2015年9月に開催されたARCHICAD 19製品発表会には、東京、大阪の両会場合わせて660名のお客様にご来場いただきました。当日はシーラカンスK&H株式会社 工藤 和美氏、Bond Bryan Architects Rob Jackson氏による基調講演、そしてARCHICAD 19プレゼンテーションでは、設計編、施工編と題し、それぞれ株式会社日建設計 安井 謙介氏、鹿島建設株式会社 安井 好広氏にゲストとしてご登壇いただきました。また会場ホワイエでは25社のパートナー企業様の展示でにぎわいました。
プログラム
「ARCHICAD19」製品発表会
『Faster than ever -嘗(かつ)てない速さ-』
東京会場
9:30-10:00 | 開場 |
10:00-10:30 | GRAPHISOFT KEYNOTE グラフィソフトジャパン株式会社 代表取締役 コバーチ ベンツェ |
10:30-11:00 | 基調講演 木造建築におけるスタディ シーラカンスK&H株式会社 代表取締役 工藤 和美氏 |
11:00-11:15 | 休憩 |
14:00-15:00 | ARCHICAD 19 -GRAPHISOFTのBIMソリューション- 設計編【GRAPHISOFT X 日建設計】 ARCHICAD 19 – 「嘗(かつ)てない速さ」 – 開発コンセプトおよび新機能紹介 – 日建設計とGRAPHISOFTの戦略的パートナーシップ – これまでの成果と今後の展望 – グラフィソフトジャパン株式会社 プロダクトマネージャー トロム ペーテル 株式会社日建設計 設計部門 3Dセンター部 安井 謙介氏 |
15:00-15:40 | 休憩 |
15:40-16:30 | 施工編【GRAPHISOFT X 鹿島建設】 GRAPHISOFTが考える「施工BIM」 – BIMcloudを中心とする施工ソリューション – 鹿島建設の「Global BIM ®」 – 実践での施工BIM活用 – グラフィソフトジャパン株式会社 プロダクトマーケティングディレクター 飯田 貴 鹿島建設株式会社 建築管理本部 建築技術部 BIM推進グループ グループ長 安井 好広氏 |
16:40-17:30 | パネルディスカッション |
大阪会場
12:30-13:00 | 開場 |
13:00-13:25 | GRAPHISOFT KEYNOTE グラフィソフトジャパン株式会社 代表取締役 コバーチ ベンツェ |
13:25-14:15 | 基調講演 Research and delivery of OPEN BIM workflows Bond Bryan Architects Associate Director Rob Jackson氏 |
14:15-15:00 | 休憩 |
15:00-15:30 | AARCHICAD 19 -GRAPHISOFTのBIMソリューション- 設計編【GRAPHISOFT X 日建設計】 ARCHICAD 19 – 「嘗(かつ)てない速さ」 – 開発コンセプトおよび新機能紹介 – 日建設計とGRAPHISOFTの戦略的パートナーシップ – これまでの成果と今後の展望 – グラフィソフトジャパン株式会社 プロダクトマネージャー トロム ペーテル 株式会社日建設計 設計部門 3Dセンター部 安井 謙介氏 |
16:30-16:45 | 休憩 |
16:45-17:30 | 施工編【GRAPHISOFT X 鹿島建設】 GRAPHISOFTが考える「施工BIM」 – BIMcloudを中心とする施工ソリューション – 鹿島建設の「Global BIM ®」 – 実践での施工BIM活用 – グラフィソフトジャパン株式会社 プロダクトマーケティングディレクター 飯田 貴 鹿島建設株式会社 建築管理本部 建築技術部 BIM推進グループ グループ長 |
講演レポート
GRAPHISOFT KEYNOTE
世界市場でのARCHICAD事業の成長、またアジア市場においてのこれからの戦略についてお話ししました。品質の追及、現地基準への適応、そして教育機関との連携などを軸に、ソフトウェアの提供のみではなく、ノウハウを併せて提供することにより、BIM市場の活性化ならびにARCHICAD事業のさらなる進展を目指します。次にBIMに求められることとして、設計者のみならずすべてのステークホルダーがBIMを活用できる環境を広めていくことが必要だと考えており、その例として施工におけるBIMの活用、OPEN BIMの紹介などこれからのBIMをとりまく環境、そしてGRAPHISOFTが市場で果たす役割についてお話ししました。
木造建築におけるスタディ
JIA日本建築大賞を受賞した熊本県の「山鹿市立山鹿小学校」と宮城県の「宮野森小学校」を事例に、ARCHICADとBIMxを活用したプロジェクトについてお話しいただきました。「山鹿市立山鹿小学校」の事例では歴史あるまちに新しい建築をつくることを目指し、児童たちの学びに役立つだけではなく、地元の祭りの開催にも使いやすいなど、地域に調和した校舎として設計されています。地元名産の「アヤ杉」を使用した大規模な木造建築は難度が高かったものの、ARCHICADを使ったスタディやBIMxを使ったプレゼンテーションでクライアントや大工さんとのスムーズなやりとりが可能になった経験などをお話しいただきました。
Research and delivery of OPEN BIM workflows
Bond Bryan Architectsでは、1994年には3Dモデルを用いた顧客へのプレゼンテーションを行っていたものの、2Dのドキュメント作成にそのデータを活かすことができていませんでした。しかし2005年、3Dモデルから2Dドキュメントを作成し、数量表の取り出しや環境解析なども行い始めました。2011年ごろからは施工会社もBIMに関心を持ちはじめ、ARCHICAD 19のパッケージ写真である、Bradford CollegeのプロジェクトではBIMを最大限に活用できました。BIM関連のドキュメントは社内のシステムで一元管理されており、プロジェクトに対するコアプロセスが確立され、BIMが必要となるか否かに関わらず活用されています。BIMcloudも導入済で、すべてのプロジェクトがBIMcloudに移行しています。また、OPEN BIMの取り組みについて詳細に解説いただきました。
ARCHICAD 19 開発コンセプトおよび新機能紹介
ARCHICAD 19 プレゼンテーションでは、BIMの価値についてARCHICAD最初の、実プロジェクトをご紹介しながらお話ししました。GRAPHISOFTが考える継続するプロダクトの価値とは「建築の知識」「直観性」「パフォーマンス」「コラボレーション」です。ARCHICAD 19のキャッチコピーでもある「嘗(かつ)てない速さ」のとおり、今回の新機能によるパフォーマンスの向上でワークフローのさらなる効率化をご提案しました。その新機能の一つ、予測的バックグラウンド処理は、他の作業をしている間に、ARCHICADがあらかじめ次の動作を予測し、余剰なリソースを活用して前もって処理を進めておくことにより、次の作業を行った時に迅速な対応ができるという機能です。デモンストレーションではARCHICAD 19に実装されたパフォーマンスの向上を可能にする他の新機能もご紹介しました。
日建設計とGRAPHISOFTの戦略的パートナーシップ
はじめに、日建設計とGRAPHISOFTの戦略的パートナーシップにおいて、実際にハンガリーのGRAPHISOFT本社へ行き開発チームとミーティングをしたエピソードをお話しいただきました。階段ツールを例に、ベンダー目線ではなく、設計者目線でのソフトウェア開発への期待を述べられました。次に、ジェネラティブデザインについて、シアターやスタジアムの客席設計を例に解説いただきました。Grasshopperでアルゴリズムを組むことにより複雑な作業が容易になるメリットをご紹介いただきました。これがきっかけとなって開発されたものがARCHICADとRhinocerosのコンバーターになります。最後にOPEN BIMについて、ARCHICADをプラットフォームにした連携、また点群データ活用の可能性についてお話しいただきました。
GRAPHISOFTが考える「施工BIM」
ARCHICADとBIMcloud(BIMserver)、そしてBIMxを活用したソリューションをご紹介しました。まずBIMcloudについて、規模の大きい企業やプロジェクトにおける活用法、海外を含めたデータの安全なやり取りのメリットをご紹介しました。BIMxではデバイスの壁を超えてデータへのアクセスが可能なため、ARCHICADで作成したデータをBIMcloudで管理し、BIMxで共有するというワークフローでコラボレーションを効率化します。続けて、BIMcloudを中心とする施工ソリューションのご提案をしました。従来の分断されたワークフローを、BIMを活用して一元化することで、社内、現場や作業所、協力会社で無駄やミスを削減し効率化を実現することができます。最後にARCHICADを持たない協力会社との協業を可能にするBIMcloud Team Clientをご紹介いたしました。
鹿島建設の「Global BIM ®」
鹿島建設が実践する「Global BIM ®」についてお話しいただきました。2012年にTeamworkを導入、社内だけではこの機能をフル活用できないとの結論に達し、クラウドを活用して本社、支店、海外の協力会社を含めた大規模Teamworkを実現。その後ARCHICAD 18と同時に発表されたBIMcloudとBIMcloud Team Clientにより進化した「Global BIM ® 2.0」について解説いただきました。これにより施工図会社や協力会社は初期投資をせずにプロジェクトへの参加が可能となり、関係各社間でのBIMの推進、拡大が可能となったとお話しいただきました。これにより鹿島建設は世界的な協業体制の構築を実現、さらにプロジェクトデータの管理が容易になり、かつ市販のシステムで構築が可能といったメリットを解説いただき、その後施工におけるBIMの活用例をご紹介いただきました。
パネルディスカッション
BIMに関するテーマでディスカッションしていただきました。BIMの社内展開に関して、Bond Bryan Architectsでは、以前から2Dの作業もARCHICADで行っており、それがBIMへの移行に際して障害となることもあったものの、導入を加速させたのはBIMを使用したプロジェクトの成功で、社内でBIMに関わりたいと思うスタッフが増えることで導入が加速したとのことでした。日建設計では、BIMの実践となると、なかなか気が進まないという雰囲気がある中、それを打開するきっかけがBIMxを使ったミーティングでした。これはプロジェクトのフロントローディングをするためにも役に立つとのことでした。鹿島建設ではシステムをを整えることから始まり、トップダウンは効果があるものの、定着させるにはやはりボトムアップ、草の根的な活動が重要で、実際に使った現場で役に立ったと感じさせる必要があり、使い始めの部分を支援する部署が社内にあったことが大きかったとのことでした。