常務取締役
設計室長
安野スタジオ・リーダー
安野 芳彦 氏
設計室
永廣スタジオ
主任
土井 秀尚 氏
設計室
安野スタジオ
石野 順 氏
設計室
安野スタジオ
墓田 京平 氏
設計室
永廣スタジオ
石井 衣利子 氏
設計者自身が選ぶ建築設計に最適なBIM環境
「BIMに関する当社の最初の取り組みは、1996年に始まりました。といっても、当時はまだBIMという言葉は一般的ではなく、3次元CADの活用が主眼でしたね」(安野氏)。米国製3次元CADを用いて進められたこの取り組みは、当初、同社社内の多くの注目を集め、多くの設計者がその試用に挑戦したという。しかし、当時の3次元CADは設計ツールとしては未熟で、設計者たちの高い要求を満たせず、流れはやがて滞ってしまった。だが、それも完全に途絶えたわけではない。3次元CADは一部で使われ続け、関連情報の収集も続行された。そして、再び同社の機運が高まったのは2009年。「BIM元年」のことだった。
「当時BIMという言葉が業界を席巻して、設計者たちの関心も高まり、“とにかく使ってみよう”という話になったのです。そこでまず、そのための環境を整えることになりました」(安野氏)。さまざまな検討を経て同社が用意したのは、設計者の個性や志向を重視する同社ならではのユニークなBIM環境だった。すなわち、業界を代表するBIMツールとして、ARCHICADともう1種類の他社製品をピックアップ。どちらとも決めずに、両製品を導入したのである。それは設計者一人一人が、自身のスタイルや志向に合わせて自由に選べる環境を目指したものだった。いわば同社は“設計者に最適なBIM環境”を、設計者自身に選ばせようと考えたのである。その結果は意外なほど早く、しかもきわめて明確な形で現れた。設計者の多くが、ごく自然に「ARCHICAD」を選び、また、他社の製品を選んだ設計者の多くがARCHICADへと乗り換えてしまったのである。
設計者の感覚にフィットし、建築設計の流れに合った3次元CAD
「入社当時は、他社の3次元CADを使っていました。でも、レンダリングの仕上がりなど、どこか違和感があって自分のテイストに合わず、仕方なく一時はまったく別の3Dツールを使ったりしていました。しかし、これにも満足できなくて、導入を機にARCHICADを使ってみたのです。すると、自分が求めていた雰囲気にすごく近くて、使い勝手も良く、フィーリングがぴったりだったのです」(石野氏)。そう語る石野氏は安野スタジオの中枢メンバーの一人であり、多数のツール遍歴の末にたどり着いただけに思い入れも強い。一方、若手設計者の墓田氏は学生時代に、ARCHICADを含む多様な3Dツールの使用経験があった。
「正直なところ、“選んだ”というよりもいろいろなツールを使う中で、気が付いたらARCHICADになっていたという感じですね。当社でもユーザが増えましたし、今後はきちんと勉強してレベルアップしていきたいですね。設計者にとってARCHICADの習熟は、重要なキャリアになっていくと感じています」(墓田氏)。同じく若手の石井氏は、初めて参加した実案件で、前述の他社製3次元CADを使っていたが、最近別のプロポーザル案件の仕事で初めてARCHICADに触れ、非常に驚いたという。 「初めて触れたのに、ARCHICADはすんなり入って行けましたね。それまで使っていた他社製品で苦労したこともあって、その使いやすさがとても印象的でした。たとえば設計しながら形状や収まりを確認したいと思えば、すぐにパースを立ち上げられる。設計の作業の流れが滞らず、とても感覚にフィットするのです」(石井氏)。
このようにARCHICADへ支持が集まり、普及が進んだ理由について、安野氏は製品自体の優秀さだけでなく、教材の充実を上げる。 「“ARCHICAD Magic”という教材があって、これが非常にわかりやすいのです。ひと通りやってみると、ARCHICADだけでなく、BIMの概念や良さも理解できる。BIM導入に非常に役立つ教材でした」。
設計事務所が追求すべき建築の質を向上するBIM
本格的なBIM導入の開始から間もなく2年。実施設計図までフル活用した案件こそ少ないが、梓設計ではプロポーザル等を中心に、プランニングやデザイン、プレゼンテーション等でBIMを利用するプロジェクトも増えてきた。まだまだ導入段階であり手探りしながらの試みだが、BIMから生まれるメリットも少しずつ見え始め、ノウハウも蓄積されるようになっているという。
「設計の初期段階ではこれまで、空調や照明などのエネルギー消費量は経験値で表していました。ARCHICAD 16のエネルギー解析機能は、設計中のBIMモデルから即座にエネルギー消費量やCO2排出量の概算データを数値として出力してくれるので、企画段階でも設計案を定量的に比較するのに役立ちそうです」(前田部長)。
これまでは、BIMの「出来るところから」を推進してきたが、今後はBIMの本来の特徴である属性データを活かした運用も充実したいという。「次の目標は、確認申請をBIMで行うことです。せっかくのBIMデータですので、平面図、立面図などの図面との連携を図っていきたいと思います」(米岡氏)。日本国土開発のBIM活用は、ARCHICADや関連ソフトの進化とともに、さらに充実していきそうだ。
「設計事務所にとって重要なことは、一貫性のある、より良いデザインを行うことであり、それをいかにして不整合のない形で正確にゼネコンへ伝えていくかです。その意味で、BIMが私たちにとって大きな意味を持つツールであることは間違いありません」(安野氏)。ARCHICADによる設計なら“実際にどう見えるか”を絶えずシミュレーションし、確認しながら進められる。作業一つ一つの質を上げるツールとして十分機能するのだ。もちろん3D建築モデルを核に、不整合のない設計をわかりやすく伝えられることはいうまでもない。 「発注者への提案に際しても、BIMなら素早く確実にイメージを伝えられますから、素早く承認が得られ、私たちも迷いなく進められます。結果、効率的に品質向上が図れるのです」(土井氏)。 これこそ設計事務所が目指すべき“質を良くするためのBIM”であり、ゼネコンの“効率良く作り上げるためのBIM”とは異なるものだと同社は考えている。
「最終的には両者が繋がることがベストですが、それにはまだまだ時間がかかります。だから私たちはまず、設計事務所にとってのBIMをきちんと確立しなければなりません。そこで最近、当社ではBIMマニュアルのワーキンググループを立ち上げ、設計者が個々に蓄積してきたARCHICADノウハウの集約を開始しました。もちろん並行して、本格的にBIMを活用するプロジェクトも複数動き始めています。私たちのやり方で“設計事務所のBIM”を追求していきたいと考えています」(安野氏)。
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