株式会社LIXIL 営業カンパニー
ビルプロジェクト統括部 ビル営業部
ビル営業開発G SET
課長
西村雅雄 氏
ビルプロジェクト統括部 ビル営業部
プロセス改善G
ビルシステム企画1チーム
主査
鬼村隆寛 氏
設計者の日々の業務に寄り添い高度な技術提案で建築図作成を支援
LIXILは、住生活グループ(現 LIXILグループ)の5社(トステム、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリア)が統合されて生まれた業界最大手の建材・住宅設備機器メーカーである。旧社名はLIXIL製品のブランド名として使われ、このうちカーテンウォールやビル用アルミサッシの営業を担当するのが、今回「E-SHAPE Window」のBIMパーツを開発した西村氏と鬼村氏のビルプロジェクト統括部だ。
「カーテンウォールやビル用サッシの分野では、カタログ掲載の規格品を選んでもらうような営業ができません。むしろ“こういうデザインのカーテンウォールがほしい”という設計者の要望に応え、実際に形にしていく仕事なのです」(西村氏)。そのため彼らは、プロジェクトの初期段階から設計事務所やゼネコン設計部と深く関わっていく。設計者がアイデアを形にする前にカーテンウォールや窓へのニーズを引き出し、自社製品に反映させて具体的なプランとして提案する。いわば設計者の設計業務に寄り添い、カーテンウォールや窓のプロとして技術支援していくのである。
「そのため、私たちは設計者の作業に深く踏み込んで関わることが多いのですが、2年ほど前から多くの方々に同じような悩みを聞かされる機会が増えました。それがBIMパーツに対するご要望です」(西村氏)。
建築業界においてBIMへ向かう流れが本格化し、ゼネコン設計部や大手建築設計事務所によるBIM活用の動きが活発化していた頃のことである。3次元CADを使い始めた設計者から、標準パーツに対する改善要求が強まったのだ。もちろん西村氏はCADベンダーの社員ではないし、それは“お門違い”の要望にほかならない。そもそも西村氏自身、当時はBIMに関する知識さえほとんどなかった。だが、多くの設計者の声がその背中を強く押したのである。
「“LIXILならもっと使いやすいBIMパーツが作れるはず”と言われ続けるうちに、“これは何とかお応えしなければ”という気持ちになったのです。そこで鬼村に声をかけました。“やってみよう”と」(西村氏)。
設計者の思考や設計の流れに即した設計者のためのBIMパーツを
その挑戦はまずBIMへの理解から始まった。基礎知識をじっくり学び、あらためてBIMパーツへの顧客の要望を聞いて回ったのである。そして見えてきたものは、既存のBIMパーツが「CADベンダーの視点で作られたもの」だということだった。そのため、実際に使う設計者の思考や設計作業への理解が不足し、操作や機能も建築図作成における実務の流れに十分沿っているとはいえなかった。元来、設計者とともに活動してきた西村氏だけに、設計者たちの不自由が痛いほど伝わってきたのである。
「設計者は、ビルの窓の設計で窓単体をデザインすることはありません。建物全体のバランスを見て、検討しながら作るのが一般的です。ですから全体の設計が進めば、 それに合わせて窓パーツも見直すのが当然です。しかし標準パーツの窓では、その当り前が困難だったのです」(鬼村氏)。
このような使い勝手の悪さを無くし、設計者の思考や設計作業の流れに即して3次元設計を進められる、新しい窓のBIMパーツを創ること。これが西村氏たちの目標となった。まずはビル系サッシ製品から人気の高意匠商品「E-SHAPE Window」を選び、これをBIMパーツ化していくことを決めた。問題はどのBIMソフトをプラットフォームに選ぶかだ。西村氏らは設計者やCADベンダーにヒアリングを重ね、業界に広く普及した2つのBIMソフトに絞り込んで検討を進めていった。そして、最終的に選択したのがARCHICADだったのである。
「設計に組み込んだパーツの形状を後から自由に変えていくなど、簡単に編集できるのはもちろん、バックグラウンドで自動計算させることもしたかったのです。BIMなら当然の機能だと思うのですが、これがなかなかの難題でした。実際にそこまでしようとすると、どうしてもARCHICADのGDL形式でないと難しいという判断になりました」(鬼村氏)。こうして2011年4月、西村氏らはグラフィソフト社の支援のもと「E-SHAPE Window」のBIMパーツの開発を開始した。
設計者の思考や設計の流れに即した設計者のためのBIMパーツを
まず西村氏らは、設計者の要望を整理分析し、自分たちが「E-SHAPE Window」のBIMパーツで“実現したいこと”をまとめていった。それを整理してグラフィソフト社のエンジニアに伝え、数週間後にそのフィードバックをもらって再びリクエストを出すという会合を月2~3回ペースで重ね、徐々に「E-SHAPE Window」を形にしていった。
「相当言いたいことを言わせてもらいましたが、ソフトとして根本的に不可能な点を除き、出したリクエストはほぼ完全に実現してもらえましたね」(西村氏)。
2011年10月「E-SHAPE Window BIMパーツ」の第1版が完成し、配布された。それはまさに建築図作成の流れに沿って設計者が自由に窓モデルを作り、編集できる、まったく新しい“設計者のためのBIMパーツ”と呼べるものだった。柔軟なデザイン編集機能はもちろん、豊富なパラメータで自動計算も可能で、サッシやガラスなどのディティールまで忠実に再現されたきわめてリアルなパーツでもあった。
「たとえば外壁とサッシがフラットな連窓はグラフィソフトの標準パーツでは作りにくいですが、E-SHAPE Window BIMパーツなら簡単です。連窓の均等割付けから通り芯に合わせた割付け変更、さらにデザイン変更やパターン登録、登録パターンの一括反映に挿入、削除、分割、統合まで自由自在に編集できます」(西村氏)。
第1版は不測の事態に備えて限られた希望者だけに配布されたが、その反響は西村氏たちの想像を超えていた。トラブル等のクレームはもちろん、使い方等を問う声もなくすべてが絶賛だったのである。
「“使いやすい”、“わかりやすい”のほか、“これをグラフィソフトの標準パーツにして欲しい”という反響がとても多かったですね。BIMパーツとしての使いやすさは期待通りに受け止めてもらえました」(西村氏)。
「グラフィソフトが提供する標準パーツについては、商品に特化しない汎用的な窓としてE-SHAPE Window BIMパーツの良さを反映し、グラフィソフト社と共に 窓のBIMスタンダード を確立していきたいです」(鬼村氏)。
「また、ディティール表現の確かさも評価してもらえましたよ。せっかくBIMモデルを作っても、プレゼン用パースをCGで描き直す例も多いようですが、“これならBIMモデルでそのままプレゼンできるね”とも言ってもらえたのです」(西村氏)。
この好評を受けて、西村氏らはすでに第二弾の「E-SHAPE カーテンウォール」の制作に着手した。2012年内の配布開始を目標に、開発は着々と進行。既にARCHICADユーザの大きな期待も集まっている。
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