株式会社 はりゅうウッドスタジオ
空間を共有し協働するプラットフォームとしての ARCHICADが復興プロジェクトの柱となる

株式会社 はりゅうウッドスタジオ

はりゅうウッドスタジオは、福島県南会津町で活動するアトリエ設計事務所である。当初は木造住宅等を中心に取り組んでいたが、東日本大震災後に木造仮設住宅の設計・建築に携わり、これを機に、大学関係者や設計者と共に縦ログ構法を開発。公共建築の分野へも進出し、いまや幅広い建築設計に取組んでいる。そして、この縦ログ構法の展開、公共建築において大きな力を発揮したのがARCHICADである。はりゅうウッドスタジオを芳賀沼氏と共同する代表取締役の滑田氏にその詳細について伺った。

株式会社 はりゅうウッドスタジオ

所在地 : 福島県南会津郡南会津町(福島本社)

代表者 :
代表取締役 滑田崇志
管理建築士 取締役 芳賀沼整

設立 : 2006年

事業内容 : 建築に関する設計監理業務、コンストラクション・マネジメントに関する業務、建築に関する企画、出版物の企画ほか

webサイト : http://www.haryu.jp

株式会社 はりゅうウッドスタジオ
代表取締役/一級建築士
滑田崇志 氏

株式会社 はりゅうウッドスタジオ 代表取締役/一級建築士 滑田崇志 氏

株式会社 はりゅうウッドスタジオ
管理建築士/取締役/一級建築士
芳賀沼整 氏

株式会社 はりゅうウッドスタジオ 管理建築士/取締役/一級建築士 芳賀沼整 氏

新たな木造仮設住宅への取組み

「3月11日の夕方、僕たちは、仲間の安否の確認と、被害の大きそうな地域から順に施主の安否の確認を行いました。双葉郡富岡町を訪問していた芳賀沼の安否の確認できませんでしたが、夜中になってやっと電話がつながりました。と同時に富岡町にあった僕たちの設計した新築間もない住宅が流されたことも知りました。」そう語るのは、はりゅうウッドスタジオの代表取締役である滑田崇志氏である。滑田氏によれば、福島県では原発事故による影響もあり被災者の避難生活が長期化が予想され、約16800戸に及ぶ応急仮設住宅の建設要請があった。その内の約6300戸が地元の建設業者を対象に不足分の仮設住宅の設計施工が公募されたのである。

「身近な人が被災し、僕たちも復興に携わろうと話し合っていました。その中で、応急仮設住宅の設計・建設に参加しました。被災の長期化が予想される今回、住み心地や快適性も重要になります。そこで快適なログハウスに可能性を感じました」。同地域の建築会社が日本ログハウス協会に属しており、このネットワークにより、ログハウス協会に属する県内工務店が結集され、はりゅうウッドスタジオも設計・開発にあたることになったのだ。

「ログハウスの仮設住宅は構造材と内装材、外装材まで兼ねるので部材点数が少なく、工期も短期間で済み、非常に仮設住宅向きでした。」 こうして滑田氏らは短期間で県産材によるログハウス型木造仮設住宅600戸の供給に成功したのである。このことを通じ、滑田氏は地方の小規模事業者の在り方について一つの示唆を得た。「地方の小さな事務所が集まり力を合わせれば、一社ではできない大きな仕事もできると実感したのです。そこには、私たちの将来を切り開く大きな可能性がありました」。──さらにここからユニークな技術成果も生まれた。「縦ログ構法」である。

「地域材の正角材あるいは平角材を縦に並べて、ボルト等で結束し、『木打放し』の空間を作ることのできる新しい建築構法です。パネル化に大規模な工場が必要なCLTと異なり地方の中小製材所でパネル加工できるので、コストを抑えてスピーディに作れるのです」。まさに地元の林業・製材業の活性化という点でも豊かな可能性を持つ新技術として注目を集めている新構法だ。ただ、この構法の最大のポイントであるパネルの製作については、当初大きな問題があったという。「当時、当社は他社CADを使っていましたが、これでパネル図を描くのがすごく大変で……。1枚1枚描いて整合性をチェックするだけで大変な手間がかかり、内容を検討する時間さえないほどでした。そこでなんとかしてこれを楽にできるツールはないかと考え、たどり着いた答えが ARCHICAD だったのです」

これほど可能性の豊かなCADは他にない

「実は私は最初、ARCHICAD の導入する気はなかったんですよ」。当時は所員全員が他社CADに馴染んでおり、ARCHICAD への乗り換えには手間がかかると考えていたのだという。しかし「とにかく見てみよう」と芳賀沼氏に誘われて見たデモンストレーションに、滑田氏は大きな衝撃を受ける。

「このCADなら自ずと平面・立面・断面図の整合性が取れる、という点にまず驚かされました。私たちが悪戦苦闘していた、縦ログ構法のパネルの整合性の問題を解決できるんじゃないかと感じたんですね」。また、パースを設計者が作れるのも大きな魅力だった。同社ではパースを内制していたが、CGを使えるスタッフにパース制作が集中し大きな負担となっていたのだ。「それにお客様への提案や社内打合せも、ちゃんとモデルで語りたいという思いがありました。分り難い平面図でなく、明快な空間を皆で共有し議論しながらやりたかったんです」。その点、3Dモデルが簡単に作れて共有できる ARCHICAD は最適なプラットフォームだった。

「さらにこのことは、ログハウス型仮設住宅の開発で意識した“地方の小さな事務所が力を合わせて大きな仕事に挑む”アイデアのプラットフォームにも応用できます。まさにこれほど可能性豊かなCADはありません。そう感じて導入を決めました」。──とはいえ、業務と並行して進める3D設計への切り替えは容易ではない。滑田氏が ARCHICAD を使い始めても、事務所の中では実施設計に使えるのか半信半疑だった。その状況を変えたのは、一人のスタッフだった。

「子どもが産まれて家にいたスタッフに、ある300平米くらいの物件を ARCHICAD でやってみて、と頼んだんです。すると独学しながら夜コツコツ入力していき、3Dモデルまで一人でやりきったんです。これを見て実施設計に使えるんだと分り、それが突破口となり皆がやる気になりました。実際、そこで、今後ARCHICADしか使わないと宣言して、約1年で全員が ARCHICAD メインに切り替わりました」。

空間を共有し協働するプラットフォームへ

「現在は民間の物件と公共物件が半々。具体的には公共が年間3〜4件、民間は小さいものを含めると30〜40件が動いており、これを私を含めて10人で対応しています」。導入前に比べ仕事量もスタッフ数も増えており、同社は着実な拡大を続けている。ARCHICAD の幅広い活用がこの成長を力強く後押ししているのは言うまでもない。「以前と比べ、図面を描くのがすごく楽しいんですよ。2Dで立面図、断面図と作業していくのと違い、作る面白さがあるんですね」。しかもこうして、まず模型を作るように3Dモデルを作って進めるのが基本となったため、施主とも同僚との間でも、初期段階からプラン内容を正確に把握し合い共有し合って進められるようになった。まさに ARCHICAD 導入時の滑田氏の期待が実現されたのである。

「以前は図面を使ってやりとりしていましたが、設計者が考えた内容と施主が想像する内容がズレたまま進み、施主に伝わらないこともありました。模型やパースで確認したくても、作る時間がなかなか取れませんでした。今は最初に3Dモデルで見せられますからね」。当然、事務所内でも3Dモデルができ次第共有しチェックし合うので、図面出力前に多くの所員の間で議論して仕上げられる。設計品質が向上するのは当然だろう。「2Dでは考えることも難しかった複雑な建物もBIMを使えば設計できるし、変更設計にもスピーディに対応できる。よりデザインの検討に時間を割り当てられるようになりました」。もちろん当初からの課題である縦ログ構法も ARCHICAD により展開が大きく加速している。パネル設計を ARCHICAD で行うことで積算や監理が容易になりスピードアップしたほか、BIMで一括して施工図まで作りあげることでさらに多くのメリットを生み出しているという。

「今後はやはり、県内の設計事務所でネットワークを組んで大型物件に挑戦したいですね。県内で小さな仕事を奪いあうより、協力して大きなプロジェクトに挑戦することが、地方の設計事務所の活路に繋がると思うのです。そのプラットフォームとして、やはりARCHICAD は最適です。実際、当社にもチームワーク機能を使って在宅勤務するメンバーが2名います。──そう考えていくと、このCADはアトリエ事務所にとって非常に強力な武器になるのではないでしょうか。今後のさらなる進化に期待したいですね」

Archicadの詳細情報はカタログをご覧ください

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