戸田建設株式会社 建築工事統轄部 建築工務部 施工計画支援課
Archicadで現場のBIMを推進し、より円滑な施工へ
2008年にGraphisoftのArchicadを導入し、積極的にフロントローディングに取り組むなど、設計と施工の両方でBIMの推進を行ってきた戸田建設。その同社が約3年前に施工計画支援課を発足させ、現場でのBIMの活用をより加速させている。「弊社の工事部門の中では、以前から各支店レベルでArchicadを使用した作業所の支援を行っており、BIMを使って設計や問題点の検討を行っていました。ただ作業所での工事へのBIM活用は浸透しておらず、BIMをもっと有効活用したいという想いが社内であり、2019年に工事部門の中に施工計画支援課が作られました」。こう振り返るのは、田伏雅樹氏。もともと現場におり2次元CADで計画図を描くなど、施工現場を熟知した同課の課長である。「全国の作業所に勤務する自社の社員や協力会社の方々が、業務を円滑に進めるためのサポートをBIMで行っています。
特に、工事現場の施工計画をBIMモデル上で綿密に立てて作業所を支援しており、そこで威力を発揮しているのが、Archicadなのです」と松浦哲司氏。同社が施工計画で事前に検討する内容は、掘削計画、土量算出、構台・切梁計画、鉄筋納まり、型枠の施工手順、安全な作業手順の検証、コンクリート数量算出、鉄骨建方検討、タワークレーンの組立や解体計画、足場や工事用エレベータの設置・解体など幅広い。
すでに同社で実績と定評のあったArchicadだが、汎用性が高いBIMソフトということと、施工計画に活用できるアドオンソフトなども用意されており、施工計画支援課での多岐に渡る検証でも重宝されている。また「我々は実際に作業している途中の状態をArchicadの中で建物のモデルを使ってシミュレーションし、さまざまな角度から現場が本当に円滑に進むのかを検証しますが、その際にArchicadは直感的な操作ができ、ストレスなく使いやすいです」と支倉一氏。
実は、この3名はもともと2次元CADをメインに使用しており、Archicadはここ数年で本格的に使用し始めたという経緯がある。Archicadは、ほかのBIMソフトと比べると操作も覚えやすいとのことで、「2次元CADからの移行はごく自然にできました」と3名とも口を揃える。
Archicadによるリアリティな検証で
施工の現場を支える
現在、施工計画支援課では、全国各地の支店から特に施工の難易度が高いと判断されたプロジェクトを抽出し扱っている。その数は年間で数十件以上にのぼり、それを少数精鋭のメンバーでArchicadを中心に綿密な施工計画を立てる。
3名は、それぞれが考えるArchicadのメリットをこう説明する。まず田伏氏は「実際の施工のイメージをBIMでつくるとき、Archicadは表現力の高さに優れていると感じます。
3Dで施工計画の概略を描き、複数人で同じ画面を見ながら施工の課題解決や危険の事前検討に取り組んでいますが、Archicadの豊かな表現のおかげで情報共有がしやすいですね。
また、2次元図面での施工計画の策定の際には描いていなかった部分を3Dでは描く必要があるため、これまで見過ごされていた個所も見えてきます。検討漏れによる手戻りが無くなり、合意形成もしやすく、おかげで最終的な現場の工事の効率は向上しています」と評価する。「コンクリートの数量拾いであれば、手拾いで数量算出すると、かなりの時間がかかっていたものが、少しの操作で短時間で出せます。BIMモデルを描く手間はかかりますが、現場での作業は短くすることができます。これも2次元図面での検討時では難しかったことです」と松浦氏は評価する。
効率化の定量的な比較は難しいものの、ArchicadのBIMモデルによって数量をある程度算出できる点はかなり大きいと言えるだろう。
支倉氏も「足場を架けたときに建物と干渉するのかといった、実際の工事での状況を事前にビジュアル化して的確にArchicadでチェックでき、課題を抽出して解決までできるのが3Dの大きな利点です。
建物モデルに足場を架けて検討する、クレーンのオブジェクトを置いて旋廻させてみることも可能です。2次元の図面があり、寸法がわかっても実感がわきませんが、Archicad上では大きさや形状がわかりやすく具体性をもって検討できますし、最終的に動画にして施主様や近隣に説明しやすい点もメリットです」。
このようにArchicadは、表現力と機能面の両方で評価が高い。
BIMモデル活用の実際と導入に向けたポイント
現在、戸田建設は東京・京橋で本社ビルの建て替え工事を進めている。この計画でも、ArchicadでBIMモデルを制作しながら施工の計画を行っているという。主体構造は基本的にS造であるが、コア部分をRC造として周囲に鉄骨を配する設計である。
支倉氏は「通常のビルの建方とは異なり、コア部分を先に施工していく必要があるのですが、周りに足場をつくると鉄骨を立てることができません。コア部分のRCを構築するために型枠と足場をせり上げながら施工していくのですが、2Dだと各階の図面をすべて描いて検証していく必要がありました。
Archicadで作成したBIMモデルでは“上部では配筋し、下部では型枠を組んでコンクリートを打つ”といった作業を順番を追ってステップごとに表現でき、全部がひと目でわかります。実際にどのように施工していくのかの具体的なイメージがArchicadで簡単にわかるので、大変良いですね」と説明する。本社ビルのコア部分では、現場打ちのコンクリートと共にプレキャストコンクリートを併用する予定という。現場での取り合いの部分でも、3Dモデルを活用している。「プレキャストコンクリートとRCの鉄筋の納まりが複雑になり、2Dの平面図では配筋自体の組み方を理解するのは困難です。それがArchicadで描いてみると、地組してから設置する鉄筋が所定の位置に入っていくのか、作業員の手が届いて接続できるのかを検証できる」と支倉氏。
これがもし平面図だけだと、縦と横を両方みないと配筋の組み方を理解するのは難しいが、Archicadではその取り合いを細かく見れるため、実際の現場目線で考えることができるのだ。さらに支倉氏は「例えば、ここの足場の寸法が1,200離れていることも2次元だとイメージが湧きませんが、Archicad上に人のモデルを置けます。そうすると、実際の人の身長との比較で施工可能かも事前に確認でき、施工時の安全性も高められます。また、Archicadのオブジェクトは色分けでき、色を見れば一目で種類や高さなどもわかります」。効率化だけでなく、より安全性の高い現場の環境作りも行っている。
田伏氏は「弊社では、建築系の社員全員にBIM教育を行っていますが、Archicadは操作が分かりやすいと好評です。
ファイルを開きレイヤを操作し施工計画を作図することは初期教育でほぼ全員ができます」。
もしArchicadを検討中や初めて導入する企業であれば、「完成形のレベルをいきなり追い求めるのは大変なこと。スケッチの代わりに足場をBIMで描いてみてイメージをふくらませるといった、BIMや図面としての体裁にこだわらず施工上の課題を解決するツールとして、まず使ってみては」とアドバイスする。
Archicadは戸田建設の業務で今後もますます効果を発揮していくだろう。
Archicadの詳細情報はカタログをご覧ください
ー カタログと一緒にBIMユーザーの成功事例もダウンロードできます ー
- Archicad ユーザーの設計事例を紹介
- 設計時の裏話や、BIMの活用方法など掲載
- その年ごとにまとめられた事例をひとまとめに
- BIM導入前から導入後の情報満載