有限会社佐藤建築構造設計事務所<p class='sato-structure-2023 case-studies-caption'></p>
BIM は設計精度を上げるコミュニケーションツール。
3D化することで意思疎通がしやすく、思った通りの設計・施工が実現。

有限会社佐藤建築構造設計事務所

お話を伺った方々 世界基準に追い付くため、BIM導入を決意 2013年、千葉県内の建築関係者とともに海外視察へ赴いた佐藤建築構造設計事務所の取締役、佐藤暢彦氏(以下、佐藤氏)。現地ではすでに設計に3Dモデルが使われている […]

有限会社佐藤建築構造設計事務所

  • 所在地 千葉県 船橋市
  • 代表者 佐藤 暢彦
  • 設立 2004年
  • 業務内容
    構造設計業務・耐震診断業務・建物構造解析業務

お話を伺った方々

取締役
構造設計一級建築士
佐藤 暢彦 氏


主任
一級建築士
阿部 裕太朗 氏

世界基準に追い付くため、BIM導入を決意

2013年、千葉県内の建築関係者とともに海外視察へ赴いた佐藤建築構造設計事務所の取締役、佐藤暢彦氏(以下、佐藤氏)。現地ではすでに設計に3Dモデルが使われている様子を見学してきた。その後、日本に戻り「日本の若手が2DCADだけ触っていては世界基準に追い付かない。日本でも当たり前のようにBIMが使えるようにならなくては後れをとってしまうし、この先の担い手確保にも影響する」と考え、前向きにBIM導入を検討するようになる。

その頃、日本では大手ゼネコンを筆頭に少しずつBIM導入が進んでいた。同社では、2016年にグラフィソフトにコンタクトを取り、2018年にIT導入補助金を使って導入に至った。導入してからの2~3年は操作に戸惑うこともあったというが、5年経過した2023年現在は問題なく業務に溶け込み、BIMの活用範囲は拡大中だ。

確認申請の書類づくりが1.5倍にスピードアップ

導入から5年が経過し、阿部裕太朗氏(以下、阿部氏)は「いまではArchicadを使って図面を描いた方が、圧倒的に仕事が早いです」と話し、代表の佐藤氏も同様に業務スピードアップを強調している。その速さの理由は、2DCADでは得られない整合性の高さにあった。

従来の構造設計では、伏図・軸組図・詳細図などの複数の図面が相関しており、それぞれ別々のファイルを操作する必要があった。そのため、中には整合性が取れていないケースがあったり、あるいは修正作業を行うときにミスが発生しやすかったりと、人間が作業するかぎりヒューマンエラーは避けられない状況にあった。いくら熟練した設計者だったとしても間違いは少なからずありミス防止対策は必須だった。

しかし、BIMを導入したことで、この心配は一切なくなった。「一か所修正すれば基本的にはすべての図面に反映されます。整合性という部分では、明らかに間違いがなくなりました」と阿部氏は話す。また佐藤氏は効率化できたポイントとして書類づくりの容易さについて言及した。「BIMで3Dモデルを立ち上げたあと、必要な部分を切り出せば図面が成立するんです。確認申請用の書類づくりが1.5倍ほど早くなり、業務負担が少なくなりました」と、BIMを使うことでの業務効率化・省力化について実感している。このように、同社ではBIMの恩恵を受けた建築設計の未来を垣間見る。

「BIMに慣れるまで戸惑うこともありましたが、いまではBIMを使って設計した方が早いです」(佐藤氏)

BIMは設計精度を上げるコミュニケーションツール

同社では、主に意匠設計事務所からの依頼で、構造設計を担当するケースが多い。このときの業務フローには3つのステップがある。


【構造設計事務所が2D図面をBIM化するステップ】
  1. 意匠設計事務所からデザインした建物の2D図面を受け取る。
  2. 国内標準仕様「ST-Bridge」を介してから、一貫構造計算ソフトウェア「Super Build/SS7」に入力して構造計算を行う。
  3. 計算結果から座標情報を取得し、「Archicad」を使用してBIM化する。

この一連の流れを経て、早い段階からBIMを使って3Dモデル化することが、設計精度を上げるためのポイントだ。視覚的にわかりやすい図面となることで、設計業務における円滑なコミュニケーションツールとして一翼を担う。


ユニオンシステム株式会社による、「SS7からArchicadへの差分変換」の
デモンストレーションはこちら

■ ST-Bridgeからデータを引き継いでArchicadで設計する流れ

このような複雑な配筋も、3Dモデルにすることで干渉チェックが容易にできる。

仮定断面で意匠設計と構造設計をつなぐ

「構造設計事務所が普段から使っているシステムのST-Bridgeと、Super Build/SS7さえあれば、BIM化をするのは簡単です」と話す阿部氏。

「BIMを使用している意匠設計者からは、基本設計段階で構造との認識の違いがなくせること、BIMを使用していない意匠設計者からは、建物の躯体が3Dで見られるので建物のボリュームイメージがわきやすい」と佐藤氏。

また、意匠設計と構造設計は、お互いの得意分野を補完しあう関係性ではあるが、時折、「デザインを優先すると構造的に成り立たない」といった大きな課題に直面することもある。そういった場合、プロジェクトの早い段階から構造設計が建物の構造計画に参画し、BIMを使って問題点を可視化することで改善点が分かりやすくなる。
例えば「柱スパンが大きいため、柱を設けるか、梁せいが大きくなる」といった、デザインに関わる要望も、基本計画の段階で効果的に伝えることができるコミュニケーションツールとして貢献する。

施主へのプレゼンテーションにも3Dが有効

また、BIMのコミュニケーションツールとしての役割は、施主に向けてもメリットが多い。これまで同社では意匠設計が決めた内容が反映された図面を受け取って、社内で構造設計をすることが仕事だった。

しかし今では、阿部氏が施主との打合せに出席して、直接ディスカッションを重ねていくスタイルに進化。施主の目の前で3Dモデルを見せながら梁のかかり方などを視覚的に解説する。そうすることで、意匠設計と構造設計のそれぞれの課題を解決し、スピーディに施主の合意まで仰げるようになった。

阿部氏は述べる。「どうしても意匠設計の担当者と構造設計の私が考えていることが2D図面だけでは合致していないことがあるんです。そうなると、後々“思っていたことと違う”というトラブルになりかねません。その点、3Dモデルを見ながら打合せをすることはトラブル回避につながり助けられています」。

さらに、佐藤氏は補足する。「BIMを使うことで施主は建物を2回建てる経験ができます。1回目はBIM上で、そして2回目で実際の建物が建ちます。ここでも“思っていたことと違う”というトラブルを防ぐために、BIMを使って予め検討できることがすごく大切なのです」。

構造設計の醍醐味と、BIM活用の工夫

長年にわたり、構造設計に携わる佐藤氏に仕事の魅力を尋ねると、このように話してくれた。「解析結果に見合ったディテール(接合部)をつくっていくことが構造設計の醍醐味。そこに気づき始めると仕事の面白みがぐんと増します」と佐藤氏。構造ディテールの設計は、建物が耐久性や構造的な安定だけでなく、意匠や使用者のニーズにも適していることを確保するために重要だ。

同社では、このディテールに重点を置き、構造設計で頻繁に使うディテールのオブジェクトをArchicad内でプログラミングし、オリジナルで作成している。
例えば、鉄骨の梁をつなぐ継手にはスプライスプレートやボルトが多数あり、Archicadのデフォルトツールを使ってモデル化するには多大な時間を要してしまうため、「継手リスト」を作成。設計者が入力の値を変更すれば、梁のサイズに合わせて、ボルトの本数も任意で設定できるようにプログラミングをしている。そうすることで、描画の表現力アップに寄与する。

「この継手リストは、すべてのArchicadユーザーにとって必要な機能ではないですが、構造設計をする私たちには欠かせません。このスキルは『GDLリファレンスガイド』を見ながら習得しました」と阿部氏は述べる。

グラフィソフトから提供された「GDLリファレンスガイド」。操作方法を解読しながら、継手部材のプログラミングを実施した

■ 継手リスト

継手オブジェクトを作成することで、今までの2D図面的な書き方を継承しつつ、3Dでも確認でき、さらにオブジェクトを配置することで、リストにも使用できるようになり省力化も図れた

千葉県で実施している、BIM推進の舞台裏とは

同社のBIM導入と同じタイミングで「千葉県BIM推進協議会」も結成となり、佐藤氏は協議会の立ち上げから2期連続で議長を務め、現在も現議長・河原氏をサポートする立場で活動中だ。現在、千葉県BIM推進協議会の会員数は約60名、特に若手が多く、阿部氏は構造部会長という立場で、さらなるBIM普及を急ぐ。県内の建築に携わる30代から40代のメンバーが中心となり、会社の垣根を超えた横のつながりで情報交換会や勉強会を開催し、設計業務のスキルアップに努めている。

協議会はその名の通り、千葉県内の建築業界におけるBIM推進に加え、県の公共工事においてBIM活用を進めるべく、発注時に設定する、納品のデータ形式やその後のデータ使用方法についてや、BIM活用によって得られる工事全体のコスト削減、建設費と設計料におけるソフトのランニングコスト及びフロントローディングなど、千葉県職員が参画することで、公共工事における発注者側の環境構築の一翼を担っている。現在千葉県では、公共工事の入札条件にBIM活用は条件ではないが、同社では請け負ったプロジェクトの成果物に3Dモデルを添付してはBIMの魅力を拡大していくなど、新しい試みも積極的に行っている。

「ある擁壁の改修工事では、2Dでは表現しにくい高低差のある敷地形状でしたので、3Dモデル化しました。発注担当者からも、設備関係の干渉が分かりやすいと好評でした。成果物の要件にはなかったとしても、わかりやすく伝える方法を選んでこのようにしています」と阿部氏。

佐藤氏は、「この先もずっと2Dで設計するわけにはいかないと思います。私たちの一つひとつの活動が重なってBIMが要件となった公共工事発注の起爆剤になるといい」と希望を語った。

千葉県BIM推進協議会のメンバーと一緒に

同社の新規受注はホームページからの問い合わせだ。
BIM活用をしていることが分かるファーストビジュアルも選ばれる理由だと推測している
https://www.sato-structure-design.com/

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