工学部 空間デザイン学科 建築デザイン研究室 4年生 奥長真生人 氏
工学部 空間デザイン学科 教授/博士(学術) 宮岸幸正 氏
工学部 空間デザイン学科 建築デザイン研究室 教授 田代 純 氏
工学部 空間デザイン学科 教授/博士(工学) 福原和則 氏
より自由な店づくりの集合体を提案
「卒業研究審査会は空間デザイン学科開設以来の名物行事です。学内展示後、学科の教員全員による2度の審査で優秀作が選ばれます。全員提出なのは当然ですが、審査後行う学外展や卒業研究作品集にも全作品が出展され、掲載されるのが特徴ですね」。建築デザイン研究室の田代教授の言葉どおり、今年も4期生約80名の研究成果が提出された。しかも、工学と芸術学の融合を謳う学科だけに、学生たちの研究テーマは建築・インテリア・プロダクト・ヴィジュアルと幅広い分野に渡り、その全てが同じ土俵上で競い合うのである。だが、実は建築系の学生が審査会を勝ち抜くのは至難の技とも言われている。同学科の福原教授は語る。
「専任の先生も非常勤の先生もすべてイーヴンの立場で審査し、投票で決めるので、いろんな分野の先生方の支持を幅広く集めなければ勝てません。そうなると”実物”を展示できて分かりやすく、見た目のインパクトも強いプロダクトやヴィジュアル分野が優位なのです。建築の場合、図面や複雑な模型は理解され難いし、インパクトも弱く、例年苦戦していました。ところが今年は奥長君が総合2位を獲り、特別審査員賞と学生が選ぶ最優秀賞まで獲得したのです。作品の質はもちろん表現力も優れていたという証明でしょう」。この快挙を側面から力強くバックアップしたのが、実はARCHICADとBIMxだったのである。奥長氏自身に受賞作品を紹介してもらおう。
「出展したのは”ヤドリギビルド”という商業施設のプランですが、これは完成した建物としての提案ではありません。躯体だけのまっさらな状態のスペースで提供し、店の人たち自身が自由に店を作っていくという提案です。いろんなお店が宿っていくからヤドリギビルドなんですよ」。まず躯体を組み上げただけの状態で提供し、入居店舗はそこにスペースを選んで床材や壁材等をクルマで運び込み、自分たちの手で自由に店を作りあげるのだ。決められた形のない、より自由な店づくりの集合体というべき商業施設であり、建物だけでなくその工法まで含めた提案なのである。
「お仕着せでなく、よりフリーに簡単にどんどん作って行きたい、という思いが発想の出発点です。ただ、構想した建物のフロアがすごく多くなり、連結して考えようとすると図面では把握するのが大変でした。まして他人に伝わるよう表現するのは非常に難しくて……。そこでその頃アルバイト先で使い始めていたARCHICADを使おう、と考えたんです」(奥長氏)。
構想段階からARCHICADで企画設計
「ARCHICADは、最初に触れた時から、純粋に”こんな素晴らしいソフトがあったのか!”と感じました。とにかく早いし、平面図では把握し難いヤドリギビルドのイメージも簡単かつ的確に形にできる。私自身も構想を把握しやすく、作品の表現もすごく豊かになると思ったんです」(奥長氏)。この”確信”が、彼に触れたばかりの3次元CADで卒業制作を行う、という冒険を促した。まさに大胆な選択だが、これが後に審査会の結果を大きく左右することになった。前述の通り、建築系学生にとっては専門外の先生方に内容を伝えることが高いハードルだったが、そこでARCHICADが大きな威力を発揮したのである。
「奥長君も一次審査では、専門外の先生方には基本的な空間構成さえ全く伝えられてませんでした。そこで2次審査のプレゼンでアニメーションを使おう、と指導したんです」(田代教授)。2次審査までわずか1週間しかなかったが、奥長氏は躊躇なくARCHICADとBIMxで初のアニメ制作に挑んだ。
「これも独学でしたが、BIMxはモデルさえあればすぐアニメーションに移行でき意外なほど簡単で。模型で伝えきれなかった部分を全てアニメやパースで表現し、分かりやすく印象的に伝えられたんです」。もちろん図面や模型に加えパースやアニメーションまで作ったためスケジュールはきわめてタイトなものとなったが、これもARCHICADの圧倒的なスピードが解決した。
「図面制作ひとつとっても、ARCHICADが無かったらすごく厳しいことになっていたでしょうし、受賞は難しかったかもしれません。本当にいろいろな意味で”使ってよかった!”という実感があります」(奥長氏)
ARCHICADによる新しい建築教育
さまざまな経緯からARCHICADをフル活用することになった奥長氏だが、これは単なる幸運などではない。奥長氏が学ぶ空間デザイン学科では早くから3DCADの研究を始めており、ARCHICADの具体的な導入計画も進行中だったのである。同科を率いる学科長の宮岸教授は語る。
「建築に限らず幅広く展開する当科では、そのためもあってPhotoshopやillustratorに2次元CAD、CGまで学生に使わせています。その流れのなか、今後の課題として3DCAD教育の必要も意識していました。ヨーロッパの工科大学等で広くARCHICADが使われていると知り、また何度かARCHICADのデモを見せてもらうちに、何らかの形でARCHICADを導入したいと考えていたんです。そして、いよいよ2013年度カリキュラムで、新たなCAD演習のメインツールとして、正式に選定しました」。
もちろん正式導入である以上、学科長が独断で製品を選べるわけではない。実は同科では、3DCAD選定にあたり大手設計事務所やゼネコン設計部に幅広いリサーチを行っていた。
「その結果、産業界ではARCHICADがほぼメインで使われていると分かったんです。しかも特に現場で使われ、現場にどんどん広がっている。現場では、使えるモノでなければ絶対に使ってもらえません。つまりARCHICADはそれほど実効性が高い。これが決め手となりました」(福原教授)。
現在同学科では、このARCHICADによる新たなCAD演習を、建築教育の中でどのように位置づけ、どのような授業にすべきかの検討を進めている。
「CADの主流がARCHICADのようなオブジェクト型になっていくのは間違いないでしょう。ただし、建築を知らない1年生にこれをどう教えるかは難しい問題です。従来はまず図面の書き方からでしたが、オブジェクト型のCADを使うにはある程度建築への理解も必要ですから、そこをどうするか。ARCHICAD導入は私たちにとっても大きな挑戦なのです」(田代教授)。
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