前列左から飯田貴氏(グラフィソフトジャパン)、尾崎知世氏(髙松建設)、宮下真衣氏(髙松建設)、長田亜祐美氏(髙松建設)、後列左から志茂るみ子氏(グラフィソフトジャパン)、大西凌課長補佐(髙松建設)、徐蝶課長代理(髙松建設)、松本万幸氏(髙松建設)、高井真奈氏(髙松建設)、松崎幹生本部長(髙松建設)
髙松建設はグラフィソフト社のBIMソフト「Archicad」を活用して企画設計から施工まで活用している。その効率的な活用方法、教育体制やグラフィソフトジャパンとのコミュニケーションなどを聞いた。
髙松建設株式会社
https://www.takamatsu-const.co.jp/
所在地: 大阪府大阪市
代表: 髙松 孝年
創業: 1917年
業務内容:
集合住宅建設事業、オフィスビル建設事業、福祉施設建設事業、生産施設建設事業、物流施設建設事業、店舗建設事業、宿泊施設建設事業、研究施設建設事業、医療施設建設事業、リノベーション事業
髙松建設のBIM推進の取り組み
徐(髙松建設)
髙松建設でArchicadを使い始めたのは、Ver.6.5の頃。試験的に企画設計のプラン図面作成ツールとして購入したのがはじまりで、パースを作成するチームのモデリングソフトとして定着しました。
その後、2019年にBIM推進のためのチームを立ち上げ、様々なソフトを見比べてArchicadがベストとなり、全社的に設計から施工まで全フェーズにArchicadを活用していくという方針を決めました。
松崎(髙松建設)
Archicadに決定した理由は操作のしやすさと施主に図面を出す際、プレゼンテーションするためのツールが揃っていたことが決め手だったと聞いています。BIM推進室が発足し、「企画設計をBIMで容易に行うことはできないか」、「工事の仮設検討に3Dモデルが使えないか」、「設計から施工までの一連の流れの中でBIMデータを活用すること」という3つの柱からスタートしました。
それから試行錯誤をしながら2021年ぐらいから実際に業務として本格的に使用しています。
徐(髙松建設)
操作性とレイヤー機能が良いですね。レイヤー機能はあまりBIMソフトウエアでは実装されていないので重宝します。2次元CADに近い感覚でレイヤー操作ができますので、様々な調整がやりやすいです。
また、モデリングの自由度がとても高く、複雑な形状をモデリングする際、幾通りものやり方が選択できるので、その中で1番適した方法を選んで短時間で正確にモデリングできるのは良いと思います。
BIMをはじめてみて
大西(髙松建設)
建築の実務経験がない状態からBIMに携わったのですが、通常であればもう2Dの図面を読み込んで、建物の形状や重機の配置を想像しながら自分の頭の中で組み立てていくことが普通ですが、Archicadで作図することで3D となって建築や工事の内容がわかりやすく視覚化されるのでそれによって建築の知識が自然とつきました。現場でも皆と非常に共有しやすい。
最近は、社内で作成したBIMのデータを現場にも展開していこうということで、BIMの研修も始めてるのですが、そういった際にも伝えやすいツールだと思います。また、モデリングをする際にも直感的に検討できるところが魅力だと思います。
飯田(グラフィソフトジャパン)
私も設計出身なんですけど昔スケッチでディテールを描いてもらったのを見て、描かれた部分はわかるけど建物全体が掴みづらかったことがありました。確かにBIMモデルがあると全体が分かりやすいと思います。
松本(髙松建設)
私は20年以上前から2Dで作図をしていて本格的なBIMは初めてだったのですが、あまり抵抗もなくすんなり業務が移行できました。今では2Dで書くより、3Dで作った方が早いと思います。
また、専用のオブジェクトツールを配置することで、例えば敷地に対してどの重機を使うとなった時にこのトン数だとこの大きさというようにサイズ感がすぐに分かるというのが良いと思います。
高井(髙松建設)
BIMのデータを持って現場に打ち合わせに行く時があるのですが、大きいモニターに映して皆で同じものを見て、間違いがないかを分かりやすくチェックできることが便利だと感じます。
長田(髙松建設)
テンプレートなどを利用して自分が検証したり作ったりするモデルと同じものを他の人とも共有して使用できることが便利だと思っています。
柱ツールや壁ツールに情報を入れたものをお気に入り登録しておけば皆がそれを活用できるのは良いですね。
徐(髙松建設)
モデリングだけではなく、BIMはいかに数量などのデータをうまく連携できるかが大切だと思います。それを考えるとArchicadはBIMを使う上で優秀なソフトだと思います。
Archicadは単体でも集計やチェック機能などが実装されていているのですが、それだけではなくsmartCON Plannerなどの仮設用のアドオンソフトや他のソフトとの連携もよく、スムーズにBIM連携が行えます。
企画設計から施工まで
ー 髙松建設のBIM
松崎(髙松建設)
BIMを運用している部署は設計部と工事部、同じフロアーでBIMチームとして協働しています。仮設検討、施工図、生産支援、連携、開発と5つのチームが設計から施工までカバーしています。当社は、設計施工率が90%以上ですので、案件のお話を頂いた段階から実際にその敷地で施工できるかどうかの検討も即時BIMで行います。
企画設計に関しては、GDLとAPIでプログラムを組んでモデル・図面の作成を行い、概算に連携するための面積表を含む、各所数量関係も算出できるシステムを組んで行っています。受注決定後は、構造の仮定断面モデルを作成し、敷地モデルと仮定断面モデルをいれて、山留検討や土量算出をします。実際にその敷地で施工する工法の検討も行います。
実施設計図の図面が上がってきましたら、その図面を元にBIMモデルを再構築して積算・仮設検討に連携します。設計が固まってきたら、それを施工図に反映させて現場に渡すという流れで設計から施工まで行っております。現在大阪本店で年間60以上の物件をBIMで行っています。
よりスムーズな施工BIMを実現
ー BIMを活用できた事例とは?
松崎(髙松建設)
BIMがなければできなかった事例というと設計段階よりも圧倒的に施工段階の時に多いと思われます。複雑な形状の建物を建設する際には3Dモデルがあるからこそ精度の高い施工検討ができる事例が多数あり、どう作っていくのか、どのような手順で行っていくのか等の検討を画面上でシミュレーションできることは効率化に繋がっています。
あと鉄骨建方もいくつものパターンから比較検討ができるようになったのは非常に助かっています。
飯田(グラフィソフトジャパン)
モデルが作りづらいところは実際の現場でも問題が起きやすいことが多いと思うのですが、フロントローディングではないですけど早めのチェックや確認をされたりしていますか?
松崎(髙松建設)
チェック・確認としてのフロントローディングは、仮設検討チームが設計の初期段階で敷地と工法の関係を検討しています。図面の不整合については、連携・施工図チームがモデル・図面を作成するときに「不整合があるので納まってません」と書き込みます。
設計・現場の人はそこを見て確認していく。3Dだと誰でもわかり易いというメリットがありますね。
志茂(グラフィソフトジャパン)
いわゆるBIMチームがチェック機能を備えたものなのですね。
松崎(髙松建設)
現在、建物が複雑化していく中、3Dで検討しないと分からない事例は増加傾向にあります。我々は手書きが主流の時代から作図を行っていますが、3次元の形を2D図面からイメージするのは何十年もの訓練が必要です。2Dの躯体図にしても建築を知らない人から見れば分からない。しかし、3Dの図面だと建築に詳しくない人から見てもとても分かりやすいのです。
熟練工が今後減少傾向にある中、今後のツールとしてはとても良いと思います。しかし、3Dモデルはメリットもあるけれど情報が連携されているが故に修正に時間がかかるなどのデメリットもある。費用などのバランスも見ながら上手くツールを使って時短に繋がっていくと良いと思います。
志茂(グラフィソフトジャパン)
今の事例のような提案から作業所の所長さんがBIMファンになったりすることもありますか?
松崎(髙松建設)
最初「この現場でBIMを使用します」と言うと困惑する所長もいますが、1、2回使ってみると「BIMでやってほしい」と言われることが増えてきています。
髙松建設のBIM教育マニュアルについて
松崎(髙松建設)
新入社員研修では、設計部門に関してはBIM教育のカリキュラムがあります。工事部に関しては今年から入社3年目4年目のタイミングで実験的に始まった段階になります。
徐(髙松建設)
設計の新入社員研修では基本的に Archicad Magic と社内マニュアルも併用で基本操作まで覚えてもらいます。
上級者になってくるとBIMチームを対象にスキルアップを図るため、 BIM Classes に参加してモデリングのコツや今まで使用していないような機能を習得しています。
宮下(髙松建設)
BIM Classesに参加して基本的な操作の部分でも勉強になる部分が多く、学んだことはミーティングで共有しながら社内のマニュアルにも多く反映させています。
高井(髙松建設)
ツールや機能が多いので自分の中に落とし込んで覚えるまでは確かに時間はかかるのですが、組み合わせ次第で操作性が良くなるので便利に活用できれば良いと思います。
尾崎(髙松建設)
確かにそれはありますね。難しい案件の際に丸1日試行錯誤していて、その作業に適した機能を使用したら一瞬でできてしまい驚いたこともあります。
松崎(髙松建設)
BIMを推進する上で大切なことはみんなが同じ作業をすることだと感じます。そうしないとバラバラになってしまう。髙松建設もルールを作り極力みんなが同じレベルで同じ形ができるようにしています。
新しいアイデアを生むためにはそれだけではいけないので、BIM推進のチームの中でリーダー的な役割を決め、その人に新しい機能などを覚えてもらう役割分担をしています。
志茂(グラフィソフトジャパン)
他社がこんな風に使ってるなどのアイデアが、コミュニティで上がっています。ぜひ取り入れていただければと思います。
徐(髙松建設)
BIM相談室 なども毎回チェックしています。
志茂(グラフィソフトジャパン)
ありがとうございます。最近初回からの内容を全部アップしたので検索してご活用いただければと思います。
また、グラフィソフトジャパンはユーザーの声を今後の開発に反映しますのでぜひご意見をお待ちしています。
飯田(グラフィソフトジャパン)
Archicadはみなさんがおっしゃるように機能がたくさんあって、正直私も使ったことがない機能もあるほどなんです。
それを1つずつ覚えることはなかなか独学では難しいですが、知っているととても便利な機能がたくさんあるので体系的に覚えられて共有できるようなものを提供できる機会をグラフィソフトジャパン側からも少しずつ作っていければ良いと思いました。
松崎(髙松建設)
今は働き方改革等、業界全体が労働時間の制約など厳しくなってきており、各社アウトソーシングして、労働時間を短縮しているのが現状です。
でも当社BIMチームは、100%内製で行っており、家庭を持っている女性の方が多いですし残業がほとんどありません。今後の展望としては、当初からコンセプトに挙げている設計施工率90%を生かしたOneデータでのBIM運用を目指し、髙松建設のBIMを確立していければと思っています。
飯田(グラフィソフトジャパン)
BIMで仕事を効率化し、働き方改革にもぜひ役立てていただきたいと思います。本日は有難うございました。
Archicadの詳細情報はカタログをご覧ください
ー カタログと一緒にBIMユーザーの成功事例もダウンロードできます ー
- Archicad ユーザーの設計事例を紹介
- 設計時の裏話や、BIMの活用方法など掲載
- その年ごとにまとめられた事例をひとまとめに
- BIM導入前から導入後の情報満載