株式会社 住建設計
ARCHICADによるBIM設計を生かした発想力と提案力でプロポーザルに勝ち続ける

株式会社 住建設計

京都市の住建設計は、建築家 若野豪宏氏が主宰する設計事務所である。その社名から住宅専門と思われがちだが、実は多様なジャンルへ展開しており、たとえば病院等の医療施設から老人ホーム等の福祉施設、教育施設、そして住宅系も広く手がけている。この守備範囲の広さと共に、常に顧客の立場に立った高度な提案力と設計品質には定評がある。そんな同社の躍進の原動力となっている1つが 、ARCHICADを核とするBIM設計の活用である。同社のBIM運用の詳細について、代表の若野氏と原氏に伺った。

株式会社 : 住建設計

所在地 : 京都市下京区

代表者 : 代表取締役 若野豪宏

設立 : 1970年11月

事業内容 : 建築設計及び工事監理、建築の企画コンサルティング、土地相談、耐震診断及び補強設計、建物改修設計、環境設計、まちづくりほか等

webサイト : http://www.jyuken-sekkei.co.jp

株式会社 住建設計 代表取締役 一級建築士 若野豪宏 氏

株式会社 住建設計 代表取締役 一級建築士 若野豪宏 氏

株式会社 住建設計 シニアマネージャー 一級建築士 原 利行 氏

株式会社 住建設計 シニアマネージャー 一級建築士 原 利行 氏

ARCHICAD導入後、民間プロポーザルで連続勝利

「ARCHICADを導入したのは2015年の秋ですが、実は20年前にも一度、使っていたのです」。ARCHICADの導入経緯を尋ねると、代表の若野氏から驚きの発言が飛び出した。「当時はBIMの概念などなく、3Dパースを作成するために導入したんです。それなりに使いましたが、当社にはオーバースペックでした。使える人が辞めてそれきり忘れていました。しかし近年BIM活用の実績を目にする機会が増え、改めて導入検討を始めたんです。京都はBIMの普及が遅れ気味ですが、だからこそ早く導入して地域のトップランナーを目指そうと考えました」。むろんBIMソフトは迷うまでもなく ARCHICADを選定した。実は前述の件とは別に、同社のシニアマネージャーである原氏が、以前の事務所でARCHICADを使い最初期のBIM試行案件も経験していたのである。

「前の事務所での3D導入時も、各社製品を比べてARCHICADを選びました。最も将来性豊かな製品だと感じたんですね。だから当事務所でも迷わず ARCHICAD を推しました」。こうして住建設計では、一気に5本もの ARCHICAD を導入することを決める。もちろん原氏が ARCHICAD ユーザーだったことは、同社にとって導入への大きな安心材料となったが、それでも長年2.5次元CADを使い続けてきただけに、勇気のいる決断だったはずだ。だからこそ同社の3次元化は断固たる姿勢で進められた。若野代表みずから「導入する以上、必ずメインで使ってもらう。次プロジェクトから使おう」と宣言し導入したのである。

「他所でよく聞いていたんです、3D CADを導入したのにベテランが億劫がって使わず、そのままになってしまった例とか……。それだけは避けたかったので」。幸い若いスタッフが多い同社ではBIMという新技術への抵抗感も少なく、原氏のサポートもあってARCHICADへの移行はきわめてスムーズに進んでいった。

「1年半後には所員みんなが使い、問題なく業務が流れるようになりました。今では、基本設計やプレゼンまで、基本全てをARCHICADで行っています」。原氏の言葉どおり、ARCHICADがフル稼働するようになってそれほどの年月が経ったわけではない。しかし、その導入効果はすでにはっきり現われているという。

「特に計画段階やプレゼンの品質とスピードが大きく向上し、提案力が強化されました。最近は2~3社で競うプロポーザル案件が多いのですが、ARCHICAD導入以降ほとんど負けていません。しかもお客様の満足度もすごく高くて……その代表例の一つが、特別養護老人ホーム“きはだの郷”というプロポ案件です」(原氏)

3度にわたり断られた常識破りの提案

2018年2月に竣工した「特別養護老人ホーム きはだの郷」(木津川市)は、特別養護老人ホーム100名、ショートステイ20名、デイサービス25名を定員とする総合高齢者福祉施設である。延べ面積は約5,000㎡と特養施設としてはややコンパクトだが、8棟に分かれた木造平屋の建物を集落のように配置した分棟式という、他に例のないユニークな建築が注目されている。

「実は元々は鉄骨3階建ての他社案で、決定しかけていた案件だったのです」と原氏が説明してくれた。事実、当初営業をかけた時は「すでに決定済みだ」と断られ、それでも提案を作って行って弾かれる、ということを数回繰返すうち施設側の方針が変わり、改めてプロポーザルを行うことになったのである。木造平屋分棟式のユニークな計画は、この当初の提案時に生まれたものだった。

「皆で現地を見に行って、“絶対に平屋だね”と話しながら帰ってきたんです」(原氏)。一般に特養施設といえば、管理者に便利な鉄骨やRCの建物がほとんどである。しかし、型破りの発想を得ていた原氏らは、常識に囚われず「特養施設とはどうあるべきか?」を学び直し、捉え直していった。それは未経験の新分野に積極的に挑む同社にとって、いつも通りのやり方だった。

「まず、そこで暮す高齢者の方のことを考えようと思いました。すると、やはりRCや鉄骨作りよりも温もりを感じられる木造。それも外が近い分棟式で四季の変化を楽しめる方が良い、と確信したのです。……しかし、3度断られた時はさすがにダメだと思いました」(原氏)。ところがひと月半後、その施主から電話が入る。「もう一度提案がほしい」というのである。実はその少し前、この案件の施主が他の特養施設を見学に行き、木造の建物だったその特養施設を大いに気に入ったのである。その結果、心変わりした施主は、原氏らが提案していた木造案を思い出し、鉄骨3階建て案を出してきていた他社を含めて、木造による再提案を求めてきたのである。

大逆転を可能にしたもの

「この時も、私たちは木造平屋分棟式のプランをブラッシュアップして提案しました。それは前述の通り、現地を自分たちの目で確認し、発想し、練り上げたプランであり、それを ARCHICADの豊かな表現力で分かりやすく、印象的にお見せしたのです」。その結果、3度否定されたはずの住建設計案が逆転採用されるに至ったのだ。もちろん前例のないプランだっただけに、プレゼンテーション時には施主からは多くの質問があったという。

「木造はともかく分棟については特養施設では全く前例がなかったので、質問が集中しました。スタッフの移動が遠くて大変とか、靴を脱ぎ履きするのは不便といった声です。そこで、実はスタッフが各ユニットへ移動して回ることは多くないし、分棟でも距離はさほど変わらないことをウォークスルーで見せ、さらにさまざまな箇所のパースも作るなどして、ビジュアル的に提案し説得していきました」(原氏)。

このようなBIMならではのプレゼン&打合せの手法は、その後、現場が始まってからも継続された。天井の高さや間接照明の違いで作る多様な空間で「それぞれの居場所」を作る独特のコンセプト、四季を感じさせる変化に富んだ植栽計画等々、平面図だけでは伝えきれないプランの核を、BIMを用いて実際に見せることで確実に伝え、理解させていったのである。「新しいアイデアを提案したり、要望を反映させる時もARCHICADで修整し、現場の打合せで“こんな風に見えますよ”とお見せしていきました」(原氏)。疑問はスピーディに解消され、施主は大きな安心感と満足感を得られるのである。

「竣工時には、施主さんも“旅館にしても良いくらいだね”と喜んでおられたし、ARCHICADは、さまざまな用途建築を手がける当社のスタイルに合っている、とあらためて痛感しました。とにかく多様な検証や新しい見せ方を行う上で絶対に欠かせないツールです」(原氏)。まさに ARCHICADによるBIM設計をフルに活用することで、同社は新たな成長期に踏み出したのである。

「基本設計からプレゼンまでARCHICADで行うようになった当社ですが、実はその先は決まっていません。人により案件によりさまざまで、詳細設計や監理まで使う者もいれば、プレゼンまでの者もいます。フルBIMにはこだわりませんが、どこまでどんな風に使うのが最適なのか……きちんとノウハウをまとめてルール決めする時期だと考えています」(若野氏)

Archicadの詳細情報はカタログをご覧ください

ー カタログと一緒にBIMユーザーの成功事例もダウンロードできます ー

  • Archicad ユーザーの設計事例を紹介
  • 設計時の裏話や、BIMの活用方法など掲載
  • その年ごとにまとめられた事例をひとまとめに
  • BIM導入前から導入後の情報満載

Archicadのすべての機能を
30日間お試しいただけます。

Archicadを導入して自分らしい設計をしよう