ANALOG株式会社 (旧池田建築設計)
基本設計から実施設計までBIM をフル活用! インテリア設計で活かすARCHICAD の実力

ANALOG株式会社 (旧池田建築設計)

ANALOG株式会社 (旧池田建築設計)は、建築家 池田暢一郎氏が主宰する建築設計事務所である。ファサードやインテリアなどデザインに特化した設計を得意とし、商業建築を中心に豊富な実績を蓄積する同社は、特にディティールまで踏み込んで作り込む独自の「デザイン・デベロップメント」の設計手法でも注目されている。2015年、池田氏は ARCHICAD を導入しBIM の本格運用を開始した。その最新成果となる「伊東屋」リニューアルプロジェクト例を中心に、BIM 活用の狙いと背景について池田氏とパートナーの横山氏に伺った。

ANALOG株式会社 (旧池田建築設計)

設立 : 2010 年

所在地 : 横浜市

代表 : 池田暢一郎

事業内容 : 建築設計・監理、内装デザイン

webサイト : https://anlg.co.jp/

池田建築設計 代表 池田 暢一郎 氏

池田建築設計 代表 池田 暢一郎 氏

池田建築設計 パートナー・一級建築士 横山 晴之 氏

池田建築設計 パートナー・一級建築士 横山 晴之 氏

3店舗5フロアのリニューアルを同時進行

「基本設計から実施設計までARCHICAD をフルに駆使した案件は、実は今回の伊東屋さんの改修工事が2件目となります。しかし、この案件は3物件が同時に進む大変なプロジェクトだったのです」。そういって池田氏は苦笑いを浮かべた。いうまでもなく伊東屋は1904年創業の文房具の専門店。銀座の顔というべき本店「銀座 ・伊東屋」の2店(G.Itoya、K.Itoya)を中心に、8支店他を展開している。今回、池田氏が依頼されたのは、2つの銀座本店と横浜店の合計3店、計5フロアの改修だった。

横浜店は入居しているデパートの改装に併せて行う移転リニューアルオープンのための改装。銀座本店の2店舗は、K.Itoya の1、2階にあった高級筆記具売場をG.Itoya 3階へ移転し、入れ替わりでG.Itoya 3階の文房具売場と4階のノート売場をK.Itoya 1~3階へ移転。それぞれリニューアルしようというのだ。銀座の2店は、基本的には壁面什器と島什器のリニューアルが主体で、床や壁、天井、照明等は既設のものをそのまま使う。ただし3フロアの改修がほぼ同時に進む困難さに加え、スケジュールもきわめてタイトだった。

「クライアントとの最初の打合せが6月下旬。そしてリニューアルオープンは横浜店が9月1日でG.Itoyaが9月10日、K.Itoya は24日と立て続けに行われます。当然ですが什器類の製作時間も必要なので、8月には設計図を完成させなければなりません。しかも、クライアントはデザイン面にも機能面にも徹底的にこだわるので、私たちも高いレベルの対応が求められました」

本当に間に合うのか、不安になったことも1度や2度ではなかったと池田氏が言うほど、スケジュールは終始厳しい状況に置かれたが、最終的には全工事が1日の遅れもなく完了し、クライアントの満足度もきわめて高かった。

―― そして、この成功をサポートしたのが、当時本格運用を始めたばかりだった ARCHICADとこれを用いたBIM 設計だったのである。実際に ARCHICAD の操作を行ったパートナーの横山氏はいう。

「ARCHICAD でなかったら、正直対応しきれなかったかもしれません。 2DCAD ではウォークスルーどころかパースも間に合わなかったでしょうし、図面を見せるのが精いっぱいでは、了承をもらうのも大変だったはず。完成後も“こうなるとは思わなかった”なんて言われたかもしれませんね」。

では、この難題を解決した、独自のBIM 運用法とはどんなものだったのか?

「G.Itoya」3階フロア 内観パース
「G.Itoya」3階フロア 内観パース
「G.Itoya」展開図
「G.Itoya」展開図
BIMxを利用した打ち合わせ
BIMxを利用した打ち合わせ

BIM によるデザイン・デベロップメント

「建築設計の仕事では、基本設計後は実施設計へと進めるのが一般的です。しかし、私たちその間にデザイン・デベロップメント(以下DD)というフェーズを挟んでいます」(池田氏)。

このDD とは最初期の基本設計段階から素材を含めたディティールまでデザインを固め、それをビジュアルに見せて、早い段階で施主に提案内容を正しく把握してもらおうという手法。池田建築設計では、デザイン監修の仕事はもちろん、通常の設計業務でもできる限りこのDDを実施している。そのため、同社では提案にあたって、基本設計段階から図面に加えてパースを作成し、平面図等も実際に使う素材の色を付けたり、テクスチャを張り込んで分かりやすく見せていくのが通例だ。

「こうしてDD を行うことで、早い段階からクライアント目線でバランスの取れた建物にすることができます。結果、クライアントは大きな満足を得て、事後のクレームや変更も抑えられるのです」(池田氏)。しかし、DD はスケジュールに余裕がなければ実行しにくいのも確かで、だからこそ ARCHICAD によるBIM が威力を発揮するのである。事実、今回は什器も含め当初から ARCHICAD で3D モデルを作成。図面を描き什器をデザインし、依頼から2週間後の第1回の提案の時から、図面やパースに加えてBIMx によるウォークスルーまでご覧に入れた。

「クライアントはウォークスルーをとても気に入り、壁面に投影した画面に社長みずからマーカーで修正を入れるほどの熱中ぶりでした」(池田氏)。

このような打合せは数回繰り返され、その都度クライアントからは細かい修正が入った。これに ARCHICAD ならではの速さで対応。その度ごとにまた3D で確認いただくというやり方により、互いにズレのない的確なやりとりを効率よく行い、顧客の意志を正確に反映したデザインをスピーディに詰め切ることができたのである。また、こうしたコミュニケーションツールとしての強みだけでなく、デザインツールとしてのメリットも大きかった、と横山氏はいう。

「実際に ARCHICAD を使った立場から話すと、BIMで常に3D を見ながらデザインできたことは非常に有効でしたね。棚や什器類の高さなどもアイレベルで検討できるし、イメージしやすいのです」。その意味で ARCHICADはインテリア設計に向いている、と横山氏は言葉を続ける。

「もちろんインテリア用ツールとしては、物足りない部分もありますが、とにかく3D でデザインして、それがそのまま図面にできるメリットは非常に大きいのです。実際、今では家具や什器も、私はARCHICAD で作っています」(横山氏)。なお、今回のプロジェクトで横山氏らが制作した什器類の3D モデルは、そのまま同社が3D 部品データベースとして保存している。

「またクライアントからリニューアル依頼があれば、これを使いさらに素早く対応できますからね」と池田氏は笑みを浮かべる。

「G.Itoya」3階フロア 完成写真1 写真:梶原敏英
「G.Itoya」3階フロア 完成写真1 写真:梶原敏英
「G.Itoya」3階フロア 完成写真2 写真:梶原敏英
「G.Itoya」3階フロア 完成写真2 写真:梶原敏英
「G.Itoya」3階フロア 完成写真3 写真:梶原敏英
「G.Itoya」3階フロア 完成写真3 写真:梶原敏英

VR へ向う1ステップとしての BIM

プロジェクトの成功を受けて、池田氏は改めて ARCHICAD によるBIM 設計を、今後の同事務所のクリエイティブの中心に据えることを決定した。

「基本設計段階のビジュアライゼーションだけではなく、実施設計の図面作りまでフルにARCHICAD で、という当社のやり方はまだ少数派かも知れませが、逆に“そこまでやりきらなければ意味がない” と考えています」(池田氏)。このやり方が作業全般をスピードアップさせ、クライアントの満足度も高くなるということはもちろん、建築設計の将来を考えていく上でも「それ」は絶対に欠くことのできない取組みだ。池田氏はそう考えている。

「そう遠くない将来、建築の提案はVR を用いて、原寸大の空間をリアルタイムで見ながら進めるやり方が主流になるでしょう。つまり、VR でご覧になっていただき、体感してもらいながら検討するのが当たり前になる。私は、BIM というのはそこへ至るプロセスの1ステップなのだ、と思っているのです。だからできるだけ早く取り入れて習熟しておきたい。つねに一歩先の流れを捉えて、それを主導していける立場にいたいと考えていますから」。

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