日本都市設計株式会社
設計・施工でBIMをフル活用し「札幌モデル」を構築

日本都市設計株式会社

札幌市に本社を構え、主な仕事は、北海道内の総合計画・庁舎・会館、展示施設、保健・福祉・医療施設、宿泊・保養・観光、教育施設、スポーツ施設、給食センター、集合住宅などの建築設計、および既存建物調査やランドスケープ計画、インテリア計画など。建築の総合コンサルを担う。

日本都市設計株式会社

http://www.nihontoshi.co.jp/

所在地 北海道 札幌市 中央区 北3 条⻄28-2-1サンビル 3階

代表取締役 武部 幸紀

創 業 1969年

業務内容
建築物の設計及び管理
建築の総合コンサル
上記に附帯する一切の業務

日本都市設計株式会社 代表取締役 武部 幸紀さん
日本都市設計株式会社 宇野洋平さん

「発注者の意識を変えるために、建築業界から変えていく」そんな思いで、社内だけにとどまらず、建設、設備の工事会社と連携してBIMの導入を推し進める人物がいる。日本都市設計株式会社の代表取締役・武部幸紀さんだ。日本都市設計は、1969年に東京に創設。6年後、札幌オリンピックを機に、故郷である札幌市に本社を移転した。手がけている設計は、病院や学校、1万㎡を超える総合体育館など、公共建築が約6割を占める。

武部さんが創業者の父親から会社を引き継ぎ代表取締役に就任したのは、2007年のこと。その後、BIMの導入を決めたのは2014年のことだ。「それまでは、二次元CADで図面を描いていました。二次元CADは手書きと同じで、修正があると一枚一枚関係書類を修正していく必要があります。そうすると、修正モレといった人為的なミスが生じるリスクが高くなるのです。そういう図面の不整合をなくす手段として、BIMに着目しました。

BIMを使うようになってから、これまでA1サイズで百ページを超える膨大な図面のデータを、ひとつのモデルとして管理できるようになりました」数あるBIMソフトの中でもArchicadを選んだのは、当時いた全社員による多数決。直感的で使いやすい操作性と互換性の高さが決め手となった。
「BIMを導入することで、社員全員が一つのデータを使い同時に作業ができるようになったのは、社員の働き方にとってもメリットが大きかったと思います」

設計の質を落とさずに、効率的に利益率を上げるためには、社員は最大40名。「それが、ひとり一人の社員に向き合える人数」と、武部さん。

社内全員がBIMを使えるようになることで、描ける夢

BIMを導入するときに、武部さんが決めたルールが1つだけある。それは「社内で設計に使うソフトはArchicadのみ」。
「年齢も経験値もバラバラなので、浸透するまでには時間もコストも膨大にかかりましたが、混在したら前に進まないので」と、武部さん。日本では、無料で使える二次元CADもあるため、現在も多くの企業がCADソフトにお金をかけることに抵抗感があるという。「フリーソフトには文句は言えないけれど、有料になればその分、操作性や作業性などの付加価値が付きます。もちろん、そこに目的や価値を見出せなければ使う必要はないのですが……」武部さんが多額の投資をしてもBIMを使って見たい世界とは、設計会社、施工会社、設備会社が一体となり、設計から施工までシームレスに建物を作り、民間の大規模な建築工事を請け負えるようになることだ。

その背景には、地元北海道での激しい受注競争があった。「現在、道内の建築工事受注高の割合は、道内の企業とスーパーゼネコンを含む道外企業とで拮抗しています。スーパーゼネコンさんが設計も施工も一気通貫で進める一方、私たちは設計会社が作った図面を施工・設備会社が改めて施工図に作り直しているのが現状です。
だから、私たちがBIMで作った図面をブラッシュアップする形で施工・設備会社がそのまま使えるようになれば、スーパーゼネコンさんと同じようにシームレスに、より効率的に、作業を進めることができるようになると考えました」

初年度の社内BIM 導入コスト
年間の維持費

それぞれの価格は導入当時のもの。コストは約2,0 0 0 万円。設計社員全員
のパソコンにArchicad を導入した。

日本都市設計の代表建築。左から、札幌市立札幌みなみの杜高等支援学校、アインファーマシーズ本社、釧路根室圏総合体育館。

設計・施工・設備が連携してBIM をフル活用する「札幌モデル」

左 / 「北海道建設新聞(202 2 年5 月10 日付)」より抜粋。
① BIM 上で、仮設の足場まわりを検証中。
②以前は、施工者が現場で寸法を決めていた柱の根元を固定
するための図面。こうした作業も、事前にB I M で設計していく。

連携会社とフルB I M で取り組む
新社屋の挑戦

強い気持ちで決断したArchicadの導入だったが、しばらくの間は、使い慣れた二次元CADに戻ってしまう社員もいたりして「本当にBIM作業に完全移行できるのだろうかと不安が拭えなかった」と、武部さん。
兆しが見えたのは、Archicadのチームワーク機能が使えるようになってから。
「クラウドを使うようになってから、複数の人がどこにいても一つのモデルを同時に作業できるようになりました。これで社員全員が同じデータを使って、同じタイミングで、今やるべきことに向き合うことができる。一歩前進だな、と」
そうして次に取り組んだトライアルプロジェクトが、本社屋の建て替えだ。その規模S造3階建て延べ約1,000㎡。
「このプロジェクトでは、われわれがつくった設計BIMデータを施工・設備の会社が引き継ぎ、施工段階でもBIMをフル活用してもらいます」協力してくれる施工会社は、道内では最大手のゼネコンである岩田地崎建設ら。
他会社同士が連携してひとつのBIMデータを最後まで活用していくのは、まだ日本ではほとんど実現されていない事例だ。
「わかりやすく言うと、BIMcloud上を現場に見立て、設計・施工・設備が同時に作業しながら完成を目指していくんです。
例えば今までは、言葉と平面図と手書きのスケッチを使って現場で確認していた仮設の足場を組み立てる作業なんかも、BIM上で足場を立て事前に問題点を確認します。現場に入りながら問題点を改修するというこれまでのやり方だと、その瞬間に現場が止まってしまう。だから、通常の工事よりも短期間で効率的に作業を進めることができるようになります。
また設備関係の人は、建築が先行して色々決まってから配管の設計などをしていましたが、BIMクラウドでは同時に考えていくことができるので、決めるべきものを早く決めることができ、変更が効くのでコストを抑えることもできるようになる、というわけです」

武部さんと、新社屋を担当する企画設計部主任の宇野洋平さん(左)。
「BIMの設計に慣れるまで、最初はグラフィソフトのトレーニングプログラムを2〜3年受講したり、グラフィソフトの営業担当者に指導を受けたりしました」と宇野さん。

働き方改革につながったフルB I M の導入。
次のステップは、他社とのルールづくり

武部さんはこれまでも、つねに損益分岐点を計算しながら、社員の働く環境が良くなるために利益を還元する形で投資をしてきた。
「いつでも、結果が出なければ元に戻す、という覚悟をもってトライしています。今回も、社員全員がArchicad以外は使わないという厳しいルールを決めて取り組みましたが、社内にBIMを浸透させるまでに5〜6年かかりました。おかげで誰かが忙しくても他の人は手伝えない、という状況はなくなりました。困っている人がいたら、集中的にみんなでサポートすることができるようになったんです」
武部さんが下したこの決断によって、21年には、北海道発注の道営集合住宅設計業務のプロポーザルも獲得した。これは、北海道初のBIMを含めたデジタル活用の試行業務だ。それと同時に、新社屋建設において地元の建設会社である岩田地崎建設に協力を依頼し、“札幌モデル”という壮大な事業計画を立てたことも、良い結果につながった。「設計と施工を一体でやるといっても、これまでのように会社ごとに分離されているままだと、結局どこかに負担がかかってしまいます。でもそれもBIMcloudを使えば、複数人が同時に作業できるので、施工に必要な情報は施工会社がアップグレードしていくことができます。
細かな調整は、Teamsというチャットツールを使って、BIM画面を見ながら都度相談して決めています」次の課題は、施工段階で求められるLOD(モデル詳細度のあり方)を、設計・施工がお互いに共有していくこと。「データを施工会社に渡した時点で、権限は施工会社へ。そういう細かな仕組みづくりも、多くの情報を一度にやり取りできるBIMだからこそ必要です」BIMソフトのポテンシャルでいうと、今はまだ6割くらいしか活用できていない、と考える武部さん。ここから120%使い切れる仕組みをつくるのが自分の役割だという。「すでに、発注者側との新しい土壌づくりは始まっています。
新社屋のトライアルプロジェクトで見えた課題をひとつずつ解決していきながら、竣工予定の翌年1月には、“札幌モデル”を完成形にしたいですね」

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