株式会社 都市環境設計
基本&実施設計から各種シミュレーションへ 設計者による設計者のためのBIM活用進化論

株式会社 都市環境設計

都市環境設計は、公共建築物を中心に設計、監理からコンサルテーションまで幅広く展開する組織設計事務所である。2010年、同社は全社統一BIMソフトとしてARCHICADを選択、本格的な運用を開始した。3年後の現在、既に計画段階やプレゼンテーション段階でのARCHICAD活用手法を確立し、お客様への分かりやすい説明やコンペ・プロポーザルでの競争力向上など確かな実績を蓄積。実施設計への展開も開始している。着実にステップアップし続ける同社の取組みの詳細について、同社設計部の皆様にお話を伺った。

株式会社 都市環境設計

創立:1972年9月

代表者:代表取締役社長 中原 聡

所在地:大阪市浪速区

事業内容:建築物及び設備関係の設計・監理、建築物の調査・改修等、コンサルタント業務その他

HP:http://toshikan.com

取締役
設計部長
木村孝一郎 氏

取締役
設計部 次長
大久保誠悟 氏

取締役
設計部 次長
大久保誠悟 氏

設計部
設計課 課長
杉浦康彦 氏

設計部
設計課 課長
後藤仁志 氏

設計部
企画課 主任
近藤雅彦 氏

コンペ・プロポーザルの競争力アップから総合設計力の手法開拓のために

「当社のお客様は官公庁が中心で、多くが国や自治体、地方整備局などの発注になる公共建築物の設計監理の仕事となっています。当然これらは競争で業者が選定されますが、近年その競争が非常に厳しさを増しているのです」。そう語るのは、同社設計部長の木村孝一郎氏である。同氏によれば、特にプロポーザルが主体となってから、発注者から求められる検討事項が詳細多岐に渡るようになり、環境に関わる検討など内容もきわめてシビアになったのだという。木村部長の言葉を受けて、企画課の藤田氏も語る。

「そうした流れのなか、当社としてはプロポーザルでの競争力を上げていかなければなりません。つまり設計者にもプレゼン力向上が求められているのです。特に質の高いビジュアライゼーション活用は欠かせないものとなり、うちの設計者も多彩な3次元ツールを使うようになりました」。

当初、このような3次元化への対応は設計者個々の取組みに任され、設計者たちはそれぞれ思い思いの3Dツールを選んで使っていた。しかし、2010年に国交省がBIM採用を条件とする試行案件への取り組みを発表し状況は大きく変化。公共建築をフィールドとしていた同社も、BIM化を目指す流れへと大きく舵を切ったのである。

「むろん以前からBIMのことは耳にしていましたし、情報収集も行っていたので戸惑いはありませんでした。とにかく、まずは全社で統一的に使うためのBIMツール選定を行ったのです」(藤田氏)。候補に上がったのはARCHICADともう1本の外国製3次元CADだった。実はこの他社製BIMソフトは、BIMツールとしてのシェアも高く、当初社内ではデータ連携の観点からもこちらが望ましいのではないか、という声があった。しかし、藤田氏らが比較検討を進めるうちに形勢は大きく変わっていった。

「実際、設計者に使わせ使用感を確かめてもらったんです。すると皆がARCHICADを支持するんですね。自分で使ってみて理由はすぐ分りました。使い勝手が格段に良く、設計者が“触っていて気持ち良い”ツールなんです。つまり敷居が低く取っつきやすい。普及を進める上でも大きなメリットがあるわけです」(藤田氏)。

こうして同社はARCHICADの採用を決定。約1年かけて社内への普及活動を行い、設計者たちは徐々に実務での活用を開始したのである。

建物全景の外観パース
エントランスの内観パース
ロビー吹抜部の内観パース

実施設計の90%をBIM作図

「そんな経緯もあって、当初はやはりボリューム検討等のスタディやプレゼンでの活用が中心でした」。そう語るのは設計部次長の大久保氏である。同氏によれば、3Dを立上げて形状を作りだし、拡大縮小し回転させながら行うスタディや配置案の検討、CGを駆使した多彩なビジュアルによる提案は、ARCHICADが最も威力を発揮するフィールドだと言う。

「しかも、こうした一連の作業を容易に素早く行えるのがARCHICADの強みです。ノートPCに入れていけば、出先でも3Dを回しながら好きな角度で見せられる。プレゼンはもちろん発注者との打合せの席でも好評です」(大久保氏)。さらに日影や成果品パースの制作などそのフィールドは着実に拡がり、基本設計段階ではほぼ満足できるものが作れるようになったと言う。

「次は実施設計です。一般図や発注図をARCHICADでどこまでやりきれるかが大きな課題で、既に実物件での試行を始めています」(藤田氏)。これはある学校校舎の建設プロジェクトで、標準図やメーカー図、特記類の2Dデータを基にARCHICADでBIMモデルを作成。基本設計から実施設計までフルに出図レイアウトを作って、検討資料から発注図や申請図、概算見積にパースまで生成したと言う。さらに初期段階では計画地盤検討も行い、日影等の規制チェックやゾーニング等ボリュームスタディにも活用し、早い段階でプランイメージを固めていったのである。

「課題だった実施設計についても、特記や標準図など他CADフォーマットの2D図面も読込んで活かしながら2D作図とBIMモデルを組み合わせ、平面図や矩計図等々を作成し、最終的には全体の90%までBIM作図で仕上げました」(藤田氏)。

予想以上の進展を見せた実施図への取組みだったが、これらの経験から、同社としては実施設計へのBIMの適用手法をブラッシュアップし、BIMへのスムーズな切替を加速させている。最前線でこれに取組む設計課課長の杉浦氏、後藤氏も、その姿勢は積極的である。

「BIMは広く使うほど効果を発揮し、良い事ずくめなのは分っています。一方で仕事は時間との戦いでもあり、従来式を選ばざるを得ない場合もありますが、実施設計ではBIMの実務効率をいかに高めるかを意識して、ノウハウを蓄積していくことを目指しています」(後藤氏・杉浦氏)。

BIMモデルと積算情報でコストプラン作成
矩計図の作成

環境シミュレーションで総合力アップ

実施設計と並行して同社が力を注ぐもう一つの取組みが、ARCHICADの環境シミュレーションツール「EcoDesigner」等を利用した環境関連の省エネシミュレーションや流体シミュレーションの展開である。

「前述の通り、プロポーザル等における発注者の要求は厳しさを増しており、特に環境への配慮が課題となるケースが増えています。つまりデザイン提案時に環境性能やランニングコストを問われることがとても多いのです。そこでプランニング段階からEco designer等でこれらをシミュレート。環境面の目安を付けながら設計しています」(藤田氏)。もちろんシミュレーション結果は多様な設計提案に反映し、プレゼン力強化に一役かっている。この結果「プロポーザルでの提案力がはっきり上昇した」と語るのは、企画課の近藤氏である。「当社ではこうしたBIMモデルに積算情報を加味して、建物のコスト管理も行っています。こうした設計の取組は、施主からの評判も良く、設計実績の面からも提案内容に説得力がついたと思います」。

このような成果を受け、同社では今後さらにARCHICAD、BIM活用への注力を打ち出している。木村部長は語る。

「実施設計の次は構造や設備との連携が課題になるでしょう。図面整合性の確保の点からも重要ですが、さらに施工図、維持管理へと進むとこれは本来設計の範疇ではなく、そこまで私たちが検討すべきなのかという問題もある。いまや設計図の概念そのものが問われているわけです。設計者にとってターニングポイントであり、その意味でもARCHICAD修得とBIMの活用は大きな課題と言えるでしょう。全社への普及をさらに加速したいですね」。

Eco Designerによるランニングコスト検討
断面を切ってエコシャフトを検討

Archicadの詳細情報はカタログをご覧ください

ー カタログと一緒にBIMユーザーの成功事例もダウンロードできます ー

  • Archicad ユーザーの設計事例を紹介
  • 設計時の裏話や、BIMの活用方法など掲載
  • その年ごとにまとめられた事例をひとまとめに
  • BIM導入前から導入後の情報満載

Archicadのすべての機能を
30日間お試しいただけます。

Archicadを導入して自分らしい設計をしよう