学校法人中央工学校OSAKA 進路指導室 室長 中島 征治 氏
学校法人中央工学校OSAKA 住宅デザイン科 1年 栗山 匠 氏
ディースタイル カンパニー(学校法人中央工学校OSAKA講師) 亀岡 雅紀 氏
入学して半年後の挑戦でグランプリ受賞
「作品を提出した時は実はそれほど自信はなく、やっと課題が一つ終ったくらいの気分だったんです」。そういって栗山さんは照れくさそうに笑う。「だからグランプリ決定の電話をいただいた時は本当に驚きました。正直いまでも実感がありません」。そんな風に彼が自信を持てなかったのは、ある意味では当然だったかもしれない。実は栗山さんがコンテストの課題製作に着手したのは、この中央工学校OSAKAに入学してわずか半年後のこと。当時の彼は文字通りの新米学生だったのである。
「しかも私の場合、工業高校の機械科卒で建築はまったくの素人。入学してから勉強を始めたばかりだったんです」。そんな栗山さんの言葉を受け、同校進路指導室の中島氏は語る。
「彼が属する住宅デザイン科と建築学科では、このコンクールの課題制作がカリキュラムとなっており、基本全員が応募します。しかし1年生にとって初めての本格的設計課題なので、質はさほど高いとは言えません。実際、図面もパースもほとんどが手描きだし、応募を躊躇うような作品も多々ありました」。同校は第1回からこのコンテストに参加しているが、これまでは優秀作品入選が最高位。特に今回の課題は鉄骨造2階建ての官舎で、テーマは“長く行き続ける住まい”として条件面も細かく指定された厳しい内容だった。それにもかかわらず、栗山作品は一頭地を抜く完成度を備えていたのである。
「ポイントを押さえた質の高い作品でしたね。空間の使い方や、町並みとの調和、周辺環境を配慮した、バランスのとれた総合的に優れた作品と評価されたように、プランニングも、厳しい条件のもと押さえるべきものを押さえながら随所で上手い提案が行われ、とても1年生の作品とは思えません」(中島氏)。そしてもう1点、中島氏が声を大にして訴えたのが、栗山さんがプレゼンボードに使用した、ARCHICAD によるビジュアルの完成度の高さとそのインパクトである。
「ARCHICAD で作ったビジュアルが凄く迫力があり、講評でもそれが高く評価されました。実は栗山君の ARCHICAD 授業はまだ始まっておらず、彼もコンペサークルの仲間と独学で使い始めた所でした」(中島氏)。もちろん栗山さんの才能と努力は言うまでもないが、受賞作の質の高さは決して偶然の産物などではない。その背景には、建築系専門学校として最も早くARCHICAD を導入し、先陣を切って BIM による建築教育を推進する同校ならではの理念と充実の教育環境があった。
ARCHICAD は学生が頑張れる CAD
「本校がARCHICAD を導入したのは、もう15年も前です。当時まだBIM という言葉はありませんでしたが、ARCHICAD はすでにBIMと同じ概念を備えていましたし、なによりそのデモンストレーションには圧倒された記憶があります。特に3D モデルから簡単に図面が出せて、しかも平・立・断がリンクし連携していた点には、まさに目から鱗という思いでした」(中島氏)。こんな凄いツールで建築の現場が進められるようになったら、いまの自分たちの教育では対応しきれない――。そんな中島氏らの思いが、今日の同校の、BIMを活かした先進的な取組みへの原動力となったのである。無論、実際の導入にあたっては、当時、市場にあった各社の3次元CAD 製品との詳細な比較検討が行われたが、ARCHICAD の使い勝手の良さに加え、初期から3次元に特化して取り組んできたグラフィソフトの実績と手厚いサポートが決め手となり、スムーズに ARCHICAD が選ばれた。
「当初、私たちの目的はBIM というよりプレゼン教育の強化が狙いでしたが、導入効果はすぐに現われました。これを使えば学生でも簡単に3D を立ち上げられたのです。つまり労力をかけずにアイデアをビジュアル化できるため、学生も飽きずに課題に取り組むことができる。ARCHICAD はいわば“学生が頑張れるCAD”でした」(中島氏)。それまでは同校でも盛んに手描きパースや建築模型を課題としていたが、飽きて途中で放りだしてしまう者も少なくなかったという。ところがARCHICAD を中心とする3D 化への取組みが進むにつれ、学生の学習への取組み姿勢そのものが大きく変わっていったのである。
「特にデジタル・ネイティヴの若い学生たちは、先輩たちが手描きで苦労した作図やパース作成も、CAD なら面白く楽しく頑張れるようなのです。実際、最近は作図でも何でも積極的に取り組む学生が増えた実感がありますね」(亀岡氏)
こうして専門学校として最も早くから3次元活用を進めてきた同校では、数年前からBIM を授業に導入。バーチャル設計コンペ「Build LiveJapan」にも参加するなど、BIM を活用した建築教育の取組みを本格化させていった。
BIM 教育の先駆者として
「現在ではARCHICAD の授業は建築CG デザイン科が最も早く、1年生の10月から、建築学科と住宅デザイン科は2年生前期から始めています」(中島氏)
「ARCHICAD は図面もしっかり描けるので、学生にはBIM の概念と共に平面一般図から詳細図まできちんと描いてBIM データづくりに取り組んでもらっています」(亀岡氏)。前述の通りコンペサークルでの独学とコンテスト課題の制作を通じ、ひと足早く ARCHICAD によるBIM設計を体験した栗山さんも、やがて始まるこのBIM 授業を楽しみにしている1人だ。
「ARCHICAD で課題をやるようになってプラン作りの手法が変わりました。頭で考えていても3D で建ててみると“ここは変えた方が良い”となるので、今はもう全て ARCHICAD の中で描いていきます。もちろんまだまだ分らないことも多いので、改めて基礎から学ぶのがとても楽しみですね」(栗山さん)。
こうした同校の教育スタイルは、専門学校にとって重要なミッションとなる卒業生の就職サポートにも効果が出ている。実際、企業から「誰かBIM のできる人に来てほしい」と頻繁に声がかかり、中には 「BIM って何?」と質問してくる会社まであるほどで、BIM エキスパートの学校という評価が定着しつつある。
「今後はこうした流れに他校も追随してくると思いますが、蓄積したノウハウを活かし着実に講座の充実を図っていく計画です。すでにARCHICAD と連携する高さ制限解析ツールやハイエンドCG の 導入も検討を進めているし、スケジュール問題から前回は参加を見送っていたBuild Live Japan にも、次は栗山君らに頑張ってもらい、ぜひ参加したいですね」(中島氏)
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