栗林賢次建築研究所&カシモ株式会社
ARCHICAD による進化したBIM 設計を活用し、新たなスケルトン・インフィル住宅を商品化

栗林賢次建築研究所&カシモ株式会社

ビッグゼネコンが普及を進めたわが国の BIM は大型プロジェクトでの運用が中心で、アトリエ事務所が手がける小規模建築では、利用こそ始まったものの、まだ大規模プロジェクトほどではない。だが、ARCHICAD ユーザーである栗林賢次建築研究所は、2015年に岐阜県の中島工務店と協力し、BIMをフル活用した新たな木造住宅ブランド「加子母子屋」を開発し注目を集めている。国産材の檜と自然素材にこだわり、高い環境・耐震性能を確保しながらローコストと高品質を両立させた規格住宅だ。同社を率いる建築家 栗林氏とパートナーの Cacimo(カシモ株式会社)の左近充氏に話を聞いた。

栗林賢次建築研究所

所在地 : 大阪市中央区 

代表者 : 栗林賢次

事業内容 : 一級建築士事務所

webサイト : http://www.kuribayashi-ao.com/

 

カシモ株式会社

所在地 : 大阪市中央区

代表者 : 左近充 翼

事業内容 : 二級建築士事務所

栗林賢次建築研究所 代表/ 一級建築士 栗林 賢次 氏

栗林賢次建築研究所
代表/ 一級建築士
栗林 賢次 氏

カシモ株式会社 管理建築士 左近充 翼 氏

カシモ株式会社
管理建築士
左近充 翼 氏

BIMで創るスケルトン・インフィルの家

「出発点は7年前、岐阜の中島工務店からの依頼でした。東濃ひのきをふんだんに使った“30坪、2階建て、1,800万円の家”という規格住宅開発への協力要請を頂いたのが始まりでした」と栗林氏は語る。しかし、今までにない厳しいスペックをプロトタイプで確保できないのは当然で、全ての工区におけるコスト低減と工期短縮を現場レベルで試行錯誤する期間が必要だった。このため数物件は工務店単独で進められたが、施主の要望に左右されて当初のコンセプトを逸脱。まとまらない状況が続いたため再度開発に参加した。その時期(2015年1月)は、同社が ARCHICAD 導入と新入社員採用により2D CAD から本格的なBIM への転換を試みて2年余が経ち、スキルが向上してきた頃で、通常業務と並行しARCHICAD によるBIM を積極的に活用して「加子母子屋」開発を進められたのである。

「加子母子屋はスケルトン・インフィルの考え方に基づいています。耐力壁を外壁で確保したシンプルな長方形平面で、内部は2本の柱だけ。基本的に室内はがらんどうで、自由かつ手軽にレイアウト変更でき、家族や生活スタイルの変化に即対応できるのです」。そして、構造体(柱・梁)を見せる真壁を採用したことが、加子母子屋を完璧なスケルトン・インフィルにした。通常の大壁仕様では、室内のレイアウトを変えるため間仕切りを移動させると、床、壁、天井の下地や仕上げの補修が必要となるが、真壁の加子母子屋なら柱梁が見切りとなりほとんど補修は要らない。住い手の必要に応じ間仕切を付替え、移動して、その時々に最適な住まいへ簡単に一新できるのだ。

「2015年10月にショールームをオープンするといきなりオファをいただき、その後も次々問い合せが入りました」。栗林賢次建築研究所にとっては、従来の業務方法とは異なる案件のラッシュである。ショールームの運営と営業は工務店側が行っていたが、顧客急増に伴い、当初から加子母子屋開発に参加し ARCHICAD に精通したCacimo(カシモ)の左近充氏が、プラン作りとプレゼンテーションを一手に引き受けた。

「ここで威力を発揮したのが、ARCHICAD によるBIMでした」と左近充氏は語る。「最初は1軒ごとに建築モデルを作り BIMx でプレゼンしていました。これはとても好評で、契約までの期間も短縮されましたが、やがてこの規格住宅で BIM を駆使すればもっと効率化できると気づいたんです」。質の高いスケルトン・インフィルの加子母子屋は、どんなプランでも外皮(スケルトン)にあたる基礎、外壁、屋根の仕様は基本すべて共通している。つまり、内部の間仕切、家具、設備(インフィル)などを施主の要望に合わせて変える仕組みなのだ。ならば ARCHICAD で作成した外皮各部のモデルデータを共通仕様として繰り返し使い、インフィル部分だけ変えていけば良い。

「実際に試してみたら、これが想像以上に効率が良いものでした」(左近充氏)。

「加子母子屋」外観正面
「加子母子屋」外観正面
「加子母子屋」断面パース図面
「加子母子屋」断面パース図面
「加子母子屋」プレゼン画面
「加子母子屋」プレゼン画面

スピードと決定力を両立させた規格住宅

今までの2DC AD による作業では、30坪程度の個人住宅でも2週間以上は必要だろう。さらにパースまで作れば3週間でも難しいかも知れない。「ところが共通仕様として作成したデータを繰り返し使える ARCHICAD なら、わずか2〜3日で、3D 画像、平面、立面、断面図に見積りまで完成できます」(左近充氏)。

左近充氏らが特別な手法で進めているわけではない。お客様の要望を「要望シート」に記入してもらい、その内容に基づいてプランを立てる通常のやり方だ。ただし外壁等は、窓の位置など多少の変更はあっても基本的には既存データを流用でき、ユニット化したパーツも用意しているのですぐにプランを作成することができる。見積りも、予め想定した項目を入れ込んだフォーマットに、プランに合わせて各部材の個数を入れていくだけで完成し、一から見積る手間はかからない。もちろんプレゼンは BIMx やCG 等を活用していく。結果、一連の設計行程はもちろんお客様に契約のご意向を伺うまでの時間が大きくスピードアップし、成約率は飛躍的に向上していった。

「プレゼンをBIM 化してからすでに12件を成約し、そのうち11件は1度のプレゼンで成約できました。1度だけ2回しましたが、それはお客様の要望が加子母子屋のスケールを超えていたためで、ランクの少し高い住宅モデルで再度ご提案し、すぐご成約いただきました」(栗林氏)。この圧倒的スピードを可能にしたのは、プレゼンテーションにおいても展開し続ける ARCHICAD による幅広いBIM 活用である。実際のプレゼンでは、常に ARCHICAD を入れた専用のノートPC でお客様に説明を行っている。

「お客様の要望は要望シートに書かれたものが全てではありません。ご提案したプランに対し、新しい要望が出てくるのはむしろ当然でしょう。ARCHICAD を使えば、お客様の新しいご要望についても、直接3D 画面をご覧いただきながら納得されるまで修正し、同時に積算書の変更にも対応して、最終的にまとまったプランと見積書を確認の上で打合せを完了できます」(左近充氏)。通常なら新しい要望への再提案は数日後、時には数週間先となることも多いが、ARCHICAD で加子母子屋をプレゼンすれば、その日のうちに全て完結できるのである。

「このような作業の効率化は施工でも BIMx によりサポートされています。現場では大工さんが常時タブレットで BIMx による図面と3Dで効率よく管理し工事を進めます。通常4カ月の施工期間が3カ月以下に短縮され、ゴミも3分の1に減りました。最初は大工も新しい施工法を好みませんでしたが、これまで以上に利益が出るので今は積極的にやりたいと言ってくれます」(栗林氏)。

ARCHICAD による修正中画面
ARCHICAD による修正中画面
ARCHICAD による切断パース
ARCHICAD による切断パース
BIMx(タブレット画面)
BIMx(タブレット画面)

BIM 活用を進めるべきなのは地域工務店

「BIM は小規模な住宅にはあまり効果がないのでは?」という疑問を打ち破った加子母子屋は、そのスピーディかつ早いサイクルで様々なBIM の技術を試行。これにより同社はノウハウを蓄積すると共に、リスクをとれる効率化を獲得し、規格住宅における実務でのBIM 運用について屈指の実績を誇るようになった。そんな栗林氏がいま注目しているのが、地域工務店によるBIM 活用の可能性である。

「昨年発表された野村総研のリポートによれば、2015年当時92万戸だった新設住宅着工戸数は、2030年には4割減の54万戸まで減少します。住宅業界、特に地域の工務店にとって厳しい時代であり、従来のやり方では通用しません。業務効率の向上を図り、新たな顧客を開拓しなければ生き残れないのです」。そこで重要になるのがBIM への取組みだ、と栗林氏は断言する。地域工務店でも自社ブランドのシリーズ商品を持つ企業は多いが、今後はZEH/ZEB なども意識した質の高い住宅商品をよりローコストで提供する必要がある。

「そこで自社の主力商品を加子母子屋のようにユニット化し、スタンダードなモデルとしてBIM 化しては?というのが私の提案です。実際、当社にはすでに各地の工務店から加子母子屋を扱いたいという問合せが数多く届いています。いずれにせよ今後、BIM の導入と活用が地方工務店の重要な課題となるでしょう。もちろん私たちもさらにBIM の活用を進める計画です。ARCHICAD のさらなる進化に期待しています!」。

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