意匠部長
前田 和久 氏
建築設計部 意匠
赤尾 亮平 氏
建築設計部 意匠
米岡 真奈美 氏
ARCHICADは分かりやすいBIMソフト
日本国土開発ではホストコンピュータの時代から設計のIT化を実践してきた経験をベースに、3年前からBIMへの取り組みを開始した。「2,30年前にも同じようなソフトウェアがありましたが、実用に堪えるものではありませんでした。常々、2DCADで図面を描くだけはなく、3Dを利用した設計を考えてました。」と建築設計部意匠部長の前田氏は語る。B I Mを取り組み始めた当初は、他のBIMソフトを使っておりARCHICADの導入は、2010年。その決め手は、「レイヤ」の概念を持っていることと「操作性」と同氏はいう。「ARCHICADは2次元CADに近い感覚で操作ができ、いい意味でARCHICADは初期段階でルーズに入力できます。そのため2次元CADに慣れた設計者がBIMに移行しやすいソフトだと思います。」同氏と設計の赤尾氏は、グラフィソフト社のトレーニングに参加し、2人で共通の認識を持った。 また、2010年入社の建築設計部意匠担当の米岡氏も、ARCHICADをよく使っている一人である。「ARCHICADは自由度が高く、他の設計者が作ったBIMモデルも扱いやすいと感じています。操作でミスした時に、意味が分からないエラーが出て困ることもありません。」と使い易さを説明する。 同社ではARCHICADの導入講習を社内で独自に行っている他、グラフィソフト社が開催するスキルアップセミナーを利用して、BIM活用技術の向上を図っている。その結果、東京本社では10人の意匠設計者のうち5人がARCHICADを使いこなすまでになった。
花火や空調機器、看板までをBIMで景観検討
BIMの導入から3年が経過した同社では、大小合わせ既に約50件ものプロジェクトにBIMを使うまでになった。集合住宅や病院、工場、学校の外構部や、施工現場における収まりなど、その用途は、3次元設計の強みを生かせるところに重点を置いているという。「ARCHICADのBIMモデルは、クライアントに提案する段階から使用しています。初期段階から図面に加えBIMモデルを利用することは、クライアントのコンセンサスを取るうえでも大いに役立ちます。」と赤尾氏は語る。
東京の下町に建設するマンションでは、眺望の検討にB I M モデルを活用した。「マンションから花火がどの位置で、どのように見えるのかをB I Mモデルで確認しました。言葉だけでなく、実際の見え方をシミュレーションしたデータがあることによって、顧客の購買意欲はいっそう高まりますね。」(米岡氏)
更には工場建屋の設計では、来客が建物を見上げた時のデザイン検討にBIMを使用している。センスよくデザインされた建物も、空調の室外機が見えてしまうと興ざめしてしまう。そこで空調機をBIMパーツ化し、空調機が見えない位置を決めたという。2次元の平面図と立面図だけでは、正確な検討が難しい作業でもBIMモデルを使うことで建物価値を上げることが可能だ。
「レイヤ」を利用した施工計画や設計案の比較
また同社では設計だけでなく、施工段階にもBIMを活用している。「鉄筋コンクリート製の螺旋状の階段などは複雑な形をしており、施工担当者に従来の2次元図面だけではうまく立体形状を表現することが困難でした。そこで様々な角度から見えるようにBIMモデルを作ることで、立体形状を正確に伝え、工事を効率的に進めることができました。現場からも非常に分かり易いと好評でした。」と現場経験を持つ赤尾氏は説明する。 また既存の建物を解体し、新しい基礎と免震装置との配置検討する複雑な改修工事では、ARCHICADのレイヤが威力を発揮するという。「この改修工事では、既存の基礎と新しい基礎、そして新設する免震装置を、施工段階に応じたレイヤでBIMモデルを作りました。レイヤをON/OFFすることで、時系列に沿って地中梁などの基礎構造が3次元で確認することができます。またこれに加え、周辺の状況や地盤を掘削できる範囲などもビジュアルに検討することが可能となりました。」(米岡氏)
これらの計画は、BIMならではの強みを生かしたものであり、導入から短期間でBIMのビジュアルな検討を簡単に行えるのがARCHICADの特徴と言える。
2次元設計からBIMへの移行がスムーズに
更には、2次元CADからBIMへの移行がしやすいのもARCHICADの特徴だという。「ARCHICADを使うことによって、BIMでモデリングやパース作成などプレゼンテーション用の資料を作成し、図面の仕上げは使い慣れた2次元CADを使うという方法を採りながら、徐々にBIM化を進めていくことも簡単にできます」(前田部長)。
BIM導入の直後は、2次元CADでの設計で蓄積された図面資産も有効に活用したいこともある。同社も、まさにこの方法でBIM導入を図っている。BIMに取り組む上で、他部署との連携などを考えることが多く見受けられるが、BIMモデルの特徴を活かし、できるところから始めることが重要だと同氏は語る。
更なるステップアップ
「設計の初期段階ではこれまで、空調や照明などのエネルギー消費量は経験値で表していました。ARCHICAD 16のエネルギー解析機能は、設計中のBIMモデルから即座にエネルギー消費量やCO2排出量の概算データを数値として出力してくれるので、企画段階でも設計案を定量的に比較するのに役立ちそうです」(前田部長)。
これまでは、BIMの「出来るところから」を推進してきたが、今後はBIMの本来の特徴である属性データを活かした運用も充実したいという。「次の目標は、確認申請をBIMで行うことです。せっかくのBIMデータですので、平面図、立面図などの図面との連携を図っていきたいと思います」(米岡氏)。日本国土開発のBIM活用は、ARCHICADや関連ソフトの進化とともに、さらに充実していきそうだ。
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