綜企画設計
執行役員、企画営業・工務統括本部本部長
佐野 照久さん
綜企画設計
企画営業・工務統括本部
プロポーザル支援室
丁 潔如さん
綜企画設計
千葉支店主任
下田 辰徳さん
綜企画設計
埼玉支店
水野 裕介さん
グラフィソフトジャパン
代表取締役副社長
トロム ぺーテル
グラフィソフトジャパン
カスタマーサクセス ディレクター
飯田 貴
グラフィソフトジャパン
カスタマーサクセス
シニアBIMコンサルタント
村田 晶規
佐野:当社ではArchicadを2013年の大阪支店を皮切りに、支店ごとに導入してまいりました。導入初期の段階では、BIMの活用を前提にする時代に即した意匠設計提案力と発注者へのわかりやすい説明、概算の数量の算出といったテーマを掲げました。2015年にはマニュアルをつくって社内に周知したこともあり、Archicadを導入する支店や社員が増えていって、2018年からは各支店にBIMマネージャーを配置するようになりました。
村田:3年ほど前に下田さんが本社のBIMマネージャーを担当するということで東京に来られたのですが、私もちょうどそのころから綜企画設計を担当させていただくことになって、月に一回の勉強会や各支店からのご質問への対応などのサポート活動を行っています。
下田:2018年にBIMマネージャーに着任してから、BIMを実務で使っていくにあたって、どこの会社でも行っていると思うのですが、テンプレートを整備してきました。
丁:私は本社の企画営業本部で主にプロポーザルの業務に携わっているのですが、企画用にテンプレートをカスタマイズして、簡略化させて使っています。
村田:下田さんがかなり内容の濃いテンプレートをつくられていたので、それが企画〜基本設計〜実施設計と流れていくなかで、それぞれの段階に必要な情報がきちんと含まれているかどうかなど、ご相談を受けてアドバイスさせていただいています。
トロム:綜企画設計におけるArchicad導入の流れは、すばらしい成功事例だと思いますね。BIMを用いて会社の設計基盤を構築するという方針に基づいて、BIMマネージャーというポジションの重要性を認識していただいていることがスムーズな導入につながったのではないでしょうか。
村田:下田さんが作成した勉強会の資料を、東京のArchicadのユーザーグループにご提供いただいて、他のユーザーの方々にも参考にしていただいていますね。
下田:グラフィソフトのサイトでもハウツーが公開されているのですが、まだまだ数は少ないので、情報を公開していただける会社やユーザーの方が増えて、ネットワークが盛り上がっていくといいですね。
飯田:ソフトウェアとともにノウハウを提供していくことが当社の指針になっています。人材教育という意味では、BIMマネージャーだけでなく、BIM Classesというトレーニングメニューを提供しています。BIMを通して社内だけでなく、社外のユーザーとコミュニケートするためのエッセンスを短期間で吸収していただくようなプログラムです。私も村田もトロムもそうですが、もともと建築設計を行っていたバックボーンがあり、そういったスタッフがコンテンツを考えているのが他社のメニューとの違いだと思うので、自信を持って受講していただきたいですね。
「OPEN BIM」と「チームワーク」
丁:個々の案件の企画業務では、ほぼ最初からArchicadを使っていますね。ゾーニングプランなどから各支店の方々と一緒に検討して、モデルからパースをつくって提案書に組み込んでいきます。そのあとにつくるヒアリング資料にも利用し、クライアントにわかりやすく説明するために活用しています。
佐野:プロポーザルに向けた企画の仕事のスパンというのがだいたい2〜3週間くらいなんです。短期間でたくさんの情報を仕入れて、さまざまなかたちに変換させることができるのがBIMの最大のメリットなので、プロポーザルではほぼ100%使用しています。
水野:私は入社して3年目なのですが、川口市の青木会館という多目的施設の設計にArchicadを導入し、プロポーザルから基本設計、実施設計と足かけ2年にわたって活用しています。最初にどこまでBIMを使うかというのは全然決めていなかったのですが、まだまだ社内でも実施設計にBIMを使う事例は少なかったので、せっかくだから最後まで使ってみようということになりました。Archicadを使うと三次元で建築を思考することができるというか、納まりなどについても立体的な考え方がしやすいんですね。法規のチェックについてもサポートツールが豊富にあったので、最後までBIMで進めることができました。
また、この案件では日影に関する問題で近隣の方々に説明を行う必要があったのですが、Archicadで住民の方々にもわかりやすい動画資料をつくることができました。
下田:ちなみに青木会館の設備設計事務所が設備用のBIMソフト(Rebro)を導入されていて、初期の段階から機械設備についてBIMモデルをつくり込んでいただいて、納まりの精度をかなり上げることができました。これまでの社内の事例でも一番と言っていいくらいの成功例だと思います。
トロム:我々は「OPEN BIM」という考え方に基づいて、国内外を問わずオープンなかたちで、さまざまなソフトと連携することに注力しているのですが、今回の案件でArchicadのワークフローを試していただいた率直な感想はいかがですか。
水野:今回の設備設計事務所の方はRebroを使われていたのですが、Archicadとデータの互換性などの問題はありませんでした。天井点検口や梁のスリーブなどのモデルをつくっていただいて、それをカウントするなど、便利に使うことができました。
村田:青木会館のデータを拝見したのですが、きれいにまとまっていて、すべての図面情報がArchicadのなかに含まれていて、容易に取り出すことができるようになっていました。そしてRebroやSS7(構造計算ソフト)も統合されていて、全体でチェックできるという意味では、かなり完成度の高いプロジェクトだと思います。
飯田:外部の設備設計事務所の会社とやり取りする事例は、ゼネコンでは多いのですが、設計事務所ではまだまだ少ないですから、その意味でも価値のあるプロジェクトですね。
佐野:当社としては、実施設計の一つ手前の基本設計まではBIMを使っていこうと。一つの支店で受注する業務の半分くらいまでは、基本設計はBIMで取り組もうという目標で動いています。
下田:Archicadにチームワークという機能があるのですが、それを一番活用して、支店との連携ができているのがプロポーザルの企画業務ですね。
丁:そうですね。企画営業本部は全社全支店のプロポーザルを支援する部署なので、ほとんどの案件において、はじめから支店の方と協力して、チームワークで作業を進めています。例えば一つプランをつくったら、遠くの支店でも同じデータを触って、検討することができるんです。
下田:この機能はBIMマネージャーによる管理体制に向いていると思います。本社とともにチームワークで作業すれば、わざわざデータをやりとりしなくてもいいわけです。なにか不具合があっても、同じデータに触れて、同時進行で原因を探っていくことができます。
丁:作業の分担という意味でも大きいですね。例えばモデルの担当、敷地の担当、パースの担当といったかたちで、効率的な業務が可能になっています。
トロム:おっしゃっていただいたように建築はチームでつくっていくものだということで、我々もArchicadのチームワーク機能や、それを支えるBIMcloudというサーバー製品を提供しています。それによって、チームによる作業のワークフローをしっかり支えていきたいと考えています。
より直感的なツールをめざして
丁:今、取り組んでいるプロポーザルでは正方形や円形のモデルをよく扱っているのですが、これからはBIMでもっと自由に、いろいろな形を簡単につくれるようになったらいいなと思います。
水野:「Archicad 24」からは構造の解析やアセスメントも可能になっているので、むしろ一人でも建築を考えられるようになっているんですね。例えば我々から構造設計者に構造のアイディアを提案できるんじゃないか。Archicadにサポートしてもらって、トータルで建築を考えることで、設計をよりよいものにしていきたいと思います。
飯田:「Archicad 24」は開発コンセプトとして、「OPEN BIM:外部との連携」と「統合デザイン」というものを掲げています。設計の初期のフェーズでは設計者自身で集中して取り組み、後半に専門業者が関わってくるような段階では「OPEN BIM」でデータをやりとりするといったかたちで、両面から作業を進めることができるんです。
下田:先ごろ国土交通省からプラトー(PLATEAU:3D都市モデルの整備・オープンデータ化プロジェクト)が発表されましたが、今後は設計者側だけでなく、各自治体など発注者側がBIMを前提に設計を進める動きが加速していくのではないかと期待しています。ArchicadにはBIMxというデータ書き出しのソフトがありますが、よりウェブに特化して簡易的にデータを発注者と共有できるような仕組みが整えられるといいですね。
トロム:まさしく今、日本国内のBIMの状況が変わりつつあります。国土交通省の建築BIM推進会議でも具体的なロードマップが提示されており、BIMの義務化、標準化が進んでいくことが想定されるので、可能な限りのサポートをベンダーとして行っていきたいですね。
水野:“夢”の話かもしれませんが、BIMにAIが組み込まれて、大きなプロジェクターに映して、みんなでそれを見ながら話しかけるとデータや図面が変化していくような、そんな仕組みができるといいですね。
佐野:設計という仕事は技術者一人ひとりの能力に頼るところが大きいのですが、AIでエラーをチェックして、ここはちょっとダメだよとか、こういう考え方もありますよ、みたいに声をかけてくれるようになると可能性が広がってきますね。今、一番求めているのはAIで法規チェックができないかということです。
飯田:Archicadの階段ツールなどには、そのような提案機能が入っていますね。また、法規制のチェックについても、いくつかソリューションを用意していますが、近い将来もっと充実したツールを提供できると思うので、楽しみにしていてください。
トロム:建築法規には解釈や判断の問題があって、アルゴリズム化するのが難しいのですが、BIMの時代における新しい技術に法律が近づいてくると一気に自動化が進むのではないでしょうか。ツールであることをまったく意識せず、当たり前のように直感的に扱えるような世界をめざしたいと思います。
グラフィソフトはスローガンとして「Building Together」という言葉を掲げているのですが、綜企画設計の皆さんとわれわれとの関係が、まさにこのスローガンを表わしていると思っています。今後も皆さんの要望に応える製品やサービスを提供して、カスタマーサクセスを実現してまいりますので、よろしくお願いします。
Archicadの詳細情報はカタログをご覧ください
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