お話を伺った方々
代表取締役 玉上 貴人さん
山川 七海さん
濵﨑 優子さん
齋藤 大我さん
箱型の大空間を、大掛かりな舞台装置のような内装によってダイナミックでワクワクするような空間へと変えるのが、タカトタマガミデザインの真骨頂。代表の玉上貴人氏が率いる3名のスタッフは、すでに学生時代にBIMに触れた経験をもつ者もおり、就職後すぐからArchicadありきで業務を行っている。
玉上さんがBIMを知ったのは、4〜5年前に友人の建築家から聞いたのが最初だそう。「某ハウスメーカーではBIMを使っていて、住宅1軒の実施設計図なら1〜2日でできるという話を聞いて、実際にデモも見せてもらったんです。
詳細図まで一気に書き上がるのを見て、早めに手つけないと取り残されるなと思いました」。
しっかり使いこなせば時短ができると見込んで導入に至った。Archicadを選んだのは、建築家仲間から、アトリエ系の小規模設計事務所ではArchicadを使っているところが多いと聞いたから。「身近に利用している人がいるという点でも、Archicadは導入しやすかったです」。
実際習熟し日常的に使用しているのは、3名のスタッフたち。最初はそれぞれ悩みながらやっていたが、サポート窓口を駆使することで徐々に使いこなせるようになったそう。タカトタマガミデザインが生み出す空間は、壁が斜めや曲面、多面体など、とても複雑で創造的。初期段階では、複雑な形を作りやすいSketch UpやRhinocerosといったソフトを用い、それをArchicadに移行して3Dモードと2Dモードで見比べながら、確認。次にレンダリングソフトのTwinmotionでカラーのレンダリングを起こし、同時進行で確認しつつ進めるやり方だ。
図面は描かずに「整える」だけ
BIMxで施工者の理解も深まりやすい
複雑な形態をデザインする際、平面、立面、断面図の線を1本1本引いてく描き方には、以前から限界を感じていたという玉上さん。「Archicadの導入で、図面作成が一気に容易になりました。スタート時点で3Dモデルを作れば、おのずと裏で図面ができあがっていくから、いつの間にか終わっているようなところがあります。図面を描くというより『整える』感覚に近いんですよね。
以前は『さあ、次は建具表を描くぞ』という感じだったのが、Archicadだと気付けばできていて、あとは手直しをする程度」。
しかし導入した直後は、思うようにいかないと感じた時期もあったそう。「まずやりたかったのは、3Dモデルで作ったものを簡単に2D図面化すること。全体的な計画は平面的なことから始めるんですが、複雑な形をデザインするときは、3Dモデルから入ります。以前はそれをパッと2D図面に変換できなかったので、Archicadで簡単になるだろうと期待したんです。でも、2D図面化まではできても、それまでやってきたような細かい図面表現が、最初はなかなかうまくいかず苦労しました。でも、慣れれば慣れるほど作業量が圧倒的に減ります。それはこの数年で如実に成果が現れています」。
できあがったものを、BIMxで現場に共有できるようになったのも画期的なことだ。でもそれは、ついこのひと月ほどのことだそう。「すごく便利だから、もっと早く始めればよかったと後悔しています」。複雑な形態を施工者に理解してもらうのは、簡単なことではない。今ではBIMxのリンクを施工者に送り、詳細に形を把握してもらっている。「以前は現場に3Dパースを何枚も張り出し、説明を書き入れて伝えるようなやり方でしたが、なかなか立体的に捉えられないことがありました。BIMxなら、色々な角度から眺めたり断面を切ったりできるので、理解が深まりやすいでしょうね。現場の人たちからは『データが軽くてiPadで見られるのが便利』という声を聞いています」。
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ESR東扇島ディストリビューションセンター KLÜBB Lounge
ESR東扇島ディストリビューションセンターKLÜBB Lounge EASTの展開図。
「物流」のメタファーとして大小様々な断片が飛び交い、集積する様を表現したデザイン。
Archicadの導入時、包絡処理やハッチングがうまくできず苦労した。
このプロジェクトの展開図作成を通じて操作の習得が進んだことで、その後のプロジェクトでは飛躍的に作図スピードが向上した。
特徴的な意匠を多く手掛けるタカトタマガミデザインにとって、Archicadの導入により最も効率化が図れたのは展開図の作成だった。
図面の一元管理や反映の早さが
デザインの深化と正確性をバックアップ
玉上さんは、図面管理のしやすさにもArchicadの強みを感じている。「以前はバラバラに図面を起こし、最後にpdfをまとめて提出していたのですが、Archicadなら図面が何100枚あっても1つのデータで管理できます。途中で図面が増えたり減ったりしても、ナンバリングや集計がしやすいんです。以前は図面が1つ増えるたびに図面リストを書き換えたりして、管理にもひと手間必要だったので、今は解放されてすごく楽ですね。導入以前に使っていた図面も、ぺたりと貼り付ければリストに加えられるのも便利です」。
チームで取り組む事務所のやり方にも、Archicadは利便性を発揮している。「うちは1つの物件の図面作成を、みんなで協力しながらやるスタイル。
Archicadなら分担がしやすく、変更が生じたら全員が即把握できるのも大きなメリットです」。3Dモデルと2D図面を別々に作っていたころは、ある図面は修正できていても、別の図面はそのまま、など辻褄があわなくなるトラブルも起きがちだった。Archicadは全員で1つのデータを触るから、齟齬が生じないのは安心材料だ。
スタッフはみなBIMネイティブ世代。2D CADを使用した実務経験はなく、最初からBIMで実務をスタートした為、比較対象がないが、業務の中で利便性を実感しているようだ。山川さんはこう話す。「玉上さんと3Dモデルを見ながら打ち合わせをし、その場で手直ししたら勝手に図面に反映されているので、図面修正や寸法の入れ直しがしやすいです。打ち合わせが終わると同時に図面修正も終わっている感じで、効率的ですね。クライアントへの提出も、前日の夜に作業して翌朝には図面を出せるので、ギリギリまでデザインを詰められるのがありがたいです」。
濵﨑さんは、今後はBIMxを社内でのスタディの段階から使用したいと考えているそう。「玉上さんにスタディをチェックしてもらうときにiPadにBIMxをインストールしておけば、現場などの事務所外でも場所を選ばずできるという面で、やり取りが今より楽になるのではないかと思っています」。
ESR弥富木曽岬ディストリビューションセンター KLÜBB Lounge
当時はArchicadに不慣れだった為、Archicadで作成した断面図にVectorworksで加筆して矩計図を作成していた。
ゼネコン、サブコンもBIMを活用していたことから、複雑な意匠と構造、設備との整合性の確認、検討をスムーズに行うことができた。
「ESR弥富木曽岬ディストリビューションセンター」のラウンジデザインの内観パース。Archicadを初めて導入するきっかけとなったプロジェクトで、柱状節理という岩石の柱が隆起した、自然現象をモチーフに。
複雑な形状も、Archicadなら最初から3Dモデルを描くことができる。
竣工したラウンジの写真。非日常的な空間によってコミュニケーションを誘発することを意図したデザイン。段状の造作はひとつひとつ座り心地の違う座席群となり、高所へと登る好奇心を駆り立てる。
©ESR LTD.(写真:吉村昌也)
3Dモデリングからスタート
図面は描かずに「整える」だけ
設計の最初期段階からArchicadを使い、ざっくりした面積割りやゾーニングができることは、コストコントロールの上でもポテンシャルが大きいと感じている。いちいち図面を描いて面積を算出していたときに比べ、かなり効率的になったと玉上さん。「うちのデザインは施工技術的に難しい部分があるので、早い段階から施工会社を味方につけるように努力しているんです。
Archicadで立面図や平面図をパッと出せるようになったことで、面積も拾いやすいし、施工会社側も以前より概算見積もりを出しやすくなったんじゃないでしょうか。こちらも、明確に数値で示せれば見積額の交渉に説得力が増しますね」。
代表の玉上さん。
ただ、多様な機能の使いこなしについては、まだ取り組むべき課題がありそうだ。「本来は、Archicad内で面積の算出もできると思うのですが、まだ使い切こなせていないところもあって……。実は、仕上げ表の作成にもまだExcelを使っていて、Archicadとは連動させていなかったり。3Dモデリング上の情報管理で、いつの間にか仕上げ表ができている、というところまでもっていけたらいいんですが」。
玉上さんは、まわりの建築家仲間にも積極的にBIM導入を勧めているそう。そのせいか意匠設計事務所でもArchicadを導入する仲間が徐々に増えてきているという。それは、気軽に使い方の相談や意見交換ができる環境づくりにもつながっている。「仲間が増えればお互いの労働環境の底上げにつながりますし、仕事上の連携を図れる可能性が高まり、いい事ずくめなんですよ」。逆に今困ってることは、図面制作の外注先がまだついてこられていないこと。以前依頼していた人がArchicadを使えないため継続できなくなり、内製することが増えてきているという。
「早くArchicadをみんなが当たり前に扱えるようになってくれるとありがたいですね」。
進行中の自社ビル建て替え計画にもArchicadを活用している。
都内某オフィス。造作家具の設計にArchicadを活用したことで大量の家具図作成、数量管理の効率化が図れた。
2015年に韓国の出版社から出版されたタカトタマガミデザインの作品集。ヨーロッパ向けに販売され、書店では平積みにされていたそう。
東京都観光汽船「エメラルダス」号の模型。漫画家 松本零士氏がデザインした船の内装デザインを、タカトタマガミデザインが手掛けた。
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