株式会社幸工務店
素材も図面も施工も「本物」だけを提供したい だからこそBIMツールにはARCHICADを選ぶ

株式会社幸工務店

広島県福山市の幸工務店は、曽祖父の代から数えて4代目となる大工兼設計者の幸隆伸氏が経営する工務店である。幼い頃より棟梁の父から伝来の技を学んだ幸氏は現在も大工を率いて現場で槌を振う一方、一級建築士として自社物件の設計施工から他社案件の企画設計まで、幅広い業務を手がけている。「本物を提供したい」という思いで木造建築を追求し続けてきた幸氏は、2年前にARCHICADを導入。BIMへの取組みを開始した。「設計にも作図にも本物を追求したいからARCHICADを選んだ」という幸氏の取組みについて聞いてみた。

株式会社幸工務店

所在地:広島県福山市

代表者:代表取締役 幸 隆伸

設立:2014年 7月

事業内容:建築一式工事業、土木一式工事業、建物の設計・管理業、土地建物に関する調査・測量・管理業ほか

webサイト:http://yuki-koumuten.com/

「本物を提供したい」からBIMが要る

株式会社幸工務店
代表取締役
一級建築士・工学修士
幸 隆伸 氏

「15年ほど前までは、事務所横の作業場で手刻みして梁や柱の継手・仕口を作っていました。父が墨付けして、大工たちが蟻を作ったり穴を開けて。多い時は大工も6人いましたが、今は……時代の流れですね」。そういって幸氏は苦笑いする。いつの間にかプレカットが精度を上げ、家づくりの主流となっていったのだ。

「この流れはもう止められない、と感じました。となると、今まで通り大工を一生懸命やっても取付大工・組立大工になるだけだ、と」。幼い頃から現場に出入し棟梁の父から大工の技を学んだ幸氏だったが、棟梁への道はこの時諦めた。だが、建築の道まで捨てたわけではない。大学から大学院へ進んで建築を学び、一級建築士まで取得したのである。

「そんなことを考えながら大学院を卒業し……で、何をする? と自分に問いかけた時、思い浮かんだのはやはり“本物”を作りたい、という気持ちでした」。たとえば本棚ひとつ作るにも、少しだけ良い木材を選んできちんとデザインし、加工場で丁寧に削って組み上げるだけで本物の質感が生まれる、と幸氏は言う。「それは既製品には決してないものです。私はそういう“本物”が好きだし、作りたい。だから、自分にできるのは“本物を提供する”ことしかありません。ならばこれを強みとして打ち出していこうと考えました」。

住宅の窓の施工等でも、近年ほとんどが木目印刷したシート巻きの額縁を使う。だが、こうしたシート巻きの額縁は20年程度でほとんどが日焼けして色が飛び、真っ白になると幸氏は首を振る。「私たちなら窓枠もミリ単位で精密加工し、塗装まで念入りに仕上げて取付けます。大したことじゃないですが、本物を提供するとはそういうことではないでしょうか。フローリングの床も、今は多くが木目柄を印刷したシート貼りですが、それで本当に快適なのか?と問いたいですよね」。

こうして幸氏は父親のもとで働きながら、徐々に幸工務店の方向性を転換していった。住宅会社の依頼で大工仕事を請負う一方、独自にお客様を見つけて企画・プレゼンし“本物”を提供することを積み重ねていったのである。住宅から書棚など造作家具まで、良質の材料と独自のアイデア、そして伝来の技で作る幸氏の“本物”は徐々に支持を集め、2014年には正式に会社を継いで法人化。株式会社幸工務店として活動を開始したのである。──そして、この「本物」を追う取組みの中で、もう一つ重要なテーマだったのがBIMへの挑戦だ。「いくら本物を構想しても、具体的なイメージが見せられなければ施主には伝わりません。本物を提供するためにこそBIMというツールが必要だったのです」

図面もまた本物を追求するために

「CADを知ったのは大学のCAD演習の授業でしたが、同時に手書きの図面もいっぱい書きましたね」。つまり、幸氏は作図が手書きからCADへの過渡期に学んだ世代。卒業後に務めた建築会社でも、芸術的な手書き施工図から大手ゼネコン設計部による最新のCAD図面まで両極端の図面に触れ、このことが後に幸氏の3Dツールの選択にも大きな影響を与えたのだという。

「特に手書き図面の美しさには“本物”を感じましたが、CADも3D化が始まっていました。私自身は27歳で実家へ戻り、以後は父を手伝って現場へ出たり友人の家を設計したりしながら、前述の通り本物指向で会社の方向性を変えていったのです」。だがこの「本物」志向が災いし、幸氏は3D CAD選びに迷走する。

「最初の3Dツールはフリーウェアの3Dモデリングソフト。これでイメージパースから日影シミュレーションまで作って、Jw_cadで図面を書いていました。しかし、このソフトはモデルと図面が連携せず、設計変更等になると全て書き直すしかありませんでした」。何とかならないか、と再びソフトを探し始めたが、ようやく見つけた他社製品で大きな失敗を経験することになる。「便利と言われて入れたのに、出てくる図面が納得できるものではありませんでした。意図しない内容の図面ばかりで使い物にならないのです」。芸術的な施工図に感動し、図面も本物を提供したいと考えていた幸氏にとって、それはどうしても許せない図面だった。

「痛い出費でしたが潔く諦めました。そして、次は絶対失敗できない、と意を決して探し始めた時に出会ったのがARCHICADだったのです」。それは大学時代の先輩に「面白いソフトがある」と誘われたのがきっかけだった。先輩に見せられたARCHICADは、その直感的な操作性や互いに連携する図面化の機能に幸氏は圧倒された。「正直、これから新しいソフトを勉強し直すのは辛いとも思いましたが、ARCHICADの図面化機能が本当に凄かったし、先輩も60歳近いのにまだまだ勉強を続けていて……つい私も“やってやろう!”と導入を決めました」

1年でハイレベルなARCHICAD遣いに

こうして2017年にARCHICADを導入した幸氏だったが、本格運用を開始したのは2018年のことだ。実は導入後一年はモデル作りだけで精いっぱいの状況だった。「建築モデル作りはとても楽しかったのですが、肝心の図面化が……ARCHICADの仕組みをわたし自身が吸収することにすごく時間がかかってしまったのです」。こだわりの強い幸氏らしい回り道だったが、やがて意を決してある三軒長屋のプロジェクトでARCHICADによる図面化に挑戦。さらにそのまま一気に確認申請までやりきることによって、ブレイクスルーを果たしたのである。

「それまで作図で困ると、ついJw_cadに逃げていたのですが、これじゃダメだと勇気を持って乗換えました。後は分らないことが出てくる度にサポートに聞き担当者に聞き、ユーザー仲間に聞いて一つ一つ解決していったのです」。 現在では、細部までリアルに作り込んだ3Dモデルや、選び抜いたフォント・自作シンボルを駆使して作る2D図面の美しさも高く評価され、ARCHICADユーザーの間でも知られる存在となった幸氏だが、わずか一年でこれほど長足の進歩を遂げた原動力は何だったのか?

「もちろんサポートや担当者、ユーザー仲間の助力はすごく大きかったですが、一番大きかったのは実はお客様の存在なのです」。そういって幸氏は、現場が進行中のあるプロジェクトのプランを見せてくれた。窓を広く取った木造二階建ての建築モデルである。よく見ると、シンプルながら洗練されたプラン全体の完成度はもちろん、質感豊かなソファやワインが並ぶワインセラー、現実の名酒が並ぶバー、一目でそれと分る人気車が収められた車庫まで徹底してリアルに作り込まれている。

「こんなに凝りまくったのは、 “より現実味のあるイメージを”と、共にプロジェクトを作り上げていくというクライアントの強い意向があったから。実際、プラン変更は100回以上、設計だけで1年かかっています。とにかく“もう少しこんなイメージない?”の繰返しで……私もARCHICADでなければ到底やりきれなかったでしょう」。このクライアントの徹底的なこだわり、リアルとイメージのすり合わせにこだわった要望に応え続けた一年が、幸氏の「腕」を飛躍的に磨き上げたのだ。

「正直いって大変でしたが、私のスキルアップという意味では最高のお客様でした。なぜか私はこういうお客様が多くて……本当にお客様に育てていただいている実感がありますね」

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