株式会社 カクオ・アーキテクト・オフィス
代表取締役
松村 佳久男 氏
株式会社 カクオ・アーキテクト・オフィス
設計士
小嶌 俊輝 氏
ARCHICAD フル活用の設計デリバリー
「当社が ARCHICAD を導入して今年で8年目となります。自慢ではありませんが、現在は私なりの 3D 設計スタイルを確立できたと感じています」。笑顔でそう語る松村氏は今年五十歳。ちょうど日本の設計事務所が手描きから2D CAD へ移り変わる端境期に、この世界へ足を踏み入れた世代だ。
「だから手描きと 2D CAD の両方を体験しており、アナログとデジタル双方のメリット・デメリットを知っています。これを踏まえて双方の“良いとこ取り”で作りあげたのが、当社の 3D 設計スタイルなのです」。
ひと言でいえばそれは“アナログとデジタルの高度な融合” だ、と松村氏は語る。両者を巧みに行き来しながら、双方のメリットを最大限引きだそうという手法なのである。業務の流れに沿って具体的に紹介していただこう。
「まずは施主の要望や設計条件等を詳しくヒアリングし、ベースとなる企画を行います。この段階でのデザインの思考過程はあくまでアナログです。いわば“頭と手”で考え、自らの感覚や感性から導き出したイメージを膨らませていくのです」。
これがある程度まとまってきたら、敷地や周辺環境、法的条件等を調べ、これに基づいてARCHICAD で 3D モデルを立上げる。基本的なボリュームと意匠の検討が中心なので 3Dモデルも着色せず、ホワイトモデルを使うことが多いが、ここですぐにお客様にお見せするのがポイントだ。
「ここで重要なのは、必ず施主企業のトップにご覧いただくことです。そして 3D モデルに多様なパターンの代案を仕込み、ノート PC に入れた ARCHICAD と60インチの大型スクリーンを使い、ウォークスルー等でお見せします」。なぜ ARCHICAD をプレゼンの席まで持ち込むのかといえば、トップの反応に合わせ要望に応えて、その場で ARCHICAD を用いて素早く変更や修正を行うためだ。「設計デリバリー」とでも呼びたくなる、この独特のプレゼン手法を同社はフルに活用しているのである。
「特に店舗等では企業トップは建物にも強い思いをお持ちです。しかし、具体的なイメージが説明できずお困りの方も多い。そこで多彩なケーススタディをお見せすれば一気に話が早くなります。やがて“これで行こう!”とトップの声がかかる……私たちはこの一言がほしいわけです」。そして、この手法には ARCHICAD とArtlantis が欠かせないと松村氏は断言する。
――それはなぜなのか?
デザイナーが楽しく気持ち良く使える CAD
「“ 設計デリバリー”的なプレゼン&設計手法をスムーズに進めるには、施主の嗜好や意志を先読みしなければなりません」そう語るのは入社4年目の設計士 小嶌俊輝氏である。小嶌氏によれば、この事前の読みと仕込み、そしてプレゼンテーション当日の ARCHICAD による柔軟でスピーディな対応が、この手法のカギだと言う。
「だから制作にあたっては、トップの方の考え方や好みを考慮し“このパターンならこういう可能性も……” などと想像しながらデータを作ります。当日は先方の反応を詳細に観察しながら、ちょっと違うと感じたら即座にレイヤを切り替え、仕込んでおいた別のものを出すのです」(小嶌氏)。
さらに先方から要望をもらえば、簡単なものはその場で修正してしまうわけで、効率的であるのはもちろん、施主の満足度もきわめて高くなっていく。まさに施主とプランへの深い理解、そして ARCHICAD を自在に使いこなす技術が、このデリバリー設計を可能にしている、といえるだろう。裏返せば、彼らデザイナーの感性や意志にどこまでも忠実に寄り添うクリエーティブツールが欠かせないわけで。 ARCHICAD が無くてはならない、と彼らが口を揃えるのはそのせいだ。
8年前の 3D 設計導入時に ARCHICAD を選んだのは、これがどれよりも面白い CAD だったからです」と松村氏は笑う。3D CAD 選定は若手設計士たちが行ったが、口を揃えて「3D化するならこれです!」と ARCHICAD を推してきたのだという。
「試してみるとなんだかすごく楽しいんです。機能的に十分な製品であるなら、デザイナーが気持ちよく楽しく使えることの方が大切です。私は Mac ユーザですが、同じなんですよ。きれいで楽しくて納得がいく。そんな気持を大事にしたら、自然と ARCHICAD に決まりました」(松村氏)。
「空気感」を伝えるレンダリングツール
カクオ・アーキテクト・オフィスの 3D 設計では、基本計画以降も多様なビジュアルコミュニケーションが積み重ねられていく。たとえば日照や照明の雰囲気、素材の色や質感、さらにはプランに合わせた家具類まで社内で丁寧に作り込み、光の反射具合等もリアルに再現しながら配置して、具体的な検討を進めていくのである。
「たとえばレストランの厨房なら、使う人の動線や視界まで3D で細かく検証・検討し、合理的な省スペースを図って客席を広げ、収益性の向上を提案したりしましたね」(松村氏)。
こうしたきめ細かな取組みの蓄積が、同社に対する施主の確固たる信頼を築きあげるのである。そして、このビジュアルコミュニケーションの一つのクライマックスが、 Artlantis を用いたプレゼンテーションだ。
「プランの内容を正しく伝え、施主と共に検討していくには ARCHICAD は最強のコミュニケーションツールですが、そこからさらに一歩進んだ“空間の空気感” を伝える上で不可欠なのがレンダリングソフト Artlantis です」。そう語る松村氏によれば、小嶌氏らがArtlantisで仕上げたフォトリアルな映像は、価値観の異なる人たちに対しても、不思議と共通して「いい感じ」を与えるのだという。
「もちろん Artlantis はデジタルツールですが、その意味ではアナログなのです。“いい感じ”というアナログを伝えられるのです」(小嶌氏)。まさにアナログからデジタルへ、そしてまたアナログへと行き来しながら、質の高いプロジェクトを効率的に進めているわけで、「3D 設計スタイルを確立した」という松村氏の自負も当然だろう。
「まだまだ私たちのチャレンジは続きます。技術的には VR ですね、これを早く実務に導入したいと考えています。また仕事はアジアを中心に海外案件が増えていますが、言葉の問題があるので、ビジュアルコミュニケーションがますます重要になっていくでしょう。当社の手法を積極的にアピールしていきたいですね」(松村氏)
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