吉田建築設計・計画事務所
小さい事務所ほど3次元の導入効果は大きい。 実施設計からチャレンジした初めてのBIM

吉田建築設計・計画事務所

盛岡市の吉田建築設計・計画事務所(以下 吉田建築設計)は、一級建築士の吉田宏民氏が主宰する設計事務所である。設立こそ2009年と新しいが、代表の吉田氏は建築設計者として東京・盛岡で25年余のキャリアを持つベテラン建築家だ。独立前は2次元CADユーザだった吉田氏は、事務所設立を機にARCHICADを導入し、本格的な3次元設計への展開を開始した。設立5年目となる現在では、すでに基本計画から実施設計に至るBIMを実践しているという。その背景と狙いについて、吉田氏にうかがった。

有限会社 吉田建築設計・計画事務所

設立 : 2009年

代表 : 一級建築士 吉田宏民

所在地 : 岩手県盛岡市

事業内容 : 建築の設計・監理

自分で建物を施工する感覚に近い3次元設計

有限会社 吉田建築設計・計画事務所
取締役所長
吉田宏民 氏

有限会社 吉田建築設計・計画事務所 取締役所長 吉田宏民 氏

一般にコンピュータ機器に慣れた若い世代に比べると、キャリア豊富な設計者ほど3次元やBIMの導入に慎重な傾向があるようだ。当然といえば当然だろう。長年使い慣れた2次元CADや手描きを捨て、忙しい仕事の合間を縫って新しい世界を学ぶとなれば、誰でもハードルを意識せずにはいられない。しかし中には、使ったこともなかった3次元CADを主力ツールに選び、思いきって実務に投入していくベテラン設計者もいる。吉田建築設計の代表、吉田宏民氏もその1人である。

「3次元CADを意識したのは、5年前に独立した時のことです。新事務所にCADを導入する必要があり、“今どんなソフトがあるのか?”と興味を持ったのがきっかけでした。BIMもその時知ったんです」。それまで吉田氏は、勤務先に導入されたある汎用CADを6~7年ほど使い続けていた。当然、新事務所にも同じCADを、というのが現実的な選択肢だろう。実はその汎用CADにも疑似的な3次元機能が付いていたが、吉田氏自身はまったく使っていなかった。当時、若手の同僚がその3D機能で作図しているのを見て「ハードルが高い」と感じ、手を出せなかったのである。

「だから3Dについては“こんなのもあるのか”という興味本位でした。もし使えれば儲け物くらいの気持で、BIM対応の2製品の体験版をダウンロードしたんです。その1つがARCHICADでした」。しかし、この体験版ARCHICADが、吉田氏の3次元CADに対するイメージを一変させる。

「こんなに簡単にできるのか!と、とにかく驚きました。他社CADとはいえ以前はあんなにシビアで煩雑に見えた3D入力が、すごく簡単に、良い意味で曖昧に進められるんです。何というか、本当に自分で建物を施工している感覚に近いものがあったんですね。実際、ガイドに沿って進めていったら、本当にすぐバーチャル建築ができてしまって、“これは使える!”と思ったのです」。

比較した他社の体験版と異なり、ARCHICADのそれが30日間は保存や出力が自由だったことも大きかった、と吉田氏は笑う。事務所を開設したばかりで時間に余裕があった吉田氏は、試用版をじっくり試し、さらにタイミングよく仙台で開催されたグラフィソフト主催のユーザセミナーにも参加してパワーユーザの話を聞き、デモンストレーションを見た上で導入を決定。そして、受注した物件の実施設計段階から、早くもその本格運用を開始したのである。

クリニック全景パース
クリニック全景パース
クリニックの内観写真(受付・待合室)
クリニックの内観写真(受付・待合室)
クリニックの内観パース(受付・待合室)

導入当初から作業効率が大きく向上

「最初に受注した物件は、100坪ほどのRC造のクリニック。ARCHICADは導入したてだったので、さすがに基本計画は従来のやり方で進めました。手描きスケッチして打合せ、施主の了承を得たら2次元CADも使って練り込んで….。しかし、実施設計に入る時、思いきってARCHICADを投入したのです」。実施設計からの3次元化というイレギュラーな導入だったが、ARCHICADは当初から期待以上の力を発揮した。上手くいかなければ2次元に戻すつもりだった吉田氏だが、その心配は良い意味で裏切られたのだ。

「とにかく効率的というか、労力が抑えられて作業効率が目に見えて向上しました。使い慣れた2次元以上に早いんです。本当に自分で施工している感じで、建築全体を直感的に把握できるんですよ」。

従来は自身の構想も2次元の図面を通じてしか認識できず、「壁を配置する」といっても実際は線を引くだけだった。しかしARCHICADによる3次元設計では、パソコン内で実際の工事そのままに、基礎を作りスラブを作って、柱を立て、壁を配していく。しかもそれを常時3Dでチェックし、必要なら壁の位置を自由に移動し調整する。このリアルな「施工している」感が、同氏の作業をよりスムーズなものとしたのである。

「以前私がいた設計事務所は、模型での検討を繰り返しながらプランを締めていくのが特徴でした。施主と打合せを重ねながら幾つも模型を作るんです。それでもアイレベルでの検討など半ば想像ですし、室内からの眺めや日照など検証しようがありませんでした。ARCHICADならそれも簡単にできるんです。そのスケールの中に立って確認し検討し、修正できるのですから、作業がスムーズなのは当然でしょう」。もちろんその他の3次元ならではのメリットも、このプロジェクト当初からフルに発揮された。

BIMxによるコミュニケーション
BIMxによるコミュニケーション

3D建築モデルこそが本当の設計図

「たとえばどこでも好きなだけ断面を切れるのは大きいですね。空間や納まりなど、気になる所は断面を切って確認したくなりますが、2Dの場合、基本的に切断面以外の部分はある程度想像するしかありません。ところがARCHICADはそれがありません。納得いくまで切って確かめられるんです」。もちろん納まりは3次元モデルでも即座に確認できるし、1カ所修正すれば当然平・立・断面図の全てに反映され、ミスも手戻りもありえないのである。

「つまり、3次元設計では、コンピュータの中に作った建築モデルが設計図面そのものなんですね。平面図や立面図は、そのモデルの1要素を抜き出しているにすぎません。あるいはモデルへアクセスするための窓口と言うか。これまでの2D図面は建物の一部を代表して表現してはいますが、切断面以外は曖昧にできるようなところがありました。一方、3次元設計のモデルではそうはいきません。だからこそ好きなだけ断面をきれる、とも言えるのですが・・・。そう考えるとARCHICADは、むしろ私たちのような経験を積んだ設計者――建築をトータルに把握して考える熟練者の方がより有効に活用できるのかもしれません」。

現在、吉田氏は盛岡市内で進行中の1,000坪規模の優良再開発ビルの設計を進めている。今回はもちろん、基本計画段階からARCHICADを全面的に活用している。

「ゾーンツールで建物のマスモデルを作って配置やボリュームを検討したり、アウトプットを手描きでチェックした後再び3次元化したり、アナログと3D間を行き来しながら、たたき台となる三次元モデルは1週間ほどでつくりました。この過程を繰り返しながら、施主にはパースだけでなくiPadを使ってBIMxデータも駆使してお見せしたので、これも非常に分かりやすいと好評でしたね」。計画はまだまだこれからが本番だが、チャンスがあればエネルギー評価や数量積算等の機能も活用していきたいと考えている。

「今回のプロジェクトでは、再開発の手続きや申請書類等、設計以外の膨大な資料や作業が必要でしたが、基本1人で対応できました。これもARCHICADによる高度な効率化があったから。まさにARCHICADは小さな事務所ほど大きな導入効果が期待できるのではないでしょうか。決してハードルが高いソフトではありません、皆さんもぜひ挑戦してみてください」

ARCHICADで作成した平面図
ARCHICADで作成した平面図
ARCHICADで作成した断面詳細図
ARCHICADで作成した断面詳細図

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