【レポート】Archicad 17 製品発表会

『BIMは細部に宿る』

真のBIMワークフローを実現するARCHICAD 17

2013年9月3日に開催されたARCHICAD 17製品発表会では、東京352名、大阪206名、ご来場頂き大盛況にて終了しました。
新バージョンのリリースに伴い、毎年開催されている発表会ですが、東京会場では今回は初めて午前・午後、一日を通して開催され、ARCHICAD 17の製品発表はもちろん、国内および海外でBIMの先進的な取り組みをされているユーザーによるBIM導入事例をご紹介頂きました。

https://twitter.com/GraphiOsaka/status/374903317899780096?s=20

BIM lives in the details – BIMは細部に宿る –

グラフィソフトジャパン株式会社 代表取締役 コバーチ・ベンツェ

ドイツの有名なモダン建築家ミース・ファン・デル・ローエは、かつて「God lives in the details -神は細部に宿る-」という名言を残しました。細部の美しさこそが作品の本質を決定づけるという意味として様々な場面で引用されています。これはBIMモデルに関しても例外ではなく、細部の納まりまで正確に入力されていなければ、モデルは完全なものにならないのです。この考えから、新しいARCHICAD 17ではこの言葉に敬意を表し、スローガンとして「BIM lives in the details - BIMは細部に宿る-」としました。

ワークアラウンドは悪

本来、2D図面が「一般道」であれば、BIMは「高速道路」のように快適に、より早く目的地に辿りつけるはずであるものです。しかし、現状では様々な「穴ぼこ」が潜んでおり、それを「迂回」することを余儀なくされます。「勉強しにくい」、「標準化が難しい」、「BIMモデルが台無しになる」という3つの理由からワークアラウンドは悪だと信じています。特に、図面で詳細を表現するために、BIMではなく2Dで加筆すれば、問題は簡単に解決したかのように見えますが、そのBIMモデルは数量には利用できなくなります。

こういった問題を根本的に解決するには、BIMでも細部の表現をより簡単に生成することが可能になり、スムーズなBIMワークフローを実現する必要があります。

ARCHICAD 17では、これまでにない真のBIMワークフローを実現しました。


Computer Aided Drawing からComputer Aided Designへ

株式会社日建設計 設計部門 設計部長 芦田 智之氏

東京、大阪会場ともに基調講演を頂きました。

日建設計のBIM推進の要 デジタルデザイン室(DDS)

デジタルデザイン室は、「DDLチーム(コンピュータを用いた新たな設計手法を実験的に試行」 「BIMチーム(社内のBIM推進)」「CASチーム(各種シミュレーションサポート」の3つのチームから構成されており、各チームが日建設計社内でのBIMの推進をサポートしています。
特にBIMチームでは、BIM対象プロジェクトのサポートはもちろん、作業環境(テンプレートやオブジェクトの作成)、社内教育(動画を用いたマニュアルの整備)や建材メーカとの連携などをおこなっています。
また意匠、構造、設備設計の連携のサポートもおこなっています。
CASチームでは、新たな「可視化手法」としてのシミュレーションへの対応として、BIMデータと連携した 風、熱、光、音響等のシミュレーションのサポートや、各シミュレーションソフトとの検証なども行っています。
DDLチームでは、コンピュータを用いた新しい設計手法(コンピュテーショナルデザイン)や新しい生産設計手段(デジタルファブリケーション)への対応などを試行されています。

本当にBIMで設計は効率化されるのか?

多くの方が思われるのは、従来の工数が効率化されることで削減され、現状の成果を短時間で得られるのでは・・ということですが、実際には工数(労力)は変わりません。もちろん、後工程では効いてくる効果も多いのですが、それよりもBIMによる付加価値がついた今まで以上の成果を期待できるということです。

これからのBIMへ

BIMツールに期待することとしては、「初期のイメージ段階から使えるツールであること」、「精緻な詳細表現、検討がストレスなく行えること」、「BIMデータの汎用性、永続性が確保されること」、そして、Building Information Modelingから Building Information Managementへインフォメーションが、BIMのより重要な一部として、プロジェクト全体をマネージメントするものと進化していくことと思います。次回機会があればこのテーマでお話されたいとプレゼンテーションを結ばれました。


進化するGRAPHISOFT

GRAPHISOFT SE CEO Viktor Várkonyi

グラフィソフト ハンガリー本社 CEOのビクター・バルコニーのプレゼンテーションでは、まず世界的な ARCHICADの利用状況、また昨年のグラフィソフトの成長率などをお話させていただき、投資戦略的なエリアを、日本を含むアジアや南アフリカであること、また今回のARCHICAD17のように、日本からの要望を取り入れることでアジアはもとより、他の国でも満足いただけると思っています。

BIMは一般常識だろうか

BIMはすでにキャズムを超えられたでしょうか? 米国でのWorld Market Intelligenceの調査での「BIMの利用状況について」の問いに、「既に使用している(30%)」、「試行中(13%))と、「1年以内に使用予定(22%))を含めると65%がなんらかの形でBIMを利用、または計画中となり、もはやメインストリームになりつつあると言っても過言ではないでしょう。

そのことを踏まえると、BIMはある部分ですでにキャズムを超えたと言えるかもしれません。 まず、可視化、ビジュアライゼーションによるデザイン検討や関係者間のコミュニケーションツールはもはや一般的、すぐに当たり前の使用方法になってくるでしょう。
また、干渉チェックでも同様に試行錯誤の中、有効であることは認められつつあり、メインストリームに向かって進んでいるように思えます。

では、モデルから作成する図面はどうでしょう?世界的に見ると進んでいるように思いますが、日本ではまだまだ日本特有の図面表現へのこだわりも含め、すぐに受け入れられない部分もあったと思います。が、これも状況は変わってきており、日本での次の大きなテーマとして捉えています。
BIMを利用した解析、積算、工程管理、プロジェクト・マネージメント等々は、これから進んでいく分野だと思います。


BIM Journey

RICE DAUBNEY Principal Mr. Darren Tims

*東京会場のみ

「ARCHICADと歩んできたBIMの道のり」

東京会場 午後のセッションの皮切りは、オーストラリアの組織事務所Rice Daubneyのダレン・ティムズ氏です。 110名のスタッフを抱え、店舗と住宅を含む中心街、商業建築、医療施設及び研究施設、防衛施設の設計を行っています。1995年にARCHICADを導入し、当初は2D作図ツールとしての利用にとどまっていましたが、2001年から3Dを用いたパイロットプロジェクトを始め、2002年からはすべての新規プロジェクトに3Dモデルを使うことを義務付けました。
2010年にはコンサルタント会社も3Dの利用を開始し、ほとんどのプロジェクトをフルBIMでの活用ができるようになりました。

BIMはプロジェクトの初期段階で、デザイン検討とプレゼンの高速化をもたらす反面、リスクとて、従来の設計料にこの作業が含まれず、前倒し作業として行わざるを得ません。しかし基本設計以降は、標準化とパラメトリックを利用し、かなり高速化、効率化を図ることが出来ました。
またこれは建物ライフサイクルにおけるモデルデータの再利用など今後期待できる用途もありそうです。

入札に勝つ

ArchiCADとBIMを様々な形で利用しますが、入札に勝つために、フルに活用します。将来的に設備の管理を行うならば、BIMを使わない手はないです。

©Rice Daubney

デザインとコーディネーション

ある商業施設でも初期の段階からBIMを利用することで、まずはクライアントの理解を深めること、デザインの意味を理解するのを助けることが出来ました。
また彼らにはこのプロジェクトでBIMコンサルタントとしての役割もありました。Solibri Model Checkerを利用し、干渉チェックを行いました。干渉部分のチェックリストを、サブコンと共有することで打ち合わせ時間の短縮と理解を深めることができました。
また別の、サンシャインコースト大学病院でのプロジェクトでは、まさに7つの異なるBIMモデルを結合することで統合的にプロジェクトを管理することができました。モデルの削除された部分、修正された部分や追加された部分など、意匠、構造、設備の干渉だけでなく、進捗度合いも含めて、クライアントに対して説明をすることができました。

ユーザーグループコンサルテーション(ヒアリングに基づく合意形成)

このプロジェクトはPPP(Public Private Partnership:官民パートナーシップ)の下、20ヘクタールの敷地に165,000平米の建築面積、2016年に450床でオープンを目指し、2021年には738床まで拡張される予定です。

PPPの主目的としては、効率を挙げ、クライアントのリスクを押さえるために広範囲に渡る標準化を行うこと、作業環境の一貫性、繰り返しと最適化されたレイアウト、モデルルームやプレハブの作成、品管理を考え、関係者すべてのリスクをさげることでした。

オーストラリアの医療ガイドラインにあった医療系オブジェクトを5年かけて整備し、それを用いた標準化された部屋モデルをいくつも作成しました。これもまたオーストラリアの医療ガイドラインに沿ったものです。

ユーザーグループの主目的としては、実際に病院を利用するユーザー(病院のスタッフ)とのよりよいコミュニケーションによる信頼関係の構築、早期段階でのプロジェクトの費用と変数の把握、意思決定、設計図書、施工の効率化を図ることであり、リスクマネージメントにほかなりません。
これらの設備の管理については、ノルウェーのdRofusというツールを利用しました。

パラメトリックと一覧表

パラメトリックオブジェクトと一覧表を、ワークロードとリスクを軽減するために使っています。あるプロジェクトでは、内装のみを担当するにもかかわらず、他社の2Dデータを元に、ファサードも含めてフルモデルを作成しました。これは可能な限りより多くの情報を設定できるようにするためです。

研究施設だったため、我々は非常に詳細なベンチマークとリクエストに応じた仕様書をつくり、社内のGDL開発者に渡しました。彼らはそれらの要求をコンポーネント化し、組み合わせのできるものとして作成しました。

それを利用したことで、必要とされる機器のリスト(サイズや数量等々)が自動的に生成され、仕様書として利用できました。

建物のAs Build

この建物は、オーストラリアで初めて「資産管理用のBIMモデルとして完成し、紙ベースのドキュメントを一切提出しなかった」プロジェクトです。

フルBIMプロジェクトとして、2006年1月にスタートしたこのプロジェクトは、2010年4月に完成し、28.589平米の21階建てのオフィスビルです。建築図書は完全に電子化され、紙ベースのドキュメントは一切提出しませんでした。

BIMは、意匠は設計事務所、構造は構造事務所、そしてサブコンからなる7ヶ所の異なる協力事務所から提出され、それをひとつのモデルとし、干渉チェックに利用されました。

このモデルでは、設備一つ一つにタグが添付され、ウェブベースのアセットマネージメントツールにより、その設備の情報を見ることができます。

©Rice Daubney