Manager Fujimoto
Designer Kikuno
Designer Yamaguchi
7年間で600店以上の美容室を手掛けた実績を持つデザイン・設計・施工を行う会社。それが、株式会社建.LABOだ。
デザイン部マネージャーの藤本祐子さんは、自社の特徴についてこう話す。「弊社は国内トップクラスの店舗数を誇る美容室チェーン店の設計・施工を行っています。物件探しからお引渡しまでをワンストップで対応します」空間のデザインだけでなく、家具のデザインはもちろん、小物、サイン・ロゴなど、デザイン対象も複雑で多岐にわたる。業務では、高いクオリティとスピードの両立が求められる。現場調査から竣工までの期間は、大よそ2ヶ月半程度。その中でデザイン・設計業務にかけられる期間は2週間程度と、驚きの短さ。日々新しい案件が飛び込んでくる。クライアントとの打ち合わせは、チャットでのやりとりがメイン。
これは、スピード出店に対応するためにミニマム化されたコミュニケーションのかたちだ。クライアントとの信頼関係が確立され、進め方が定型化されているからできることだろう。
エントランスの一隅に飾られているTシャツは、ディスプレイのためにデザインされたもの。
オフィスのエントランススペースは楽し気なマリンテイスト。社内のクリエイティブな雰囲気が伝わってくる。
Archicadへの一元化が効率化とコスト削減を可能に
創業時は2次元CADソフトとイラストレーターを用いて設計していたが、出店スピードが加速しあっという間に年間70件ほどに。スタッフも順次増員していく中で、さらなる効率化を目的とし、設計に使用するソフト一元化の必要に迫られた。そこで2017年に、Archicadの導入に至った。
「異なるソフトを使用していると、他の作業者とデータ共有する際に変換や作業が必要ですが、ソフトを統一することでその作業が不要になり、データ共有がとても効率的になりました」と藤本さん。数あるBIMソフトの中からArchicadを選んだ目的は、複数あった。「各種図面(平面図、断面図、立面図など)が自動生成され効率的になります。図面を一枚ずつ修正する手間が減る事は時間短縮にもなりますし、整合性も高められます。また、空間イメージを瞬時に3次元化し表現することができるため、クライアントや施工側との打ち合わせにおいて活躍すると考えました」
BIMxアプリiPhone画面。クライアントが自由に動かして確認できる。
打ち合わせのなかでクライアントのイメージをArchicad上に反映
クライアントへのプレゼンの場で、Archicadのモデリング機能が役立つ。「クライアントと平面図を動かしながら打ち合わせする中で、席数を増やしたらどうなるの?といった要望に対してその場で図面を修正し、Archicad上で空間がどう変わるかまでお見せできるので、とても喜ばれます。こちらとしても、その場でクライアントと相談をしながら決められるので安心です」とデザイナーの山口彩子さん。
美容室は、ファサードやインテリアの美観だけでなく、通りからの店舗内の見え方、店舗に入ったとき受付カウンターがすぐに見えるか、といった多方向からのチェックも大切だ。また、スタッフが店内全体に目配りしやすい配置や、効率的な動線の確保も必要となる。モデリングでチェックすることで、気づかなかった改善点が見えてくることもあるという。「例えば、道路側に大きなFIXガラス窓を設けたいという要望をモデリングで表現した時に、道路から店内の見え方を可視化して検証できました。そのおかげでガラスへの目隠しフィルムをクライアントへ分かりやすく提案することができました」
図面の中で、建材や家具什器、備品などの情報を一元管理できるのもメリット。
建.LABOでは元々展開図に仕上げ材表現を載せていたので、仕上げ材を登録すれば図面や3Dに反映されるしくみがフィットした。整合性を取りやすく、ミスを削減できているという。
Archicadで作成した店舗の内観パース。
ステンレスの光沢も表現できるのでイメージしてもらいやすい。家具やミラーのデザインもトータルで手掛けるので、CGで全体を確認し、クライアントと共有できる。「カメラワークも自在なので、空間全体のなかでどこを見せ場にするかもイメージしやすいです」(菊野さん)
実際の店舗の写真。
竣工時にパースで設定した画角に揃えて撮影。
展開図とパースと連動しているので、修正が発生したときでも手間が少ないのは大きなメリット。
パースも活用した建具や什器の詳細図。デザインした家具が実際店舗空間でどう見えるかをパースで確認できる。
スキルを共有して全員が使いこなし
次なる課題は人材の確保
導入の初期は操作に慣れず、必要最小限の機能の使用にとどまり、わからないことは個人間で教えあっていたという。しかし、より多くの機能をスタッフ全員が使いこなせるよう、社内で月に一度、デザイナーの菊野壮太さんによるレクチャーの時間を設けることに。菊野さんは業務の中でスキルを身につけていき、「3Dを使って立体的にチェックできるとデザイン力が上がる」と感じていたそう。「今後はますます、3Dも織り交ぜた提案が強みになるので、みんなにもっと使いこなせるようになってほしいですね」
今後は積算の機能も活用していきたいという。
「BIMシステム上での積算のメリットは、設計変更により形が変わったり材料を変えたりしたときに、すぐに数量に反映され確認できることです」
品番を仕様一覧に登録することで、施工会社が建材を発注しやすくすることも、今後やっていきたいことだそう。
「施工費が上昇している中で、関連会社の手間を減らすことでコストを抑え、お客さまに還元できたらいいですよね。
平面図で修正した部分をArchicad上で動かしながらチェック。デザイン力が向上し、ミスや手戻りの削減につながると、デザイナーの菊野さんは感じている。
「クライアントへのプレゼン中に、即ご意見を反映して3Dでお見せできるのは便利ですね」
また、施工会社やクライアントにBIMxアプリを活用してもらえれば、寸法の確認などだけではなく3Dやウォークスルーも見られるので、理解が深まりそうです」
案件数が右肩上がりの中、Archicadの使用で効率的にこなせてはいるが、やはり即戦力のある人材の確保も課題となっている。藤本さんは今後、Archicadを学んだ人を採用したいと考えている。
「新卒でArchicadを学んだ方から私たちが得られるものも多そうだという期待がありますし、学生生活の中で身につけたArchicadのスキルを存分に発揮してほしいですね」
デザイナーの山口さんは、クライアントのスピード出店を実現できる自社の仕事に、やりがいを感じていると話す。
「クライアントから信頼を得られている環境で、提案型のデザインができるので、モチベーションが上がります」現在、別業態の案件も増えてきており、デザインの対象はクリニックやフィットネスジムなどにも広がりを見せている。より一層の事業拡大に向けて、Archicadの活用は必要不可欠だ。
Archicadで作成したパース。
完成した店舗の写真。
店舗入口から受付カウンターや待合がどう見えるか、入りやすい雰囲気かをチェック。素材感や壁のアート、サインも張り込め、家具のコーディネートもCG内で完了。
時間短縮の目的で、レンダリングとライティング計画は反映していないが、イメージの共有には十分活用可能。チャットやリモートでの打合せが基本なので、パースがあることでイメージを視覚的に共有できるのは重宝。
レンダリング画像は、日没後の外からの見え方を確認するのにも活用されている。
Archicadの詳細情報はカタログをご覧ください
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