株式会社三橋設計
代表取締役
名古屋事務所長
林 美博 氏
株式会社三橋設計
名古屋事務所
設計部 課長
堀切 健太郎 氏
株式会社三橋設計
名古屋事務所
設計部 課長代理
加藤 久子 氏
株式会社三橋設計 名古屋事務所 設計部 主任 加藤 隼一 氏
株式会社三橋設計
名古屋事務所
設計部
野田 賛美 氏
初の本格的な BIM 活用で効果を実感
東京発の東海道新幹線が名古屋駅に到着する直前、左手に並行する東海道本線の「南大高」駅が見えるだろう。2009年開業のこの新しい駅周辺では近年再開発が進んでいる。2015年4月、駅前に「南生協よってって横丁」という複合施設がオープンした。地上8階の建物にレストランや多彩な医療施設、福祉サービス、中上層階には老人ホームやサービス付高齢者向け住宅もあるここは、隣接する総合病院「南生協病院」と南大高駅を結ぶ道筋上に建つユニークな医療介護&市民交流施設である。企画設計を担当した三橋設計にとっても、それは重要なプロジェクトだった。
「実は初めて最初から ARCHICAD を投入し、本格的なBIM の運用を行った案件だったんです」。そう語るのは名古屋事務所を率いる林所長である。「ARCHICAD は初期のボリュームチェックから使用しましたが、使い始めてすぐその便利さを痛感しました。当初から課題だった“ブラインドの問題” が、ARCHICAD によるボリューム検討によりスピーディ、かつスムーズに解決できたのです」
林氏のいうブラインド問題とは、新施設の敷地が総合病院と駅の間に位置していたことから発生した課題だった。そこに建物が建つと駅からの視線が遮られ、本来主役であるべき総合病院が駅から見えなくなってしまうのである。
「いかにしてブラインドを防ぐか……どこへどんな建物を配し、どうボリュームを持たせるか。BIM で細かくシミュレーションすることで解決できたのです。しかも、その提案でもBIM は威力を発揮しました。通常こうした内容を図面で伝えるのはとても困難ですが、BIM なら一目瞭然の分かりやすさで伝えられたのです」
もともとこのプロジェクトは施主側関係者が非常に多くテナントも多様だったため、ヒアリングやプレゼン、打合せにおいては、これら多士済々の関係者に対して設計意図を明快に正しく伝えることが重要な課題だった。しかし、これもBIM の多彩なビジュアルを幅広く駆使して いくことで、容易にクリアできたのである。
「現場に入ってからも内装仕上や素材感、使い勝手の検討など、BIM は予想以上に役立ちました。最後は施主にBIM モデルを提供し、それに施主が音楽やナレーションを入れてムービーに仕上げ、入居者募集のプロモーションにも使ったほど。お客様の満足度も高かったですよ。初めての本格的なBIM 挑戦でしたが、本当に最後までフルに活かしきった手応えがあります」
BIM 普及へ向けた環境づくりの取組み
こうして初の本格的BIM 運用で成果をあげた三橋設計だが、そのチャレンジの出発点は2010年の ARCHICAD の選定・導入にあった。
「2009年頃から国の案件でBIM 対応を求めるものが出始めたのが導入のきっかけです。業界は“これから”という雰囲気でしたが、当社は公共関連の仕事もあり、流行り始めてからの導入では遅いと感じたのです」(加藤隼一氏)。
それまで同社では別のCAD を作図に使っていた。パースが必要な場合は他のCG ソフトを使うなどして、BIM や3次元設計は全く行っていなかったが、急遽BIM 導入へ向け3DCAD の選定を開始。当時の主要なBIM 対応製品から3製品に絞り込み、比較検討していったのである。
「ARCHICAD に決めた一番の決め手は、3Dモデルから平・立・断の図面が生成できる点です。その各図面間の整合性が保たれるのも大きな魅力でした」(加藤隼一氏)。こうしてまず3ライセンスが導入されたが、南大高駅前プロジェクトの成果を受け、2012年には2ライセンスを追加。部内への本格的普及も始まった。その中心となったのが新設のBIM 推進部である。
「単にツールを導入しただけでは使ってもらえません。忙しさに追われ、使い慣れたCAD に流れてしまいます。そこで私たちが率先してBIMを使い、利用率を上げていこうと考えました」(堀切氏)。BIM 推進部は ARCHICAD の活用と共に、社内勉強会やレイヤーセット等の専用テンプレート作りも推進。BIMセミナー等にも参加し最新情報を拡散した。また同時期にBIMを導入した東京事務所と情報交換を行い、勉強会議事録の交換や定期的な会合での情報交換も実施。活発に活動しながら部内のBIM 環境を整えていった。
「実際、2012年は約10件ものプロジェクトでBIMが使われました。むろん外観デザインやパース、プロポーザルでの利用が中心でしたが、徐々にARCHICAD のチームワーク機能を用いた協働設計で提案書をまとめたり、BIMx を使ったプラン提案など、新しい試みも活発に行われるようになっていますよ」(堀切氏)。
BIM が設計スタイルそのものを変えていく
こうして短期間のうちにBIM 運用の基盤作りを進めた三橋設計では、着実にノウハウを蓄積。いまやより高度なBIM 運用へも挑戦している。たとえば、あるスポーツ選手宿舎のプロジェクトでは実施設計にもBIM を使用した。
「当社として初の ARCHICAD による実施設計だっただけになかなか思うようにいかず、正直もどかしい思いもしました。でも、1棟終えたらだいぶ慣れましたね。実際、次の案件では実施設計もかなりスムーズに進んだ実感があります」(加藤久子氏)。同氏がいう2件目の実施設計案件とは、2,000㎡ほどのオフィスビルで、プロポーザルから基本設計、実施設計、内外観検討に現場対応までBIM が活用された。
「詳細図関係では一部2D も使いましたが、他の図面はほぼ全て ARCHICAD で描きました。特に壁など種類分けしておけば詳細図レベルに一度に展開できるので、計画から実施へ移行しやすかったです。また、この時は梁との干渉チェックに使いたいという設備会社にもBIMデータを提供しました」(加藤久子氏)。一方、ビジネスホテルやサービス付き高齢者向け住宅のプロジェクトでは、Google Earth との連携にも挑戦した。
「実物そのままの街中にモデルが建てられるので、これも喜ばれますね。サイン位置や高さのバランスなども具体的に検討できるし、室内からの眺望まで検討可能なのでお客様の満足度がとても高いんです」(野田氏)。
こうして、三橋設計ではいまや設計部員の半数が ARCHICAD を使うようになり、計画段階に限ればほぼ全ての案件でBIM が使われる。まさに急ピッチでBIM の普及が進んでいるのだ。
「BIM は私たちの設計スタイル自体を変えつつあります。実際、BIM 設計では平面を考えながら立面や内観も考え、それらを組立てて形にしていきます。これに習熟すれば圧倒的なスピード感が実現できるでしょう。もちろんまだまだARCHICAD を使いきっているとはいえないし、まずは構造や設備、積算との連携等から活用を広げていきたいですね」(林氏)。
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