株式会社アトリエ ハレトケ
デザインから環境性能まで建築家の思い描くイメージを拡げるArchicad

株式会社アトリエ ハレトケ

風土に根ざした建築の在り方を追求し、美しく、活き活きとした風景を生み出すことを目指すアトリエハレトケ。主宰の長崎辰哉氏は、ユーザーの身体に馴染み、使い込むことで美しさを増していく建築を追求。作品づくりを通じて、人々の生活を豊かに彩ることを心掛けている。
同事務所は、アトリエ系として長年の経験を積み、さまざまなビルディングタイプの建築を手掛けており、生み出す作品のクオリティに加えて、施主の暮らしを徹底的に考え抜くその設計手法にも定評がある。
2009年の設立以来、アトリエハレトケは、手描きとCADの併用を経て、2019年にArchicadを初めて試用し、2020年に本格導入を行った。今回、同事務所の設計、Archicadを導入した経緯や狙い、また同じような規模の建築設計事務所にとってのメリットなどについて、代表の長崎辰哉氏、設計チーフの池田俊氏にお話を伺った。

株式会社アトリエハレトケ

https://haretoke.co.jp/

所在地 東京都大田区

代表者 代表取締役 長崎 辰哉

創 立 2009 年

業務内容
建築・インテリア・ランドスケープ・都市計画などの企画、設計、監理ほか

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株式会社アトリエハレトケ
代表取締役 長崎 辰哉 氏

株式会社アトリエハレトケ
設計チーフ 池田 俊 氏

施主の暮らしを描くことで生み出す、
身体に馴染む建築

代表の長崎氏は、東京大学を卒業後に建築家・岡部憲明氏と、内海智行氏に師事し、多くの海外コンペや国内外の住宅、公共建築などの設計に携わってきた建築家である。2008年に独立し、自身が主宰するアトリエハレトケを設立。住宅や別荘を中心に幅広い建物を手掛け、数多くの実績がある。

「私が設計の際に心掛けているのは、出来上がった瞬間が最も美しい建築ではなく、使い込んでユーザーの身体に馴染みながら、その美しさが深まっていく建築です」と長崎氏。これは、長崎氏が大切にする考えであるとともに、同事務所が設計を行う上で基本とするコンセプトでもある。「また、環境性能にも気を配っています」と語り、その土地の気候や風土を意識した設計にも重きを置いている。

同事務所の設計プロセスでは“施主の暮らしを描く”という点が特長だ。これは、2次元表現での施主とのコミュニケーションだが、徹底的に施主の目線に立って行われる。施主との打ち合わせで描かれた絵には、日常生活で想定される事象が細かく丁寧に記載されており、施主の家族それぞれの目線でコメントが描かれている。

家族それぞれの目線で丁寧に描かれた打合せ時の絵
繭の家(スケッチにより実現した実際の空間)

「私たちは、具体的な暮らしを絵として描き、その絵の中に住んでみて、家事の動線やお子さん目線での気付きを詳細に描いていきます。施主の最大の関心事は如何に自分たちが望む暮らしを展開できるかです。もちろん模型やCGなども作成しますが、こういった方法で暮らしの全体像を共有しながら設計を進めることが大事だと考えています」と1つの手段にこだわらず、あくまでも施主目線を大切にして設計検討を行っている。

このように長崎氏は、2次元、3次元に関わらず、より適切と思われる手法でコミュニケーションと設計を進めているが、もちろんデジタル技術の導入についても柔軟だ。

その背景には、仕事の規模が大きくなってきたこと、また施主側の意識の変化もあるという。「最近の例では、恵比寿の住宅プロジェクトがあります。内外装の検討にCGを使うことで、素材感や光の具合をスピーディーに共有でき、施主とも正しく意思疎通を図ることができました」と長崎氏。思い描くイメージをスピード感をもって、特に陰影やテクスチャなどを伝えやすいと感じたという。そして同事務所が複数のソフトを試用する中で、行き着いたのがGraphisoftのBIMソフト「Archicad」であった。

事務所の状況に合わせて柔軟に利活用できる

アトリエハレトケがArchicadを試験的に導入したのは2019年のことで、比較的最近である。それまでもCADやCGソフトを使用していたが、どの所員も一様に使用できるよう、使いやすいArchicadをチョイスしたという。最初に試用したのは、とある民間の祭事施設。改修のコンペでArchicadを使って設計モデルを立ち上げ、インテリアのレンダリングまでを行い、プレゼンテーションを実施した。

この時に担当したのが、設計チーフの池田俊氏だ。池田氏は、東京藝術大学大学院やリヒテンシュタイン国立大学などで建築を学び、アトリエハレトケ設立から約1年後に入社。現在では長崎氏の右腕である。

池田氏は「それまでは、他社ソフトでモデルを作成してレンダリングしていましたが、時間がかかっていました。このコンペではArchicadとダイレクトリンクするTwinmotionを使うと照明表現の品質が高く、短時間でスタディが行えると聞き、積極的に使ってみたのです」と使い始めたきっかけを振り返る。また、長崎氏としても、将来的にArchicadを用いて一気通貫で作業できれば、設計効率も視覚効果も高まるなどメリットを感じ、Archicadの本格導入を決意したという。

アトリエハレトケでは、プロジェクトのタイミングでArchicadでイチから設計モデルを作成することとなったが、ハードルが高いと感じる設計事務所もまだ多いだろう。しかし池田氏はこう語る。「いきなり図面やパースを一気につくるのは我々も難しいと思っていたのですが、グラフィソフトジャパンの無料セミナーに参加し、『あくまでもArchicadを“検討ツール”として捉え、ともかくモデリングベースで進めるのが良い』と講師の建築家から聞き、身構えなくなりました」。

Archicadで精密なBIMモデルをつくり、任意の位置で切断すれば平面図や断面図ができることが理想ではありつつも、あくまでもより優れた検討を行うために使用するという考え方が重要だと話す。またArchicadでも、2次元で詳細を描くことができるため、「例えば展開図を作成する際、切断した図を下絵として、輪郭の線を重ねながら描き込むこともしています。3Dモデルと2Dの描き込みのバランスは、その事務所の状況によって変えれば良いと思います」と、Archicadに興味がある設計事務所の目線に立ってのアドバイスもしてくれた。

すでに同事務所では、実施設計までの一通りをArchicadで描き切るというところまで進んでいる。池田氏は「Archicadでは、従来であれば現場に入ってから検討していたような仕上げの詳細検討を早い段階で行えることも魅力で、アウトプットの量や質、効率は向上していると思います」とメリットを語る。

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また、同事務所が重視する施主とのコミュニケーションの部分では、「BIMx」も効果を発揮しているという。これは3Dモデル中にウォークスルーで入っていけるソリューションで、タブレットなどで使用できる。長崎氏は「BIMxでは竣工前に建物の中に入っていけるため、より具体的な空間イメージを施主自ら確認いただくことが可能です。私たちの設計意図がより伝えやすくなったと感じています」と、情報共有の効果的な手段の1つとして評価する。

BIMの活用でより良い建築を目指して

Archicadを状況に合わせて活用している長崎氏と池田氏。2人は次の展開として、各業種間連携を見据えたBIMモデルの作成を目指すという。BIMのインフォメーションの部分について、積極活用することも検討している。「モデルにより詳細な情報を入れていくことで、仕様の変更等があっても矩計図の詳細な文言などに連動して反映されるといったことです。プロジェクトごとに建物の仕様も構成も異なる中で、小規模の事務所でどこまで対応できるかとは思いますが、今後強みにしていきたい点の1つです」と2人は語る。

現在アトリエハレトケでは、Archicadで検討している集合住宅プロジェクトが複数進行している。「日影規制をクリアする建物形状が、パラペット高さなどの細かい寸法調整でも変わるため、随時計算をかけてモデルを変更しています。良い街並を生み出すためにも、細かな検討ができるのは有利だと思います」と池田氏。

長崎氏も「さらに外皮の断熱性能や風通しなど、温熱シミュレーションと連動しながら検討できれば、建築単体のみならず周辺環境も含めて検討したい私たちの考えにベストマッチしますね」と期待を込める。

そして長崎氏は「究極的にいえば、あらゆるツールはコミュニケーションのためにあると思うのです。Archicadは使いやすさ、質、チームワーク機能など、建築家を助ける優れたツールだと思います。Archicadをより上手く活用することで、大量生産ではなくとも、私たちならではのオリジナルで質の高い新しい建築を実現していきたいです」と今後の展望を語る。

同集合住宅案における日影規制検討の実際

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