株式会社メドックス 代表取締役社長 中田利夫 氏
設計部 佐藤 憲一 氏
設計部 大塚 祐司 氏
進歩し続ける医療分野のニーズに応える
「私たちのお客様は病院、特に民間の病院が中心です。民間の病院にとってはまず病院そのものを継続していくことが重要課題。私たちも常にそのことを意識して設計しなければなりません」。メドックスを率いる建築家・中田利夫氏はそう語る。
「いかに効率よくその病院の利用者の満足度を高め、病院として長く継続していけるような建物を作るか。それが私たちのミッションとなります」。特に進歩の速い医療分野では、その目まぐるしい変化に合わせ、施設自体も変わっていく必要がある。そしてそれはその施工段階にも共通するテーマなのだ。実際、同社が手がけるものでも、大規模物件では竣工までに5~6年かかることも多い。そうなるとプロジェクト途中で設計変更となることもしばしばで、当然、これにも的確に対応しなければならない。
「素早く設計変更に対応するのはもちろん、その内容を分かりやすく施主に伝え、理解してもらわなければ先に進めません。医師の方々はじめ病院には理解の早い方が多くいらっしゃいますが、それでも図面から形状を読み取れる人は多くありません。そこで重要になるのが、変更に強く、見やすく分かりやすく伝えられる3D ツールの活用です」。
2004年頃、同社はある 3DCAD を導入した。これはいわば試験導入だったため、その使用機会は限られていたが、数年後には本格的な3次元設計への取組みも開始された。そしてこの時、設計者たちがみずから選んだのが ARCHICADだった。当時を知る設計部の佐藤憲一氏は語る。
「あの頃すでに私たちは高機能CG ソフト“CINEMA 4D” でパースを作っていました。だから 3DCAD 選定にあたっては使い勝手の良さはもちろん、この CINEMA 4D との連携を重視しました。すると答はすぐ出ました。ARCHICAD とCINEMA 4D の連動はとにかく圧倒的でした」。
結果的に乗り換えという形になったが、ARCHICAD による3次元設計の導入はスムーズに進み、早い段階から確実な導入メリットを生み出し、徐々に同社の設計実務に浸透していった。そして、その流れを決定的なものとしたのが、BIMx の登場だった。設計部の大塚祐司氏は語る。
「私自身は ARCHICAD で初めて3DCAD に触れたのですが、思ったより分かりやすくてすぐに馴染めました。そして、さらに“ARCHICAD は凄く使えるな!” と実感させてくれたのが BIMx でした」。その言葉通り、ARCHICAD による基本設計に BIMx によるプレゼンテーションが加わって、同社の新しい、強力な設計提案スタイルが確立されたのである。
BIMx が 3D 活用の流れを加速
「現状は、ARCHICAD や BIMx の活用は、基本設計からプレゼンまでと割りきっています。ARCHICAD なら実施設計もできるし、その方が効率的なのは理解していますが、当社では何千平米の大型案件も数名で作業するため、実施設計までBIM モデルを運用することは、容易ではありません。第一、現状でも十分効果が上がっていますからね」(佐藤氏)。
多くの場合、メドックスの基本設計は、中田氏が描いたスケッチを元に ARCHICAD で3D モデルを立ち上げることから始まる。この段階でモデルをどこまで作り込むかは案件の内容とスケジュール、モデルの使いかた次第だ。たとえばロビーの辺りまで作って終わりにしたり、基本設計の打合せ用の簡易なモデルだけを作るなど、案件ごと、お客様ごとに異なるのである。
「2D 図面だけで進める案件もありますが、今では半分以上の案件で 3D を使っています。そして、この 3D 活用の流れを加速させたのがBIMx でした」(大塚氏)。
病院への提案や打合せでは、大人数へのプラン説明がどうしても必要だ。つまり、内科や外科など多くの診療科に総務や会計等々、実際に施設を使う方たちへプランを伝え、理解してもらうのだ。それにはやはり図面だけでは難しい。当初、佐藤氏らは CINEMA 4D で作ったパースと図面を併用していたが、一方向の絵でしかないパース1枚では足りず、結局、視点を変えながら複数枚作ることが多かった。
「何カットも作るなら3D モデルにして好きなだけ見てもらえばいい、と考えたのです。そこで知合いのデザイナーに作ってもらった軽量3Dモデルを使ってみるとこれがすごく好評で。コンペもバンバン取れて“これだ!”と」(佐藤氏)。だが、この手法にも弱点はあった。軽量3Dモデルの制作は外注のためコストがかかるのだ。しかも、修正や変更が発生すれば、そこでまた手間と時間が必要になるのである。
「プレゼンにも非常に効果的だったし、何とか社内で作れないか。そう考えていた時に知ったのが BIMx でした」(佐藤氏)
「分かりやすく伝えること」の重要さ
こうして確立された同社のプレゼン手法は、ARCHICAD と BIMx による内製に外注も駆使して多彩なビジュアライゼーションを生成。これを用途に合わせて使い分けることで最大限の効果を発揮させている。内外観とも社内で作れて修正や変更にも強い BIMx は、病院職員等への説明や打合せに用い、インパクトが必要なコンペでは専門家に外注するのが基本である。
「もちろん BIMx も説明や打合せだけでなくコンペにも使います。BIMx で内観プランを見せながら“弊社ではこうして職員の方にも分かりやすく説明します”と話しています」(大塚氏)。実際に施設を使う職員の要望をうまく設計に反映させるのは、発注者にとっても重要な課題だから、コンペの席ではこれも自社の大きなアピールポイントとなるのだという。
「最近はとりあえず最初に 3D を立ち上げ、モデル検討しながら練り上げていく設計ツール的な使い方もしています。実際、BIMx で見ると意外なほど発見があって凄く便利ですよ。ミスも減るし、品質向上にも繋がります」(佐藤氏)。さらにこの分野ならではの ARCHICAD活用法として佐藤氏が挙げたのが、面積の自動算出だ。医療施設の設計では有効面積の届出が必要で、室別面積等も全て算出する。従来は図面から拾いだして計算していたが、ARCHICAD によりこれも自動化されたのである。地味なポイントだが、設計変更の多い病院施設を扱う同社にとって非常に大きなメリットだった。さまざまな意味で ARCHICAD は同社になくてはならない設計ツールとなっているのである。
「厳しい状況に置かれた保険制度のもと、日本の医療はいかにコストを絞っていくかが重要な課題となっています。医療施設も将来はベッド数を減らす方向も考慮しなければならないでしょう。こうしたことを医師に伝えるのは大変ですし、“分かりやすく伝える”ことはますます重要になっていくでしょう。その意味で ARCHICADにも大いに期待しています」(中田氏)。
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