
株式会社ixrea 代表取締役/一級建築士/一級建築施工管理技士 吉田浩司 氏
品質と早さで明確な他社差別化を図る
「個人住宅や店舗事務所も設計しますが、特に力を入れているのは賃貸住宅です。現在のように住宅着工数が減っていく中でも住む所はやはり必要ですよね。ただし、現今の社会や経済の状況を考えると、賃貸という選択肢が最も現実的だと思うのです」。そう語るのは、代表として同社を率いる吉田浩司氏である。吉田氏は、現在の賃貸住宅は収益性が優先される傾向が強く、建築としての魅力に乏しいことが大きな問題だと考えている。
「いかにコンパクトに、スタンダードなプランに収めて窓を取り、それをいかに効率的に配置して敷地の中で戸数を稼ぐか、と。もちろんそれも大切ですが、そればかりではつまらないでしょう? 私は賃貸というスタイルの中で、今までと違う価値観を提供できる住まいを作りたいんです」たとえばそれは、デザインであり、住みやすさや使いやすさだ、と吉田氏は言う。従来の集合住宅では後回しにされがちだったこれらの要素は、実は吉田氏自身のビジネスにとっても重要なポイントとなっている。
「発注にあたっては施主も多くの設計事務所に声をかけるので、結果は各社の提案勝負です。収支の問題やプランの良さは大前提として“プラスアルファは何なの?”となった時、モノを言うのがデザインです。特に建築は“かっこいいね、これ!”で決まることが多いんですよ」。しかしプロ同士の高いレベルの勝負の場において、“デザインの良さ”は図面など2次元表現だけではアピールしきれず、差別化も容易ではない。そこで威力を発揮するのがARCHICAD によるBIM 設計だ。
「3次元で提案すると、やはり“おお、凄いね”と言ってもらえます。実際それが受注に繋がることも多く、非常に競争力が高いんです。これは住む人に対しても同様で、近年は施主もそれを意識するようになりましたね」。つまり、自身が貸主となった時の一般消費者へのアピールのしやすさを、施主が意識し始めたのである。“住みやすさ”は消費者に実際にモデルルームへ来てもらわないと伝えにくいが、デザインなら伝えられる。印象的なビジュアルで見せられれば、ネット経由でも十二分にアピール可能なのである。
「今では、鹿児島でも CG パースを出してくるライバル会社が出てきましたが、ほとんどがわざわざ2D とは別に3D モデルを立ち上げ、レンダリングしてパースを作っています。ARCHICADのBIM モデルで作る私たちは提案までのスピードが圧倒的に短く、早さとクオリティで強力な他社差別化を図ることができたんです」



お客様の反応が劇的に変化
「ARCHICAD の導入はixrea の設立と同時です。以前は別のCAD で図面を描き、3D はフリーのモデラーを使っていましたが、あるとき他社の3DCAD を触ったらすごく良くて……独立したら3DCAD を入れてBIMで設計しようと決めたんです」。このような3次元化の流れならそのまま他社CAD を導入するのが普通だが、吉田氏は慎重だった。改めて4つもの3DCAD 製品を比較した上でARCHICAD を選んだのである。
「新事務所のメインツールになるのですからこの選択は重要です。事務所にとって安い買物ではないし、今後何十年も使っていくものですからね。けっこう厳しく比べましたが、直感的な操作性のARCHICAD の使いやすさはずば抜けていました。それにMac 版があったことも大きい。比べると、OS もやはり圧倒的にMac の方が使いやすいですから」。そういって笑う吉田氏だが、それでも当初は忙しさもあってなかなかARCHICAD へは移行できなかったと言う。仕事に追われるまま、2D CAD で2D 図面を描いていたのである。
「忙しくて操作を勉強するのが億劫で、そのままにしていたんです。でも、3カ月ほど経った頃、新案件でパースが必要になったんですよ。そこでこの際、ARCHICAD でガッツリやろうと使い始めたら……めちゃめちゃ簡単じゃないですか!もう即座に100%移行してしまいましたよ」。
こうして確立されたixrea のBIM 設計手法は、徐々に同社の業務スタイルを根本から変え、業績に影響するほどのインパクトをもたらした。まず1番の変革は提案のクオリティとスピードの圧倒的な向上だ。従来は1週間かけて基準階のプランを出すのが精一杯だったが、爾後は同じタイミングで平・立・断面図に多彩なパース、3D モデルまで見せられるようになったのだ。
「当然、お客様の反応も劇的に変わりました。“この段階でこんなモノが見られるのか!”と驚かれ、“ここまでやってくれる所はありません”と関心されるんです。しかも引渡しでまた驚かれる。“3D モデルのまんまに出来てます!”って」。だが、BIM 設計への移行による影響はそれだけではない。吉田氏自身に、建築家として大きな変化が起こっていたのである。



業務の全てがスムーズかつスピーディに
「プランを練っていく時は、今もまず手描きでスケッチを描きながら進めていますが、以前は、プランはプランで完成させないとその先の立面や断面に進めず、それが完成するまで正確なボリュームは見えませんでした」。そのため実際に寸法を入れてみると、イメージと微妙なズレが生じていたこともしばしばだった。ところがBIM 設計移行後は、一連の作業を一元的に行なえるようになり、プランを描く前にモデルを作ることも可能となったのである。
「つまり頭の中のイメージと実際の寸法を入れた時の形を、一致させながら設計できるようになったんですね。結果、デザインだけに集中して効率的に進められるし、施主にもそれを分かりやすく伝えて素早くコンセンサスが得られるわけです」。
ARCHICAD の活用により設計業務の全てがスムーズかつスピーディになり、しかも品質向上したという実感が吉田氏にはある。今後はBIM の活用を設備や構造、施工まで広げていきたいというのが次の目標だ。
「構造や設備も現状では2D でもらった情報を反映させて意匠モデルに反映させていますが、これも何とかフルBIM に近づけたいですね。後はやはり積算。数量などきちんと拾えるようにして、設計段階で内訳書が作れるくらいのレベルにしたい」。むろん建築は1社でできるプロジェクトではない。鹿児島ではBIM の普及が遅れ気味だと考える吉田氏は、地元業界へのBIM 普及を目指した働きかけにも協力しているという。
「特にARCHICAD がもっと普及してくれれば、さまざまな協業も可能になります。こちらの活動にも力を入れていきますよ」
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