株式会社都市建築設計

株式会社都市建築設計

創業1978(昭和53)年、株式会社都市建築設計は沖縄県那覇市に本社を構える組織系設計事務所だ。設計を通じて、安心で安全、人、環境に優しい街づくりに貢献している。沖縄県において公共施設の設計監理をメインに、医療福祉施設、複合施設、マンションなどの設計監理を遂行するほか、設計に加え従業員の働き方においてもSDGsに準じて事業を推進中だ。時代に真っ先に適応し、さまざまな取り組みを加速させるべく日々奮闘する同社が、どのようにBIMを学び、浸透させ、さらに、これから広めていくのかをインタビューした。

株式会社都市建築設計

  • 所在地
    沖縄県那覇市
  • 代表 野原 勉
  • 設立 1978年 12月
  • 業務内容
    建築設計・監理、建物耐力度調査
    建物物件調査、用地補償全般

代表取締役
野原 勉 氏

専務取締役
下地 徹 氏

設計部 BIM 推進課 課長
當山 直美 氏

設計部 BIM 推進課 課長補佐
三嶋 久美子 氏

正確性と効率性を
兼ね備えた設計のために

沖縄県の設計事務所が、BIM活用などのさまざまな取り組みをいち早く行い、エネルギッシュに活動している。社員数は37名(2023年現在)、そのうちの半数近くがBIMを使って業務を遂行しているという。
代表取締役の野原勉氏(以下、野原氏)がBIMと出会ったのは、2013年。沖縄県内で開催されたフォーラムに出席した際に、「施主へのプレゼンテーションから基本設計、建物の維持管理と、建物が生まれてから朽ちるまで、そして建築に関わる業務の上流から下流まで、これからの時代はBIMが網羅する」と聞き、沖縄県内で最も早く導入に踏み切った。
「設計は非常に属人的なもので、人間が設計をしている限りミスはつきものです。ミスをなくすことが発注者も設計者も望むことならば、人間よりもはるかに正確なシステムに頼るべきだと考えました」と野原氏。
その時の決断から早10年。導入しているArchicadのライセンス数は17となり、沖縄から日本全国に向け、影響力のある設計事務所として注目を浴びている。

都市建築設計の社員食堂は、社員の健康とフードロス解消を意識している。毎日、各フロアに分かれて仕事をしている社員も一同に集い、大家族のように和気あいあいとテーブルを囲む。社員の健康診断の数値もよい状態を保っているそう。

国土交通省がBIM活用を推進。
BIM活用が入札条件に

同社がBIMを導入してからわずか10年間で、建築を取り巻く環境は大きく変化した。明らかに変化をしているのは、公共工事の発注条件だ。「公共工事の設計業務はBIM活用のほか、そのデータも成果品として提出することが条件となってきています。つまり、BIMを使えなければ入札すらできません」と野原氏。
こういった背景には、国土交通省が主体となって官民一体でBIMの活用を推進し、建築物の生産プロセスおよび、維持管理における生産性向上を図るという背景があるからだ。「国が掲げている通り、公共工事はBIMを使いこなすことで生産性向上ができますから。私たちは10年計画でBIMを習得し、BIMを活用して設計業務を処理できるようになってきました」。
BIM活用が軌道に乗ってきたことで、このようなメリットも享受している。ある大型の公共工事のプロジェクトでは、沖縄県内の構造設計に強い設計事務所とジョイント・ベンチャーで受注した。構造担当企業は、同社と同じくArchicadを使って設計業務をしているため、BIMcloudを介したチームワーク機能を採用。プロジェクトを共有するメンバー全員は、どこからでもリアルタイムで共同作業ができ、設計業務はスピーディに、そしてスムーズにコミュニケーションを図りながら業務を進めることが可能だ。
「こういったチームワーク機能を使いこなして、生産性向上を目指すためには、自社だけがBIM活用できればいいわけではないですよね。今後は私たちが行ってきた努力や工夫を、周りにも広めていきたい」と野原氏。
これまで同社で行ってきたBIMの習得方法を、具体的に教えてもらった。

「BIMは、設計・施工に関わる企業同士がBIMを使いこなすことで、互いに相乗効果が得られるツールです。自社だけでは限界があるので、協力業者の皆さんで使いこなす必要がある」と野原氏。

BIMが浸透するまでのロードマップ

【STEP1】 沖縄県内初の導入。専任のBIM担当者を採用

BIM導入を決意すると同時に、同社では新たにBIM専任のスタッフを採用した。そのスタッフが、設計部BIM推進課課長補佐の三嶋久美子氏(以下、三嶋氏)だ。
今でこそ、県内唯一の「BIMマネージャー」として活躍をしているが、当時は右も左もわからない状態で、戸惑いの連続だったという。
「与えられた本を見ながら自分なりに操作してみましたが、BIMの操作がわかるようになっても建築を理解していないと整合性のとれた図面が描けません。BIMで設計をすることが当時の目的でしたが、設計は2DCAD、パースはBIM活用するとして、段階的に業務に取り入れていくことにしました」。
いずれは設計することを夢見て、まずはスタートラインに立った。三嶋氏の心の支えとなっているのは、今も昔も、ユーザーグループだ。グラフィソフトの担当者が主体となって、Archicadを扱う仲間と勉強会や交流会などを開催して、悩みを分かち合ったり、活用法やTipsをシェアしたりと、意見交換ができる機会を設けた。同社でArchicadを導入したことを皮切りに沖縄県内の導入企業は徐々に増え、Archicad沖縄ユーザーグループ「AOUG」を設立。現在も月に2度のペースで勉強会を開いている。
「今ではもう日本中にArchicadを使い倒す仲間たちがいます。この仲間たちこそ、私がArchicadを通じて得られた最高の宝物!ひとりじゃない。仲間がいるんです」と三嶋氏。

前職でも設計ソフトは使った経験があるというが、BIMは使い勝手がわからなかったそう。「グラフィソフトの担当者を頼りにしつつ手探りの日々を送っていました」と三嶋氏。

【STEP2】 BIM Classesに参加し、BIM推進が加速

「BIM Classesの講師陣は、現役で設計をしている方々です。文字をなぞれば理解できるような操作方法だけでなく、実用的なTipsを混ぜて説明してくださるのがためになりました」と當山氏。

グラフィソフトでは、BIMのトレーニングプログラムも各種提供している。特に役に立ったと話すのは、2021年に受講した「BIM Classes」だ。BIM Classesとはグラフィソフトと実務経験豊富な講師陣が、最適な使い方をレクチャーするトレーニングプログラムである。
1年間の年間パスポートを購入すれば、初級・中級・上級とレベル別に分かれた20種類以上のクラスに何度でも参加可能だ。自力では学べなかったことを講師から学ぶことで、習得までの時間が効率化された。
「ゆっくり・丁寧・はっきり・わかりやすい教え方でサポート体制も万全でした。いつの間にか当たり前になっていた社内流のやり方だけでなく、実務をこなす講師のやり方が学べたことがためになりました」と話すのは設計部BIM推進課課長の當山直美氏だ。
毎回8名前後のオンライン・少人数制のクラスで、質問がしやすく、コツや裏技を丁寧に教えてもらうことができたという。またこのBIM Classesについて三嶋氏は、「1年間受講し放題で、何度も同じクラスを受講でき理解を深められます。1コマ2時間、仕事と両立をしながら全部受講すれば、エキスパートになれると思うと、夢のようなカリキュラムですね」と振り返った。この経験をもとに、BIM推進課として社内にBIMを広める仕事が本格稼働した。

【STEP3】 「教え合い、学び合う文化」で社内にBIM 活用が浸透

○ 二人一組のバディ制度で教え合う

「BIM習得の道のりで最も早いのは、BIMで設計すると決めて実践を行うことだと思います」と話すのは、専務取締役の下地徹氏だ。2021年、全9棟の学校の移転整備事業がスタートし、同社が設計を担うことになった。
会社の中でも前例のないビッグプロジェクトは、2DCADで図面を描けば間に合わないことが目に見えていた。これを機に否が応でも社内にBIMで設計する力を備えるべく、社員たちは試行錯誤しながら、設計業務と真摯に向き合った。このプロジェクトでは「建築スキルがあり、BIMスキルがない社員」と、反対に「BIMスキルがあり、建築スキルがない社員」が二人一組のチームとなり、BIMを使って設計業務に取り組んだ。互いの得意分野を生かしつつ、苦手分野を補い合う相互作用を期待してのことだった。
「お互い自分にはないスキルがある二人なのでリスペクトはし合っているんです。でも、譲れないところがあって最初はうまくいかなかったことも事実。私は何年もかけて失敗を繰り返しているので転ばぬ先の杖を出してしまい、そこで衝突することもありましたね」と三嶋氏は振り返る。
「そうはいっても、この経験があったからこそ社内にBIMが浸透しました。また、この大型案件はBIMだから間に合わせることができました。設計業務は2DCADと比較して1.3~1.4倍は早くなったはず。生産性向上も社員の経験値として得られ、今まで足かせとなっていた苦手意識がなくなりました」と當山氏も話す。
会社をあげての一大決心だったというが、経営陣の目論見通り、設計に携わる社員のスキルは一気に鍛えられ、BIM推進が加速していった。

建築スキルが未熟な若手社員に対しては、ベテラン建築士の下地氏がバディになった。図面の描き方を手描きで解説し、Archicadで表現できるように手取り足取り教えていく。

初めてBIM で手掛けた実施設計の物件。完成後に見に行くとパースそっくりにできていて感激したそう。

実際に取り組んだ学校の移転整備事業のパース。チームワーク機能を使って複数人で一気に作り上げていく。

平面パース

断面図

○ Zoomの画面共有で個別指導も

新卒採用を積極的に行っている同社において、新入社員たちは2DCADは使わずにBIMで設計できるように育成していく。2023年現在、建築系の専門学校を卒業している新入社員は、スキルアップ研修として毎日1時間ずつのマンツーマン指導を行っている。オンラインを活用した個人に寄り添った研修は、新入社員向けだけとは限らない。
「必要なときは、私と下地さんとZoomをつなげて、いつでも質問してもらえる環境を作っています」と三嶋氏。
この発言に対し下地氏は「操作方法でわからないことがあったときに、インターネットを検索しなくても質問できるのは効率がいいですね」と応答。
Zoomでつなぎっぱなしにし、あたかも隣の席の人に気軽に相談できるような環境は、別フロアで作業をしている社員とのコミュニケーションにも応用できる。

在宅ワーク中の三嶋氏と出勤している下地氏は、Zoomを
つなぎっぱなしにしていつでも質問しあえる環境を整えた。

○ 社内勉強会をしてさらなる浸透を図る

2020年の春、BIM推進課が中心となって社内勉強会をスタートした。はじめは、BIMを使っている人と使っていない人がペアになり、隣に座ってマンツーマン指導を実施。テキストは、グラフィソフトのホームページで公開している入門書「Archicad Magic」を使って、実際にモデリングすることから始め、次第に業務で使えるスキルの習得を目指した。
このほか、前述のBIM Classesで学んだ内容を社内に広めるべく、定期的に社内勉強会を開催している。業務時間外の有志の集いとなるため、多くの社員に参加してもらうことが課題だというが、新しい情報のキャッチアップには絶好の場だ。「業務時間外の勉強会にどうやって参加を促すかは、正直、模索中です。参加賞など何か特典を付けようと話しています。
その特典には、グラフィソフトのノベルティがぴったり。持っているだけで会話のきっかけになりますし、BIMへの愛着が湧き意識向上につながります」と三嶋氏。
このように継続的に教え合い、学び合う文化が根付いたことで、同社ではBIMを効果的に活用し、顧客により高品質なサービスを提供することができるようになっている。

社内勉強会はBIM推進課が中心となって実施している。開催する日によってテーマは様々。

毎月第三水曜日の夜は、BIM勉強会を実施。この日は熊本から道脇設計室道脇力氏をゲスト講師に招いて開催した。貴重な話に社内の若手メンバーも集中!

県内唯一のBIMマネージャーとして始動!

2022年にスタートした「BIMマネージャープログラム」を沖縄県内でいち早く受講し、GraphisoftのBIMマネージャ認定を取得した三嶋氏。
BIMマネージャープログラムとは、BIMプロジェクトの設定、コンサルタントとのコラボレーション、人とプロセスの管理まで、Archicadを中心に、BIMプロジェクトに取り組む会社を管理する方法について必要な知識を学ぶ講座だ。
その後、BIMマネージャーの資格として世界で認定されている唯一の資格buildingSMARTプロフェッショナル認証の試験にも合格した。
「BIMは奥が深いので、どこから始めていいのか、またこの会社にはどういった活用方法が向いているのかなど、管理することが大切。保存先のフォルダ名のつけ方から決めておくことで、業務標準化にもつながります」。
BIMマネージャープログラムを受講して、まずは社内のパソコン内の保存先フォルダの整理整頓から実施している。探し物をする時間が減るだけで生産性向上につながり、誰でもデータに触ることができる親切な仕事ができるようになるからだ。2023年は同社で2人目のBIMマネージャーが誕生予定だ。
三嶋氏は「一人では責任が重く決めきれないこともあります。相棒とチームで動けることで、相談相手もできて大きな失敗も防げるはず。社内の教育システムも確立していきたい」と前向きな計画を話してくれた。

よりよい建築業界を目指し、沖縄に「BIM寺子屋」を

取材の最後に、近い将来の展望を伺った。「この先、さらにBIMを浸透させるために私たちができることは、BIMを教えることです」と野原氏が話すように、近くにいる誰かが、BIMの使い方についてアドバイスするサービスが必要だと感じているという。
これまで同社が失敗を恐れず果敢に挑戦し、成長をなし遂げた経験を伝授すべく「BIM寺子屋」と名付けた支援サービスをスタート予定だ。
「BIM活用は、業界全体に広がらないと意味がない。だから私たちは、もっとBIMが浸透するために、設計事務所だけでなく、設備や構造、施工会社にも目を向けて貢献していきたい」。
三嶋氏も「かつての私のように、不安を抱えている人が多いと思うんです。もしくは、Archicadを導入したけど使いこなせていない人も一定数いらっしゃることでしょう。そういう方々の手助けをしていきたい」と話す。
また、支援が必要なのは、工事を請け負う建築関連会社だけではない。市町村をはじめ発注者側にも正しい知識がなければ、データを精査することもできないだろう。同社では、現在実施している設計業務に加え、新規事業としてBIMの支援サービスがスタート予定だ。時間とコストをかけて習得したスキルをまたにかけて、活躍の場はますます広がっていくことは間違いない。

自ら学び続ける姿勢と行動力。BIMマネージャーとして三嶋 氏の忙しい日々は続きそうだ。

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