一級建築士事務所 エイチ・アーキテクツ
BIM初挑戦! 天空率からプラン、モデル、構造、全ての図面までフルBIMでつくる変形敷地の木造3階建て住宅

一級建築士事務所 エイチ・アーキテクツ

BIMの活用と言えばゼネコンなど大手企業のプロジェクトを連想しがちだが、近年は個人事務所の設計者が戸建て住宅にBIMを利用するケースも増えている。東京新宿区のエイチ・アーキテクツは設立2年目の一級建築士事務所である。代表の橋本啓太氏は独立を機にARCHICADを導入し、新事務所での初仕事として木造3階建て個人住宅の設計を受注。ARCHICADによるBIMをフル活用し、見事にこれを成功させた。大きな成果を上げたBIM初挑戦の詳細について、橋本氏にうかがった。

一級建築士事務所 エイチ・アーキテクツ

設立 : 2012年10月

代表者 : 一級建築士 橋本 啓太

所在地 : 東京都新宿区

事業内容 : 敷地利用計画についての調査・検討、建設プロジェクト企画資料の作成(日本語/英語)、建築設計及び監理(新築/改修)、家具・照明器具等の設計、グラフィックデザイン/サイン計画、翻訳(英語)ほか

HP : http://www.h-arch.jp/

BIMの登場は建築業界の必然である

一級建築士事務所
エイチ・アーキテクツ
代表
橋本 啓太 氏

一級建築士事務所 エイチ・アーキテクツ 代表 橋本 啓太 氏

「それまで2次元CADしか使ってなかったのに、独立を機にARCHICADを導入しBIMを使い始めたのは、それが歴史的必然だと思ったからです」。開口一番、橋本氏はそう言って笑みを浮かべた。同氏がこう考えるようになったきっかけは独立前の勤務先で見た、複数のBIMソフトのプレゼンだったという。橋本氏が当時勤務していた事務所でBIM導入の動きが始まっていたのである。

「私は手描き図面を経験した最後の世代に当たります。手描きから2次元CAD、そして3次元CGにも触れ、ツールの進化を身をもって体験してきました。だからこそ図面とパース、モデルの全てを統合するBIMの登場は、建築業界にとって必然的な流れと感じたのです」。独立したらBIMを導入しよう。そう決めたこと自体が、ある意味橋本氏の背中を押したのかもしれない。独立を具体化していく上で定めていた目標に、BIMという新要素が大きく影響したのである。たとえば最初は小規模な個人事務所として開設するから、省力化と省スペースが重要になる。そのために橋本氏が考えた方針が「建築模型を作らない」ことだった。

「模型は好きでしたが、材料や完成品の置場に場所を取るし手間もかかり、外注すればコストも発生します。できれば作りたくなかったんですが、BIMでそれが可能になったんです。しかも、モデルと連動した整合性の高い図面で手戻りも減らせる。省力化が必要な個人事務所に最適でした」。

では、具体的にどのBIMソフトを選ぶべきなのか。コストダウンが大前提なのは当然として、橋本氏が選定ポイントとして重視したのは、非力なコンピュータでも軽快に動かせるパフォーマンスの高さと、これも小規模事務所に不可欠なプレゼンテーション機能の充実である。

「いろんな場所で作業したかったのでラップトップ、それも強力なPCでなくても軽快に動くソフトが望ましい。パースも外注する余裕はありませんから、私が簡単に作れるものが欲しかったんです。そんな思いで試した結果、行き着いたのがARCHICADのSolo版でした」。十分な機能を備えながらレギュラー版の半額以下で買えるSoloは、独立を目指す者にとって非常に魅力が大きいと強調する橋本氏だが、同時に小さく苦笑いを浮かべた。

「でも、実は最後の決め手は操作感だったんです。ARCHICADは画面も操作も直感的ですごく私の感覚にフィットするんですよ。論理的とは言えませんが、デザイナーとしてのこだわりですね」

建物全景(設計時)
北東側ファサード

天空率によるボリュームスタディを駆使

こうした経緯を経て、橋本氏がエイチ・アーキテクツを開設したのは2012年10月。その時点ですでにある個人邸の建築プロジェクトを受注しており、同氏は早速その設計作業にARCHICADを投入した。

「でも、開所直後の11月は施主と敷地探しに走り回っていましたね。予算の問題でなかなか良い土地が見つからず、決まったのは12月でした。実際そこは素晴らしいロケーションだったんですが、ちょっと問題もあって……」。橋本氏の言葉通り、それは駅から徒歩5分の閑静な住宅地の一画。公園を目の前にした緑豊かな土地だったが、鋭角な十字路の突端に位置する三角形の敷地だったのである。道路斜線が2方向から掛かり、加えて北側に敷地境界線があるのでそこから北側斜線が掛かる。結果、3方向から斜線が掛かり、第一種中高層住居専用地域ながら中高層の建築は困難だった。事実、橋本氏は不動産業者から「3階建ては難しいですよ」と耳打ちされたという。

「とにかくARCHICADアドオンの高さ制限シミュレーション『ADS-BT』で、ボリュームスタディを行なったんです。試しに斜線で検討してみると、やはり3階は三角の小さなボリュームしか取れませんが、同時に天空率なら行けると直感しました」。こうして天空率を適用することで難題をクリア。3階にも8畳・4畳半の2部屋にトイレ、階段をきちんと取ることができたのである。

「その意味でこのプランは、敷地条件に基づくARCHICADとADS-BTによるボリュームスタディから、逆算して求めた形といえるかも知れません。ARCHICADをいきなりフル活用したわけですが、実はトレーニング時間はなくて、『ARCHICAD Starter Book』をひと通りやっただけのぶっつけ本番での実践でした。それでもスムーズに使えたのは、やはりARCHICADの直感的な操作性のおかげでしょうね」

2階LDK(設計時)
2階LDK(設計時)
2階LDK(竣工時)
2階LDK(竣工時)

フルモデルに図面もすべてARCHICADで

ボリュームスタディに始まった橋本氏のARCHICAD活用は、設計のあらゆる側面に及んでいった。複数のプラン提案から決定後のディティール検討もARCHICADのモデルで行ない、ここぞという提案は、Artlantisでレンダリングした多数の高品質なパースで施主を圧倒した。

「プランは変形敷地の活用がポイントです。壁で区切る余裕はないので2階はワンルーム。三角の形を生かして中庭を造り、リビングとダイニング、キッチンをZ型に配置しました。以前だったらこのZ型空間がきちんと機能するか、確認が難しかったでしょうが、今回はこれもARCHICADでモデルを回して眼で見て確認できました」。

こうしたビジュアル活用は輸入家具の選定や、造作家具・金物など多数の特注製作物にも及んでいる。輸入家具はメーカー提供の3Dモデルを配し、特注製作物も製作図通りにモデリングしたものを建物モデルに設置して見せたのだ。こうすることで施主は設計意図を素早く理解し、あらゆる判断がスピードアップする。当然、手戻りも大きく減ったという。

「もちろん図面も全てARCHICADで描き、構造も入れています。この家は木造メインですが、S造やRC造の箇所もあってなかなか施工が難しい建物です。だからこそビジュアルな説明が有効でした。施主はもちろん、構造設計者や施工者に対しても同じでした」。しかしここまで作り込むとなるとモデル制作の負担を心配する人もいるが、たいした手間ではないと橋本氏は言う。

2階・3階平面図
2階・3階平面図

「この程度のモデルなら今は2日で作れます。図面についても、ARCHICADならモデルをカットすれば8割がた図面ができてしまう感覚ですね。2Dや手描きで描いたらどれほどの手間か……効率化効果はやはり絶大でした」。そう満足そうに語る橋本氏は、次はARCHICAD 18で導入されたCINEMA4DをArtlantisと併用し、さらなるプレゼンテーションのレベルアップを図る計画だという。――BIMをフル活用した同氏の事務所運営はますます快調である。

ADS-BTによる天空率リスト
ADS-BTによる天空率リスト
構造モデル
構造モデル

Archicadの詳細情報はカタログをご覧ください

ー カタログと一緒にBIMユーザーの成功事例もダウンロードできます ー

  • Archicad ユーザーの設計事例を紹介
  • 設計時の裏話や、BIMの活用方法など掲載
  • その年ごとにまとめられた事例をひとまとめに
  • BIM導入前から導入後の情報満載

Archicadのすべての機能を
30日間お試しいただけます。

Archicadを導入して自分らしい設計をしよう