金秀建設株式会社
建築事業本部 建築工事部 執行役員
山内昌茂 氏
金秀建設株式会社
建築事業本部 工務部 係長
大木篤史 氏
金秀建設株式会社
建築事業本部 建築工事部 係長
金城可奈子 氏
全現場の7~8割で施工 BIM を活用
「大手ゼネコンでは設計部門がBIM に取組むケースも多いようですが、当社では最初から施工で使うBIM を目指してきました」。そう語るのは、同社執行役員の山内昌茂氏である。実は山内氏も当初はBIM 導入を設計部門主体に考えていた。設計部がモデルを作り設計を仕上げ、工事部はそのモデルを使おうというわけだ。「しかし、考えてみたらそれでは全く間に合わないんです」と山内氏は苦笑いする。同氏がBIM の用途として構想していたのは、案件の問題点を事前に洗い出したり、施工の前段取りのために行うさまざまなシミュレーションだったのである。BIM 実務を指揮する工務部の大木氏に、そんなBIM 事例を幾つか紹介してもらおう。
「昨年あるホテルの新築計画で、1週間という期限で概算見積を求められました。ところが概算図面が少なく情報不足で造成の収まりも見えず、造成検討が必要でした」。紙図面しかないこの物件を、大木氏らは ARCHICAD でモデリングして造成計画を練り、土量も算出して計画にまとめ1週間で提案にこぎ着けたのである。「紙図面では伝わり難い計画内容を、素早く“目で見て分かる”形にまとめることで、外構関係の見えないコストまで明確化できたわけです」。そう言うと、大木氏は続けてある大型商業施設のBIM 活用事例を紹介してくれた。
「これは歪な形状の敷地が問題の案件です。仮設計画が難しく、明確な施工手順を確立する必要があったんですね。そこで仮設の足場や搬入計画まで詳細に入れ込み、モデリングしていきました」。この時は現場とやりとりしながらの進行だったと大木氏は言う。施工手順が非常に複雑なものとなったため、現場側もどう描いてほしいか明確にイメージを描けないでいた。そこで現場の指示を元に3D モデルを作って提出し、問題点の指示を受けてまたモデリングして返す──というやりとりを重ね、施工計画や鉄骨・外装等の仮設計画を練り上げていった。
「ホテルの概算見積にせよ商業施設の仮設計画にせよ、2D だったら大変な手間だったでしょう」と山内氏は語る。こうした「2D では解決できない現場の問題」を ARCHICAD を用いて3次元的に解決するのが、現在の同社の施工BIM の活用法なのである。「ですから、個々の現場の問題に合わせて、ARCHICAD の使い方も変えていきます。実際にはどんな現場にも問題はあるわけで、ほとんどの現場でBIM を使っています」。そんな大木氏の言葉どおり、今では同社全現場の7~8割が何らかの形でBIM を活用するようになった。では、数カ月でBIM の本格運用を可能にした ARCHICAD は、いかにして選ばれ、どのように使われているのだろうか?
プロの現場で学ぶ ARCHICAD
「BIM の研究は7〜8年前から進めていましたが、実は当初は他社の3次元ソフトを使っていました」(山内氏)。当時、同社は躯体用の他社CAD を使用しており、これとの連携のため同メーカーのBIM ソフトを導入した。しかし、非力なハード等の問題もあって本格的なBIMの展開は難しく、フリーウェアの3D ソフトで簡易なプレゼンテーション用3D モデルを作る程度に留まっていたのである。
「それでも当時三大BIM ソフトと言われていたCAD 製品については、全て試用版を取り寄せて実際に試すなどしていました。そして、その1つが ARCHICAD だったんです」と山内氏は言葉を続ける。しかし、導入にあたっては製品選定とは別の問題があった。BIM を短期間で導入し成果を上げるには、プロフェッショナルによる支援が必要だと考えていたのである。そんな時に同氏が出会ったのが沖縄デジタルビジョン(現・株式会社グローバルBIM)だった。
グローバルBIM は、BIM コンサルからモデリング請負、人材派遣まで、BIM の導入と運用をサポートするBIM のプロフェッショナル集団。特に 施工現場でのBIM 活用に豊富な実績を持つ企業である。「このBIM のプロたちがメインで使っていたのが、ARCHICAD だったのです。このことを知って、私もすぐに採用を決めました。試用版で ARCHICAD の機能の高さは分っていましたし、その使いやすさも承知していたので迷いなく決断できました」(山内氏)。
こうして2016年に ARCHICAD を導入した金秀建設は、グローバルBIM の支援のもとBIM の活用を本格化していった。だが、その運用もまた他にない独特の手法だった。BIM 推進室等の専任部署は設けず、工務部・建築工事部という現場支援部隊の2部門から社員2名を選抜。本業務と兼任する形で ARCHICAD 操作を習得させ、BIM に取り組ませたのである。
「といっても特に習得期間は設けず、最初から実務で学んでもらいました。まず大型物件3つをBIM 対象案件として選び、そのモデリングをグローバルBIM 社に依頼。同時にBIM担当スタッフを2週間ほどグローバルBIM に派遣し、共同入力させたのです」(大木氏)。つまり、ARCHICAD のプロがモデリングするすぐ横で、その技を見ながら学ぼうというのだ。このOJT を経験した建築工事部の金城氏は語る。
「“ここだけやってみて”と最初から部分的に任され、不明な所はその場で質問し教えてもらう形でたっぷり2週間、ARCHICAD 漬けの日々を過ごしました。帰社後も気楽に質問できたので、自らいろいろな機能に触れ、さまざまに応用していけるようになりました」。その背景には ARCHICAD 自体の魅力があると金城氏はいう。「操作していて楽しいんです、ARCHICAD は。平面図を見てもイメージできなかった計画が、ARCHICAD へ入力することで具体的なイメージとして立ち上がっていく。“こうなるのだ”と驚かされることも少なくありません、間違いなく建築の勉強にもなりますね」。
現場員が現場で使いこなす BIM へ
こうして2人のBIM 担当者は、2016年だけで約10物件でBIM を作成し、2017年もすでに8物件のBIM を運用。さらに3件を予定している。しかも、前述の通り積算や現場支援、各種の申請業務などの本業を行いながら、これだけのボリュームのBIM 業務をこなした。金城氏と同じくBIM 実務を担当した神戸氏は語る。
「積算・見積りの期間が1週間しかなかった時などは確かに大変でしたが、通常のスケジュールでそれほど苦労することはありません。施工的な計画や積算の支援を中心に、その物件ごとに明確な目的を持って、必要な部分だけ使うので負担にはならないのです」。実際、神戸氏らが、3D モデルの色や形を完璧に仕上げることはほとんどないという。もしそうしたディティールまで必要な場合は、グローバルBIMに外注するのである。まさに、現場のためのツールに徹することで、金秀建設の施工BIM はわずか2年弱で威力を発揮するようになったのである。だが、山内氏はまだこれからが本番だと言う。
「次は当然、ARCHICAD で施工図まで作成し、現場でBIM を使うことを目標としています。100%のBIM モデルを作れるようになれば、現場員がそれを使って現場で施工計画を立てたり、工事の問題点を見つけるなどでき、活用は一気に広がるでしょう。その意味で、今後は現場へのBIM 教育が一段と重要な課題となります。じっくり取組んでいきたいですね」
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