東芝エレベータ株式会社
建築プロジェクトに設計支援を通じて参画! 生産系との連携を目指す製造メーカーのBIM

東芝エレベータ株式会社

自立式電波塔として世界一の高さを誇る東京スカイツリー®は、昇降行程が国内最長となる業務用エレベーターと、大容量タイプとしては国内最高速の天望シャトルエレベーターが稼働していることでも注目されている。この新鋭機を開発・納入した東芝エレベータは、高度な技術と先進性で知られたエレベーター・エスカレーターメーカーである。BIMの研究にも早くから取組み、昨年9月にはBIM設計用パーツのWebダウンロードサービスを開始。その展開を本格化している。製造業にとってのBIMについて、同社のBIM技術担当の3氏にお話を伺った。

東芝エレベータ株式会社

設立 : 1967年

事業内容 : エレベーター・エスカレーターの開発・設計・製造・据付・販売・メンテナンス・リニューアル工事、ビル・マンション総合管理、その他

代表者 : 代表取締役社長 秋葉慎一郎

所在地 : 東京都品川区

資本金 : 214億772万8千円

HP : http://www.toshiba-elevator.co.jp/

ビルディング事業本部
ビルディング技術部
BIM技術担当
グループ長
谷本樹嘉 氏

ビルディング事業本部
ビルディング技術部
BIM技術担当
グループ長
谷本樹嘉 氏

ビルディング技術部
BIM技術担当
主任
平手和夫 氏

ビルディング技術部
BIM技術担当
主任
平手和夫 氏

ビルディング技術部
BIM技術担当
北條絵美 氏

ビルディング技術部
BIM技術担当
北條絵美 氏

建築業界の顧客を設計協力で支援

「BIM技術グループができたのは2011年10月。つまり設置されて1年弱の若い部署です。しかし、実はその数年前からBIMに関する研究を始めていました」。そう語るのは、このBIM専門部隊を率いるグループ長の谷本樹嘉氏である。エレベーターメーカーとして、最も早くからのBIMへの取組みの1つだった。その最初期から率先して研究に取組んできた平手和夫氏は語る。

「きっかけはCADの3次元化です。もちろん製造メーカーとして製造部門で3次元CADを使っていましたが、実は営業部門等のフロントではゼネコンや設計事務所などのお客様と一緒に仕事をする機会も多く、設計協力のため2次元CADも使っていたのです。この営業支援のためのCAD業務の3次元化をしたかったのです」。通常なら製造部門が使う製造系3次元CADを導入するところだろうが、ゼネコンや設計事務所と図面をやり取りする以上、同じ建築系CADの方が、都合が良いのは当然だ。そこで、平手氏はさらに建築系の調査を進め、その過程でBIMの概念に出会ったのだ。

「せっかく3次元化するなら、将来建築と繋げられるような仕組にしたい、という思いが私たちにもありました。だからこそ、この新しい概念に注目したのです」。こうして始まった平手氏のBIM研究は徐々に社内外の関心を集め、2008年には会社として正式な研究に着手。2010年からは、早くもこの蓄積したノウハウを生かしBIM設計支援等のBIMサービスも開始した。だが、実は当初の目的だった3次元CAD選定はまだ完了していないのだという。

「というより、BIMツールは顧客に合わせて複数製品を使い分けているのです。もちろんどれも私たちが厳しく選び抜いた3次元CADばかりですよ」(平手氏)。その選定では、顧客が使うCADに合わせるため、市場ニーズを最優先。業界トップクラスのシェアを持つ製品だけを候補とし、その上でメーカーが使うCADとしての可能性を持ち、顧客との連携もスムーズなど、さまざまな条件をバランスよく備えた製品が厳選された。そして、そうやって選ばれた選り抜きの1 つがARCHICADだったのだ。

「多くのCADを検証しましたが、特に空間を美しく表現できるのがARCHICADの特徴です。企画検討段階のクリエイティビティを、すごく掻き立ててくれるのです。またプレゼンでインパクトを与えてくれるのもARCHICADですね」(平手氏)。

製造側のメリットと建築側のメリット

こうして複数のBIMツールの検証を進めていた平手氏だが、一方でBIMが単にツールが置き換わるだけのものでないことも分かっていた。問題は『BIMにより自分達の仕事がどう変わるか?』なのである。

「それを知るには、やはり実際にお客様と一緒にBIMで仕事をしてみるしかありません。お客様と直に接しながら、いろんなことを経験しようと考えたのです」。平手氏らはゼネコンや設計事務所のBIM推進担当者と協力し、BIMのトライアル案件に積極的に参加していった。もちろん客先によりBIMの使い方は異なり、求められる設計支援の形もさまざまに変化していった。

「3Dパーツを作るという案件から、既に作成された3D建築モデルをもらい、エレベーターの詳細モデルを作って入れ込む案件まで、柔軟に対応していくことで、私たちがBIMで行うべきことを学んでいったのです」(平手氏)。こうした積み重ねにより、同社のBIM現場の実績は着実に増加し、そして、この蓄積の中から、BIMを通じて同社が目指すべきものも徐々に明確になってきたという。

「エレベーターのような設備は現場でも後工程になることが多く、設計変更等に伴う手戻りが非常に多いものです。しかし、BIM設計協力という形で早い段階から私たちがプロジェクトに参画できれば、自社ノウハウを入れ込んだパーツを使い、専門技術者による精度の高いご提案が可能になります」(谷本氏)。そして、早い段階からBIMを使うことにより寸法も正確に抑えられるし、適正なエレベーター配置を行うことで“後戻り”を減らすことができる。結果として、建築にも大きなメリットを提供できるのだ

「事実、施工レベルでBIMを使った現場では、後戻りのトラブルが減っています。本格的な効果が見えてくるのはこれからですが、普及は間違いないでしょう。近年、実案件のBIMも増えています。いよいよ機が熟してきましたね」(平手氏)。こうした同社のBIMの最新成果が、3Dパーツのダウンロードサービスだ。

次ステップは生産系との連携が課題に

「3Dパーツに対するニーズは当初からとても高く、これにお答えする形で、企画・基本設計向けの標準品パーツ約30ファイルの提供を開始しました」。そう語るのは同サービスを担当する北條絵美氏である。北條氏によれば、同社のパーツは簡易的なディティールと操作のしやすさに加え、同社独自の寸法や適用を超えるとアラートが出るなどのチェック機能を搭載。エレベーターの速度に追随してピットの深さやオーバーヘッド寸法が変わるなど、メーカーとしてのノウハウを実装している。もちろんARCHICADデータのファイルも、他ファイル形式と共にいち早く用意した。

「ARCHICADパーツはGDLでプログラミングするため、それだけにどこまでも深く作り込めるのが大きなポイントです。頑張ればいろいろできるし、きちんとルールを管理できるパーツが造れるのもメーカーにとって大きなメリットです」(平手氏)。実はもっと多くのことも可能だが、BIMのニーズとのバランスを取るためGDLパーツもあえて仕様を落している。この3Dパーツは今後も充実を図っていくが、同様に、前述の設計支援も、引き続き注力していく計画だ。

「とにかくBIMの概念をじっくり浸透させながらさらに準備を整えていきます。次のステップでは、生産系とどう繋いで行くかが大きな課題となりますね。私たちにとって、企画設計から施工、製造まで結びつけてこそBIMは真の威力を発揮します」。そんな谷本氏の言葉に平手氏もうなずく。

「建築業界の多くのお客様と接していると、ARCHICADのニーズを実感します。だからこそ、今後はぜひ私たち製造のニーズにも応えていってほしいですね!」

エレベーターの3Dパーツ
エレベーターの3Dパーツ
エスカレーターの3Dパーツ
エスカレーターの3Dパーツ

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