でもArchicadの使用歴が5年以上の建築設計経験者で、GRAPHISOFT認定トレーナーの資格を持っている。
Archicadは「マニュアルを見ないでも使える」と言われるほど、取っ付きやすいBIMソフトだ。一方、マニュアルは3000〜4000ページもあるという。
講師の稲葉稔氏は「そのため、独学で少しずつArchicadを使いこなしてきた設計者でも、知らない機能はたくさんある。この講座で知らなかった機能や実務で使える“小技”を学んだおかげで、作業が早くできるようになった例は数え切れない」と言う。
イチケンBIM推進の佐々木氏は、今年で入社3年目だ。学生時代もArchicadを使っていたが、入社後は使い方が変わったという。
「例えば、大学時代は時間がたくさんあったので、プレゼンボードを作るのにもArchicadのほかIllustratorやPhotoshopなど複数のソフトを使って作っていました。しかし、社会人になるとスピードが求められます。BIM Classesで『クリエイティブプレゼンテーション機能』を学んだおかげで、Archicadだけで作れるようになり、作業スピードがぐっと上がりました」と佐々木氏は語る。
上條氏の印象に残る機能は、既存建物の改築に使う「リノベーションフィルター」だ。一般的には既存建物のBIMモデルを(1)既存要素、(2)解体要素、(3)新設要素に分けて、表示を切り替えることで改築の過程をビジュアルに説明するのに使われる。
「BIM Classesでは、改築時の時間経過を表現する使い方だけでなく、新築時のプランA、プランB、プランCなどを比較して表示するという使い方も教えてくれたのです。これは目からウロコでした。これまではプランごとBIMファイルやレイヤーをいくつも作っていましたが、リノベーションフィルター機能によって、1つのBIMファイルで管理できるようになりました」と上條氏は語る。
また、一森氏は「Archicadのモデルを属性情報付きでBIMxに書き出し、現場でタブレット端末を使って専門工事会社ごとに表示を切り替えて納まりや他工種との取り合いなどを説明するスキルが身につきました。また屋根ツールをしっかり理解できたことで、作業時間か短縮できるようになりました」と言う。
それぞれ、長年、実務でArchicadを活用してきた講師のノウハウが感じられる話ばかりだ。このほか、最適なプロジェクトファイルの容量や、ホットリンクによるデータ管理の方法なども、独学や試行錯誤を繰り返すよりも、BIM Classesで学んだ方が早いだろう。
ベテランぞろいの講師陣は、それぞれArchicadを実務で活用する中で、つまずいたり、新たな発見をしたりと受講生と同じような経験を数多くしている。そのため、受講生には同じムダをさせたくないという思いも強く、「教わった方が早いし、近道」なのだ。
オンラインならではのメリットも
リアルな教室に集まって行うハンズオントレーニングと違って、オンライン講座はわかりにくいのではと思われがちだ。しかし、BIM Classesには受講者が6〜8人と少なく、講師と受講者が1対1でつながるオンライン講座ならではのよさがある。
講師を務める新貴美子氏は「オンライン会議システム『Microsoft Teams』の画面共有機能で受講者のArchicad画面を共有し、つまずいていることの解決法を解説することもあります。こうしたことができるのも、オンラインが持つ双方向コミュニケーションの強みでしょうね」と語る。
「画面の向こうにいる受講者に、リラックスしてもらえるように、笑顔を心がけたり、話しかけたりしています」(新氏)という。受講者側の佐々木氏も「アットホームな雰囲気があることで、わからないことを気軽に質問しやすいです」と語る。
また社内で複数のメンバーが同じ講習を受けることで、知識のレベルがそろってくるというメリットもある。宮田氏は「自然に使う用語が統一され、共通の言葉で会話できるようになってきます。在宅勤務が多くなった今、業務上のコミュニケーションもスムーズになりました」と言う。
このほか、オンラインのメリットとしては、昼間の講義内容を録画した「復習動画」を後から何度も見られることがある。わからないことがあれば、帰宅後や休日に復習動画を見て、何度も繰り返し練習できるのだ。
グラフィソフトジャパンでBIM Classesの企画・運営を担当する松阪みさと氏は「年間パスボートを使って学ぶ人は既に300人を超えました。建築CPD情報提供制度やJIA、建築士会などのCPD制度とも連携しています。全41コマをクリアした後は、BIMマネージャーなどの資格にもチャレンジできます」と語った。
BIMの活用力が企業の経営戦略を左右しつつある今、企業の大小問わず、無理せず短期間にBIMスキルを上げる常設ジムとして、BIM Classesを社内のオンライン教室として利用してみてはいかがだろうか。
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