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小川工業株式会社 × 株式会社アルク設計事務所

初めて顔を合わせた設計会社と施工会社が協働し、複雑な公共事業でBIMを有効活用した事例がある。公共事業における業者選定の流れは、一般的に①基本設計②実施設計③施工となる。通常、①と③の間には、1年以上の時間差が発生する為 […]

株式会社アルク設計事務所

住宅から福祉施設、事務所、工場などの設計・監理、駅周辺の市街地再生や新しい街での街づくりコーディネートまで、幅広く事業を手がける設計事務所。
“まちの再開発に携わりながら、より良いまちづくりを。”をコンセプトに掲げ、都市計画、各種建物の企画・設計監理等、建物に関わる全てをデザインする。

所在地: 埼玉県さいたま市浦和区岸町7-8-3
代表: 田中 芳樹
創業: 1980年
業務内容
1. 建築計画・設計・監理
2. 店舗デザイン
3. 建築コンサルタント
4. コンストラクションマネジメント(CM)
5. 耐震診断

株式会社アルク設計事務所
浪江 祥平 氏

株式会社アルク設計事務所
今西 淳夫 氏

小川工業株式会社

官公庁舎や教育施設、オフィス、工場などを手掛ける、埼玉の総合建設会社。
創業100年以上の歴史があり、優良工事表彰、難工事功労賞、建設業担い手確保・育成貢献表彰など、多くの賞を受賞。
国や自治体からの評価が高く、地元住民からの信頼も厚い。また、社内に本格的なトレーニングジムを設けるなど、福利厚生にも力を入れている。

所在地: 埼玉県行田市桜町1-5-16
代表: 小川 貢三郎
創業: 1919年
業務内容
1. 土木工事・建築工事の設計・施工
2. 生コン・アスコン・再生合材・再生路盤材の製造・販売
3. 注文住宅建築・住宅リフォーム施工
4. 一級建築士事務所

小川工業株式会社
白石 佳久 氏

小川工業株式会社
平塚 健太郎 氏

初めて顔を合わせた設計会社と施工会社が協働し、複雑な公共事業でBIMを有効活用した事例がある。公共事業における業者選定の流れは、一般的に①基本設計②実施設計③施工となる。
通常、①と③の間には、1年以上の時間差が発生する為、設計・施工の各モデルを同時並行的に作れるというBIMの特性をなかなか活かしきれないというのが実情だ。

埼玉県にあるアルク設計事務所と小川工業は、2023年春に竣工した公共事業で設計担当と施工担当の関係にあった。その両社が、公共事業におけるBIM活用の可能性を模索するため、会社や立場の違いを超えて互いに手を取った。一致していたのは「現場でいかにBIMを活用できるか、それが会社の未来を決める」という、使命感にも近い担当者の思いだ。「正直、BIMを使わなくてもプロジェクトは実行できたので、思い切った決断でした。県の担当者が、私たちの未来に向けたチャレンジを受け入れてくれたおかげです」
そう話すのは、今回の設計を担当したアルク設計事務所の今西淳夫さん。
建物を作る関係者が一堂に集まったとき、今西さんがBIMモデリングの有志を募り、手を挙げたのが施工担当の小川工業、空調換気担当の大宮管工、電気担当の丸電の3社だった。

社内でB I M を浸透させるために
マネージャーの育成と組織を配置

「私たちはBIMを使い始めたばかりでほとんど手探りでしたけれど、“価値のある挑戦”だということは直感でわかりました」
そう当時を振り返るのは、小川工業でBIM室長を務める平塚健太郎さん。2020年から、積算課長(現工務部副部長)の白石佳久さんと共に、社内のBIM導入を推進してきた。
「Archicadを選んだのは、多彩な機能を持つアドオンソフト『BIforArchicad』を使ってみたかったから。従来のマンパワーに頼る積算と異なり、3Dモデルから自動で見積数量を拾える機能や、各種施工図の自動作成など、確実な生産性向上につながるという期待がありました。これらのソフトを使用し、スピーディーに様々な事前検討を行うことで、現場での手戻りや材料のロスを減らすことが可能となる。これからの建築業界にとって、BIMの導入は必要不可欠になるでしょう」
と語る、白石さん。社内にBIMを浸透させるために、技術士(建設部門)のライセンスを持つ平塚さんと二人三脚で、独立した部門を目指すことからスタートした。平塚さんは今年、グラフィソフトが主催するBIMマネージャープログラムを受講し、buildingSMARTのプロフェッショナル認証も取得している。
「BIMでやれることは無限大。自由なフィールドだからこそ、大切なのはルール作りだと思っています。今回の公共事業のように、協力業者が増えれば増えるほどルールの決め方も複雑になり、杓子定規に進められるものではありません。だからこそ適切なルールを設定し、一つのモデルをベースにすることができれば、それぞれの視点からいろいろなことをみんなで検討することができる。そういう意味で、BIMを管理するBIMマネージャーは、今後ますます重要な役割を担っていくでしょう。海外ではCMやPM以上に、BIMマネージャーが権限を持つ場合もあるのだとか。日本は空気を読むというか、お互いに調整し合える文化があるからうまくいっていた部分もありますが、多様な働き方が求められるこれからの時代、そのような肌感覚に頼らずプロジェクトを効率的に進めるには、BIMマネージャーがキーマンになると考えています」

小川工業の社内BIM導入計画の一部

準備期間を経て、今年8月には「BIM室」という独立した部門へ昇格。
現在、Archicadを使用できる技術者が4名在籍する。2025年には、営業・工事・工務(積算)の3部署を横断するBIMの全面活用を目標としている。

今回のプロジェクトで小川工業が施工を担当した体育館棟では、鉄骨ファブとも協力し、Real4をIFC形式でエクスポートしたデータを用いて、下地位置の検討を行った。また、BIforArchicadを利用して、基礎配筋等を自動発生させ、確認作業の効率化を図った。

体育館棟

公共事業で設計から施工まで
トライアルで見えてきたこと

アルク設計と小川工業が取り組んだこのプロジェクトの難しいところは、9社が入り組んだ体制・工区分けの複雑さ、既存棟がある中で進めるため施工上の様々な制限などであった。
そこで、設計と監理業務を担当した今西さんは、抱える課題や状況について関係者全員の共通理解、課題解決するためのツールとして、Archicadを使うのが工事を円滑に進めるために最も効果的であると考えた。
さっそく、器としてのBIMを小川工業が作り、そこに電気や空調のデータを入れてみて、どこかで干渉があるかかどうかをBIM上で確認することに。

建物の概要は、敷地面積17,968㎥、延床面積10,008㎥。今回のメイン工事である体育館棟はS造2階建、給食プール棟はRC造2階建、校舎棟はRC造3階建である。その他バスデッキ棟、既存改修工事が並行する。

公共事業でのBIM活用例 ①フロントローディング

「複雑なプロジェクトを円滑に進めるためには、プロジェクト全体を通して、関係者全員の“状況理解”“共通認識”“課題抽出”が非常に重要になると考えました。そこでBIMモデルを使って、それぞれのテリトリーをまたぐところを積極的に分析・提示し、可能なことは事前に課題をクリアしていくようにしました。大型モニターを使って、問題になりそうな状況を関係者に示せたことが、共通理解を得るのにひと役買いました」

着工後間もなく、設計者として考えた工程や課題を関係者全員に説明している様子。関係者はいつでもBIMxで3Dモデルを確認できるようにした。各社間の施工手順の確認がスムーズにできたので、致命的な工程の遅れが発生することもなかった。

設計時に考えた工事工程表。

公共事業でのBIM活用例 ②ビジュアライゼーション

「3Dのプレゼンは、2Dよりも理解し次の行動につながる瞬発力が全く違いました。共有できる情報が増えるので、見る人との議論も深まります。現場はそれぞれの道のプロなので、いい意味でも悪い意味でも自分なりの順番通りに物事を考えがち。でも課題や手順とかは現場ごとに異なるから、監理者は“ここの現場はそうじゃないよ”って言ってあげないといけない。そのために3Dはとても役立ちました。近い将来、現場の職人さんたちにQRコードとかを配って、ピッと飛んだら10分の1の縮図が出てきて“今日はこの辺の工事に入るな”なんて携帯で確認できたら……理想ですね」

左/現場事務所の会議室には、いつでも誰でも同じものがすぐに見られるように、A3出力したパースやカラースキーム資料をラミネートし、掲載した。
右/特別支援学校という特性から、屋上プールの墜落の危険性について3Dで検討。特別支援学校の生徒の特性をよく話し合い、足がかりや、手がけとなる部分はないか、丁寧に検証できた。

公共事業でのBIM活用例 ③干渉チェック

「空調・電気の協力業者も、小川工業が作成したBIMデータに自社の3Dデータを統合することで、干渉チェックを含めた事前検討が効率的に行えました。BIMを使って情報共有したことで、干渉の早期発見や解決、施工精度向上、コミュニケーション改善、スケジュールの最適化など多くの利点が生まれた。このような大規模なプロジェクトにおいて複数社が協力し合うには、BIMは非常に効果的に働き不可欠なツールであると、改めて実感しました」

給食プール棟の統合モデル。Solibri等の専用ソフトは使わず、目視によるチェックであったが、たしかな手応えを感じた。今後はプロジェクトの規模に応じて、専用ソフトの導入を検討していく予定。

BIM活用が真に求められる時代の到来
中小企業は自発的にBIMを使って生き抜く

今回のプロジェクトは、現場をコントロールする監督が9人(9社)に分かれるという複雑な状況だったこともあり、BIM共通モデルを使うことで、作業がよりスピーディーに、そして予算をかけずにできたという成果が出た。
「私たち小規模設計事務所が、都度施工体制が変わりうる公共事業のような契約条件下で、BIMを導入してモデルを構築したときに、どのような課題、効果が得られるかという実験的試行ができました。国はBIMを推しているけれども、その取り組みが中小企業まで降りてくるのを待っていたら、日本の体質下では取り残されるだけ。マンパワーで進められる大手ゼネコンと並んで大型物件へエントリーするためは、私たちは常に挑戦し続けることが必要なんです。今後は、BIMに関する中小企業間の交流も積極的に広げていきたい」
と、意気込む今西さん。アルク設計と小川工業の次なる挑戦は、設計から施工までの一貫したモデルを構築すること。
そして、BIMモデルを活用して、お客さまに新しい価値を付加した建築物を提供することだ。

アルク設計のメンバー

本社前に集う、小川工業のメンバー

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