麻生建築&デザイン専門学校 教務部 主任 今泉 清太 氏
麻生建築&デザイン専門学校 教務部 建築系 福光 春子 氏
道脇設計室 代表/特別講師 道脇 力 氏
10年以内に BIM が主流となると実感
「BIM のコースを準備し始めたのは、3年ほど前からです。ある企業に要望されたのが1つのきっかけでした」そう語るのは、麻生建築&デザイン専門学校で教務部主任を務める今泉氏だ。建築業界との交流が深い同校では、企業の“こういう人材がほしい”という声を、カリキュラムに的確に反映させるのが1つの強みとなっているのだという。
「BIM についても“今後の業界はBIM が必須になる。ぜひASO でやってほしい”と言われたのです。世間に浸透してない分野を先駆けて導入するのは冒険ですが、九州唯一のCAD 学科を持つ本校としてはやるしかありません」。そういって今泉氏は笑う。実際、調査を進めるうちに教職員たちの理解も深まり、今泉氏自身もさまざまな会合等で「10年以内にBIM が主流となる」と感じる機会が増えていった。そして次第に、本格的なBIM 教育を取り入れるべきだ、と確信するようになったのである。
コース開設の準備が始まり、まず課題となったのは新コースで使うBIM ソフトの選定だった。各社のBIM ソフトを比較し、各製品の機能やコスト、サポートについて検証したほか、そのユーザ側となる建築業界各社にも広くリサーチを行った。将来、同校の学生たちが働く現場で「どのツールが使われているか」、見きわめようと考えたのだ。こうした綿密な検証を経て、最終的に選ばれたのが ARCHICAD だった。コースづくりに参加し、ARCHICAD 選定にも携わった常勤講師の福光氏は語る。
「学生・教員向けの ARCHICAD 無償ライセンスも魅力的でしたが、それ以上にリサーチした企業の多くがメインツールとして ARCHICAD を使っていた点が決め手となりました。ARCHICADこそ次代の主流と感じたのです」
使用ツールが決まれば、次はその講師が必要となる。特に同校では「そのツールを実務で使っている現場のプロ」の招聘が基本方針となっており、福光氏らはさまざまなルートを通じて候補者を探し、選定を進めていった。そして、最終的に熊本市で設計事務所を主催する建築家、道脇力氏に協力を依頼したのである。道脇氏は語る。
「私自身、2D・3D をスムーズに行き来しながら作業を進められるARCHICAD の操作性や変更対応のしやすさ、平立断の整合性の高さなど、その魅力を日々実感していたので、講師を引き受けることに不安はありませんでした。福光先生たちとじっくり相談しながら、まずは“BIM とはどういうものか” 実際に ARCHICAD を使いながら学んでもらおう、とBIM コースの内容を考えていったのです」。
BIM設計コンペにチャレンジ
こうした経緯を経て、BIM コースは建築C A D 科1、2年生70名余を対象に2015年4月に本格始動した。コースはまず、BIM とARCHICAD の概要を把握させるため、チュートリアル形式の入門書「ARCHICAD Magic」による操作演習からスタート。ARCHICADを用いた3D モデル作りの中で各ツールの使い方を教えていったのである。
「驚いたのは学生たちの飲み込みの早さです。私もまだ完璧には把握しきれてない奥深いソフトなのに、好奇心旺盛な学生たちは新しい使い方を試していく。さすがデジタルネイティブの世代ですね」(道脇氏) もちろん建築CAD 科の学生たちが学ぶのはARCHICAD だけではない。2次元CAD や汎用 CAD、モデリングソフトにハイエンドCGまで、非常に幅広いデジタルツールに触れていくのである。
「建築業界で行われているCAD 実務の流れをそのまま授業に組み込んでいます。計画の授業で作ったプランをCAD で起し、それを3D CGでCG 化。さらにPhotoshop やillustrator で仕上げ、最終的には自分の作品集をまとめることが目標です。だから、本校の学生はソフトの互換性やデータ連携にはすごく強いですよ」(福光氏)
こうしてカリキュラムは順調に消化され、内容についても導入編からステップアップし、応用編の段階に踏み出していった。授業テキストには『ARCHICAD ではじめるBIM設計入門 企画設計編』(エクスナレッジ刊)が使用された。
「このテキストをひと通り終えてから、後期はチーム分けして課題を与え実践形式の授業を行いました。最初に進め方を教え、実地調査からプロジェクトに取り組ませたんです。最終的にはプレゼンまでしてもらいましたよ」(道脇氏) こうして同校でのARCHICAD 運用が本格化していくなか、飛び込んできたのが学生BIM 設計コンペの案内状だった。
ARCHICAD スキルが就職活動の武器に
マロニエ学生BIM 設計コンペティションは、学生を対象とするBIM 設計コンペである。48時間の制限時間以内に3D モデルデータを作成・提出するというユニークな内容で、審査員には著名建築家が名を連ねる。大学、大学院、専門学校生なら誰でも応募できるため、BIM を学ぶ学生にとって格好の腕試しの場となっている。
「BIM コースを推進する者として、何か実績が作りたいと思っていました。そこで偶然このコンペを知り、学生に声をかけたら“やります!”と」(福光氏)こうして福光氏は計3名の学生を選抜。過酷な48時間耐久レースに彼らをエントリーした。コンペ課題はARCHICAD で作る4万2千㎡もの都市空間デザインだ。BIM コースが始まったばかりの同校学生にとってハイレベルな課題だったが、3名は果敢に挑戦。受賞こそ逸したものの、2名がファイナリストに選ばれる快挙を成し遂げた。
「当然、作品は学生がエスキースから作りあげました。しかもファイナリストに残った学生は錚々たる建築家にプレゼンまでして、本当に良い経験をしたと思います。皆ひと回り大きくなりましたね」(道脇氏)
この結果を受け、建築CAD 科はもちろん他学科でも「来年は参加したい」という声が広がっている。学生たちの ARCHICAD スキルも向上し、BIM コースの導入効果もさまざまな形で現われ始めた。たとえば同校でもインターンシップで設計事務所やゼネコンの職場を経験する学生が多いが、彼らに聞くとARCHICAD を使う企業が驚くほど多いのだという。彼らは「ARCHICAD をやってて良かった!」と口を揃える。
「BIM コースに関しては、今後他学科の学生も参加できるようにし、並行してBIM 専攻コースも作る計画を進めています。また環境面に関しても全館への Wi-Fi 環境整備に続いてPC もノートPC に移行させ、いつでも勉強できる環境にしていきたいですね。始まっ たばかりのBIM コースですが、どんどん充実させていきますよ!」(今泉氏)
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