代表取締役 建築家 一級建築士 小俣 光一 氏
BIMマネージャー 一級建築士 東尾 勝則 氏
ARCHICADの幅広い活用を目指し独立
「きっかけはやはりARCHICADです。5年前のことですが、その頃勤めていた設計事務所でARCHICADを紹介されたことが、独立に繋がったのです」。小俣氏は当時、大手の組織設計事務所に勤務していた。そこではすでに3次元CADの活用も進み、プレゼン等であたり前のようにCGが使われていたが、意匠設計を経て事業開発的業務を任されていた同氏は、ARCHICADのTeamwork機能に注目したのである。
「ARCHICADを使いグラフィソフトの話を聞くうち、これを設計ツールとして使うだけではもったいないと感じました。事業開発の仕事をしていたので社外の専門家と知り合う機会が多く、彼らとパートナーシップを組みたい気持が強かったのですが、ARCHICADのTeamwork機能を使えば、それがシームレスにできると感じたのです」。組織設計事務所に属しながらも、九州や大阪など各地で活動していた小俣氏の場合、パートナーとなる専門家も各地にいた。しかし、Teamwork機能による外部との共同作業には問題があった。社内のセキュリティの厳しさが、webを介した連携先とのやりとりを阻害するケースがあったのである。小俣氏は検討を重ね、社内の設計部を巻き込むべくアピールするなどしたが、その思いはなかなか伝わらなかったという。
「当時の社内にも構造や設備、監理の専門部署がありましたが、特殊な専門技術を持ち幅広い思考力を持った構造や照明・ライティング、ランドスケープデザイナーと共同作業したくなります。彼らがみんな東京にいたとしても、やはり一つのツールを核に語り合う方が良い建築が出来るわけです。その都度個別に打ち合わせを重ねるより、3Dのモデルデータを同時に見て理解し合った方が早いし確実ですからね」。
距離、国境そして時間を越えて広がる協業の輪
こうして2010年9月、小俣氏はArch5を設立。Teamwork機能を核に、データ数量算出や資産管理等、3Dモデルデータの多彩な活用を開始した。いわばそれはBIMのあるべき形を目指す挑戦の始まりだった。
「独立後すぐに島根の設計事務所との協業がまとまり、BIMサーバーを導入しました。ここにARCHICADで作った3Dモデルデータを置き、島根からアクセスしてもらう体制を実現したのです」。紆余曲折はあったが、こうして同社が構築したネットワークは距離を超えた協業の輪を広げてきた。現在、鉄骨造の納まり検討などファブリケーターやCG制作を担う上海の事務所とも、必要に応じやり取りが行われている。
「彼らとの協業は予想以上にスムーズで、顔突き合わせて進めるのと変わらない。いや、この方がむしろやりやすいかもしれません」と笑うのは、設計実務を取り仕切る東尾氏だ。
「小俣代表が練ったアイデアを基に、私がARCHICADで3Dモデル化し、作業分担を決め各地に作業を振りわけます。そしてBIMサーバーからの図面とSkypeを重ねて表示しながら打合せ・共同作業をするわけです。ボタンひとつで呼びだせますし、変に気遣いせずに、やりやすいですよ。」そんな東尾氏の言葉に小俣氏も頷く。
「忙しい時など、事前打ち合わせもせずに途中まで作ったデータをサーバーに上げて“このデータの設備を直してください!”というような依頼をしたりもします。とっさに人をかき集めて共同作業ができるのです。少人数の事務所で急に仕事が重なった時などはすごく効果的ですよ」。システムはまだ発展途上であり、データのやり取りが100%シームレスにできているわけではない。だが、マンションのリニューアル案件やオフィスビルの耐震補強案件など、複数のプロジェクトが試行されており、BIMモデルを核に各地スタッフの協業で進める独自のBIM設計スタイルが確立されつつあるのは間違いない。
実施設計段階で工事費を確実に把握
「ARCHICADのより幅広い活用というテーマにおいて、もう一つ大きな課題としたのが数量積算です。幸いArch5の設立時に積算の専門家が参加してくれたので、彼を中心にARCHICADによる数量積算にチャレンジしています」(小俣氏)。グラフィソフトにたびたび質問や要望を出しながら、必要な要素を整理し、積算しやすいシートを作成していったのである。すでに前述のマンションリニューアルの案件でもBIMモデルと数量表を連動させ、さらに数量表と単価内訳書の連動により、工事費もリアルタイムでの確認が可能となっている。
「これにより実施設計する中でコストが見えるようになったわけで、これは設計事務所にとって一番のメリットともいうべきポイントです。市販のBIM対応積算ソフトでも自動積算できるのは6割程ですが、ルールを決めてウチが作ったテンプレートを使えば8割程は自動計算できるのです」(小俣氏)。そこまでできれば、後は歩掛り・メーカー特殊物の見積採用等で9割以上を工事費内訳書として使える。つまり実施設計の終了段階で市場単価と連携させ、発注者が求める工事費を把握できるのである。
「そうなれば、早い段階からコストに関して自信を持った提案ができますし、施主の理解度も高くなります。ARCHICADを使えば小さな事務所や地方の事務所でも幅広く新たなるチャレンジが可能となります。」(小俣氏)。
ここ一年ほどゼネコンはもちろん、マンションデベロッパー、サブコン等から同社への問い合わせが増えているという。かつてない幅広い分野から、Arch5の取り組みへの注目が集まり始めているのである。
「幅広い分野でBIMの普及が進んでいると実感しますね。もちろん課題はたくさんあります。BIMに対して抵抗感が多いという人も多い事は、事実です。スマートにBIMを導入する為に一番重要な事は、社内やパートナー・構造・設備との連携でルールを決め一番使いやすいテンプレートを作り、設計作業を進める事です。我々は、手探りでこれに1年かかりました。今ARCHICADはどんどん使いやすくなっていますし、マシンのスペックも向上しました。まさに誰もがストレスなく使える環境が整ってきたといえるでしょうね」(小俣氏)。
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