REGION STUDIES Inc.
空き家活用の新しい事業スキーム。 ヤドカリプロジェクトをARCHICADで実践!

REGION STUDIES Inc.

浜松市のREGION STUDIESは、建築家 白坂隆之介氏が主宰するアトリエ系設計事務所である。白坂氏は東京の著名建築事務所に8年間勤務後、2016年に独立。郷里の浜松に、独立後の処女作となる事務所兼用の自邸を構えた。建築家の自邸プロジェクトは珍しくないが、同氏が「ヤドカリプロジェクト」と呼ぶそれは単なる作品ではなく、日本の住宅事情を踏まえたまったく新しい事業スキームの実践でもある。ARCHICAD をフル活用して進められた同プロジェクトについて白坂氏に伺った。

REGION STUDIES Inc.

所在地 : 静岡県浜松市

代表者 : 代表取締役 白坂隆之介

設立 : 2016年

事業内容 : 建築の調査分析・企画・設計・監理業務、都市計画に関わる調査分析・企画・設計・監理業務、建築・都市に関わる原稿・出版物の企画・執筆・制作業務、不動産の企画・仲介・売買・斡旋・賃貸管理、及びコンサルティング業務

webサイト : http://www.region-studies.co.jp

新事業スキーム「ヤドカリプロジェクト」

REGION STUDIES Inc.
代表取締役/一級建築士
白坂隆之介 氏

REGION STUDIES Inc. 代表取締役/一級建築士 白坂隆之介 氏

「ようこそ、いらっしゃいました。坂が急だったでしょう?」。そういって白坂氏は笑顔を浮かべた。浜松駅から車で15分、急な坂を登った高台の閑静な住宅街に、完成したばかりの白坂氏の事務所兼自邸があった。平屋一戸建ての建物は白とシルバーに統一され、そのシンプルで洗練された外観が、古びた住宅街にもしっとり馴染んでいる。

「どうぞお入りください」。白坂氏は外壁の一部にみえる半透明の玄関ドアをゆっくりとスライドさせた。促されるまま足を踏み入れると、いきなり視界が拡がる。梁あらわし天井のワンルーム空間は、右手の土間作りの事務所スペースと左手フローリングの居間スペースが境なくつながり、さらに南側の壁一面の大開口から望める広い庭も一体化し、明るく落ちついた空間を生み出している。

「住み始めてまだ1カ月ですが、長期優良住宅並の仕様だけに非常に温かく、住み心地は最高です。解放感があって気持ち良いと、妻もいってくれるんですよ。実はそろそろ次の土地を探し始めるタイミングなんですが、住み心地が良いので、つい腰が重くなってしまって」と苦笑いする。

実はこの建物は20年以上も空き家だった民家を買い取り、大規模なスケルトン・リフォームを施した物件。しかも、同氏はいずれこれを高値で転売し、その利益でまた別の空き家を購入しリノベーションして移ろうと考えている。このサイクルをヤドカリのように繰返し、転売益を上げながら次々と作品を生み出していく──これが白坂氏の新事業スキーム「ヤドカリプロジェクト」である。

「前の事務所に勤めていた時は私も東京で借家住まいし、家賃を払い続けていました。そのトータルを計算してみたら相当な金額で、“もったいない”と感じたんです。次は持ち家と思いましたが資金はなく、いっそ空き家だったら安く買えるのでは?と考えました」。少子高齢化の進展と共にわが国の空き家は増え続けており、地方では社会問題となるほどなのはご存知だろう。年月とともに一般的な木造住宅の不動産価値は急激に下がっていき、築20年以上の建物ともなると評価額0円というケースも珍しくない。

「そういう空き家を探して安く手に入れるのは、私たちにも十分可能です。これを建築士の視点を活かしながら全面改修していくことで、高い付加価値を加えられれば、高く転売して儲けを出すこともできるわけです。さらにその儲けでまた空き家を買って改修して──と続けていけば、単品の作品ではなく連作型プロジェクトとして話題性もありますし、空き家問題の解消にも寄与できるでしょう。そこで“ヤドカリプロジェクト”と名付けて進めていくことにしたのです」

改修案
改修案
リノベーション前後の平面図の比較
リノベーション前後の平面図の比較
「がんばり坂の家」内観(Photo:淺川 敏)
「がんばり坂の家」内観(Photo:淺川 敏)

転売額に反映できる付加価値を

今回のプロジェクトでポイントとなったのは、転売額に反映できる付加価値を高めていくことだが、ありがちな「見栄えだけ」のリフォームをしてサジ加減で値付けするのではなく、住宅性能評価や価格査定プログラムといった公的な指標を利用することを白坂氏は重視した。

「まず土台や骨組みが腐っていると耐震性が確保できず、査定も上がりませんが、それを確認するには骨組み状態までバラす必要があります。通常のリフォームでは行わないそこまで踏み込んで改修することで、初めてどこが腐っているか分かるわけです。実際、この家もそこまでやることで浴室周りが腐っていることが判明し、きちんと補修できました」。この大規模なスケルトン・リフォームをベースに、白坂氏は物件の付加価値を高めるための設計を進めていった。たとえば住宅性能面においては、国内でも前例のない劣化対策等級3を取得し、その他にも耐震等級3相当や省エネ性能は長期優良住宅相当、維持管理対策等級3相当などを実現。各種の補助金も利用していった。実は東京時代、主に大型物件を手がけていた白坂氏にとって、住宅も木造もリノベーションも補助金申請も初めての経験だったが、そんな同氏を力強く支援したのが ARCHICAD によるBIM設計だった。

「ARCHICAD は東京時代から使っており、図面もきっちり描けるようになって便利なのは分かっていたので、独立後もそのまま使用していました。今回は特にリノベーションフィルタ等の機能も用いてスムーズに進められましたね」。解体数量を出すため、取壊し前の既存状態から全部入力してモデリングを行い、その上でどこを解体して新規に入れて──という風に進めていった。特にリノベーション前後の図面を並べて表現することにより、解体範囲や残置範囲をわかりやすく施工者に伝えられたのが非常に大きかったという。

「BIMxもさくさく動くし、施工者はもちろん、建築関係者や一般の発注者さんに向けてのプロジェクト説明でも、これを見せると皆さんびっくりされますね。“なんていうソフト?”と聞かれることもしばしばで、本当に興味を持っていただけたし、内容についても確実に理解してもらえたという実感があります」

着手前の現地
着手前の現地
計画モデル
計画モデル

ARCHICAD はヤドカリプロジェクトの強力な武器

このようなコミュニケーションツールとしての威力に加え、転売を前提にしたプロジェクトだけに、ARCHICAD ならではの数量拾い出しや積算にかかわる作業のやり易さも大きな力となった。そろそろ次の空き家物件も探し始めたいという白坂氏だが、次回は改修費用を中心にさらなるコストダウンを図っていく計画だという。

「もちろん、一度骨組み状態まで解体し腐っている箇所を取り除くやり方は変えませんが、安全性や性能を確保しつつもう少しコスト抑えたやり方を考えたいですね」。

このような白坂氏のヤドカリプロジェクトの取組みには、地元やその他の建築関連業者からの注目も集まり始めている。実際、2018年2月に開催されたヤドカリプロジェクトのセミナーにも、県内外から多くの業者・一般客が参加した。もちろん白坂氏自身も、自分以外の設計者やオーナーがヤドカリプロジェクトに関心を持って取組んでくれることを大いに歓迎している。

「このプロジェクトを通じ、建築士による設計の付加価値をきちんと評価し、そのスキルをお金に替えていける仕組みを広めていきたいと考えています。リノベーションフィルタが使いやすく、数量拾いも得意な ARCHICAD は、ヤドカリプロジェクトにとっても強力な武器になっていると思います」

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