株式会社アライ設計
設計者全員の総意で選んだARCHICADを核に3年がかりで築き上げたBIM設計体制

株式会社アライ設計

埼玉県さいたま市のアライ設計は、間もなく創業半世紀となる建築設計事務所である。「100年後の街に住む人に愛される建築を創造する」というテーマのもと、地域に根ざした多様な建築を作り続けてきた。特に医療・福祉施設はコンサルテーションから設計、現場監理、アフターフォローまで一貫したサポートで豊富な実績を築いている。そんな同社だけにBIM への取組みも積極的で、2017年から3年がかりでARCHICAD 導入を推進。2019年にBIM 設計体制への移行を完了した。着々と進む独自のBIM 化戦略の詳細について伺った。

株式会社アライ設計

所在地:埼玉県さいたま市

代表者:代表取締役社長 荒井理人

設立:1971年12月

事業内容:官公庁・民間の建築企画・計画・設計・監理・耐震診断、医療・福祉施設のコンサルタント業務ほか

webサイト:http://www.araisekkei.com/

株式会社アライ設計
取締役 統括室長
村田行庸 氏

株式会社アライ設計
長谷川恭央 氏

BIM はまず設計者自身のために

 「当社は創業以来この大宮(現さいたま市大宮区)で営業しており、文字通り地域に根ざした建築設計を行ってきました」。そう語るのは、アライ設計の取締役統括室長として9名の設計スタッフを率いる村田行庸氏である。同社のBIM 化推進の主導者であり、自身ARCHICADを駆使して企画設計を行うプレイング・マネジャーだ。「引き合いさえあればジャンルを問わずどんな建物でも作りますが、近年は医療/福祉施設を中心に事務所ビル、工場物流倉庫など、さまざまなプロジェクトも多くなっていますね」。まさに時代のニーズに応え、顧客の要望を確実に実現していこうという設計事務所なのである。同社が本社を置く地域はBIM普及が遅れ気味といわれるが、そんな中で同社がいち早くBIM 設計体制を実現した背景にも、そんな同社独自のスタンスがある。

 「元々は社長の”これからは、BIM を用いた設計も考えていく必要があるんじゃないか?”というひと言が出発点でした」。ところが、そうして実際にARCHICADの導入を進めるうち、それが単に将来への布石のためというだけでなく、設計業務そのものに大きな可能性を切り開くものであることに気付いたのである。「特に大きかったのは、ARCHICAD と BIMx の活用により、お客様へのプレゼンテーションが、即座に、劇的に変わった点でした。3D ならではのインパクトの強いビジュアルで素早くお見せすることができる。結果、設計意図も早く精確に伝わるようになったのです」。

 お客様の要望を捉えて実現することを重視する同社にとって、ビジュアルを用いたお客様との質の高いコミュニケーションはきわめて重要だ。以前は専門業者へパースを外注していたが、コストの問題から何度も使うのは難しく、たいていは設計者自身が描いたエスキースや平面プランで説明せざるを得なかった。「それが普通だと思っていましたが、ARCHICADによる充実したビジュアルプレゼンが可能になると、お客様への印象の強さも設計意図を伝える速さも一変しました。エスキースに頼って説明するより、BIMx で3D を見せた方がはるかに早く、精確に伝わるのです。しかも自分の手で作れるのですから、社内へ急速に普及したのは当然でした」。

湘北病院(エントランスホールライン照明検討)

ARCHICAD + 64ビット機によるBIM体制構築

 2019年6月、アライ設計はARCHICAD を追加導入して合計9ライセンスとし、合わせてコンピュータ環境も64ビット機を揃えて1人1台環境を実現。BIM設計体制への移行をひとまず完成させた。「その時から設計スタッフ全員に、新規物件については基本すべてARCHICAD によるBIM設計で行うよう求めています」。もちろん実施図までフルにARCHICADでやるか、基本設計だけに留めるかは案件ごとに担当室長が判断する。実際、小物件や以前2D で設計した既築物件の改修など2D で進める場合もあるが、数はもう決して多くないと村田氏は言う。同社の設計スタッフのほとんどが、既にARCHICAD で実施図を作れるレベルとなったため、改修案件でもARCHICAD を使うケースが増えているのだ。

 「慣れてしまえばARCHICAD の方が効率的ですし、後工程を含めいろいろ便利なのは当然でしょう。たとえば大きい案件に多発する設計変更等への対応も、ARCHICAD の方が圧倒的に楽で正確ですからね」。しかし、だからといって何もかもBIM 化すれば良いというわけではない。実際、同社では3D モデルやBIMx によるプレゼンを行う一方、手作りした建築模型を活用することもあるという。「質量感等を確かめるには模型の方が良い場合もあるんですよね。それぞれの強みを活かし、各案件に最適な手法を選びたいのです」。つまり、BIM 設計をいち早く確立しながらそれだけにこだわらず、デジタルとアナログを巧みに組合せながら「より良いもの」を創り出そうというのが、同社の基本姿勢と言えるだろう。だが、当然ながらこの体制も一朝一夕に築けたわけではない。

設計者全員で選び、全員で取り組むBIM設計への道

 「BIM 化の取組みを始めたのは2016年。まず資料を集め、詳しい方に話を聞いていったのですが、理解が進むうち”これは一気に乗り換えるのは難しい” と感じました。そして、慌てずじっくり足元を固めながら進めるべきだ、と」。そして、村田氏が声をかけたのが長谷川恭央氏だった。

 「3D CAD を使用した経験はありましたが、BIMモデルを扱うソフトに触れるのは初めてでした」。そう語る長谷川氏は早速BIMに関わる情報を収集・分析し、BIMツール3製品をピックアップした。すなわち、当時同社のメインツールだった2D CAD と同メーカーの製品、国産メーカー製品、そしてARCHICAD だ。この3製品から次代のメインツールを選ぼうというのだが、こうした全社的課題についてアライ設計では担当任せにせず、皆が参加していくのが基本である。「製品資料や体験版も入手して各製品の特徴をまとめ、社内にアナウンスした上で”どれが当社に最適か”皆で話し合ってもらいました」(長谷川氏)。以前から毎週月曜定例で開催していた勉強会で、このBIMツール選考に関わる議論が数週間にわたり続けられたのである。

 「”ここが使いやすい” とか”使い難い” とか、議論は毎回白熱しましたが、やはりARCHICAD が”操作が直感的に入力しやすい” と人気が高かったですね」と村田氏は言う。一方、長谷川氏は「操作性はもちろんですが、私自身はプレゼンツールとしての活用に魅力を感じました。BIMx 上で3Dモデルから図面を切り出すグラフィカルな表現や、ウォークスルー機能など、施主に意図を伝えやすいと感じたのです」と語る。こうして数カ月にわたる議論の末、ARCHICAD が選ばれたのだ。

 「最初はとりあえずARCHICAD のソロ版を2本と64ビットのノートPCを2台入れました。特に担当は決めず使いたい人が使うやり方でスタートしましたが、どうも普及が広がりません。そこで実案件で試そうと、また長谷川君に声をかけました」(村田氏)。とりあえず1物件、できる所までBIM でやってみてくれ――と頼まれた長谷川氏だったが、講習等を受けてひと通りの操作は身に付けていたものの、初チャレンジには苦労することになった。「小規模な公共案件の実施設計でしたが、図面としてまとめるのは試行錯誤の連続でした。その後、別案件の設計でBIM モデルを生かしたプレゼンを行ったところ、予想以上の反応を得られ、施主との相互理解が深まっていくことを実感しました。ARCHICAD で作れば建物を自由に動き回り、3D や動画でも見せられる。光の入り方等も設定できるので”この時はこうなります” とリアルタイムで見せられるんです」。

 予想以上に時間がかかったため、社内では「やはりBIM は難しい」という声もあがったが、長谷川氏の報告を受けた村田氏は逆に「使わない手はない」と確信を深めた。あらためてグラフィソフトに協力を要請し、講師を迎えて行う全員参加のフォローアップ講習を毎月実施。同時に実案件での活用も続行していった。2018年6月にはARCHICAD 3セットと64ビットのデスクトップ機を増設し本格的なBIM 設計体制の構築を始め、1年後に完成させたのは前述の通りである。――それからさらに1年が経とうといういま、あらためてARCHICAD について村田氏に聞いてみた。

 「ARCHICAD を使うようになって設計の過程が非常に楽しくなりました。何と言うか思考を即座に形にできるんですよ。その変換スピードが非常に早いので、結果を目で見て次のアイデアへ膨らませる過程が簡単に、素早くできる。まさにデザイン思考そのものを変革するツールという気がします。私たちもBIM 体制こそできましたが、本格的な活用はまだまだこれから。何にでも積極的に挑戦していきたいですね」。

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