建築模型の延長線上にある 3次元 CAD
言うまでもないことだが、建築設計とは”3次元のカタチ”をつくることにほかならない。そして、これを担う建築家たちは、常にこの3次元のカタチをいかにして作るか、よりよい発想の手段を求め、手がかりを探し続けている。
(工藤氏)
私たちが設計の仕事を始めた頃、シーラカンスは大きな建築模型をつくる事務所として 有名でした。
そういって工藤氏は微笑んだ。シーラカンス K&Hの原点は、工藤氏と堀場氏のほか、大学 院当時の同級生6名により1986年に創設されたシーラカンスである。
(工藤氏)
私たちよりも前の世代の設計者は、スタディで模型を作るということを実はあまりしなかっ たのですが、私たちは設計プロセスの一環として、全体のボリューム検討用だけでなく部分的な 模型もたくさん作ってきました。それは仲間6人で チーム設計を行う事務所だったからです。
チーム設計では、自分の頭の中だけでアイディアを練っていても先には進めない。その頭の中のアイディアをメンバーに正しく伝えて理解してもらい、それをチームで共有することがすべての作業の前提となる。
(工藤氏)
だからこそ模型が必要でした。模型が あると議論する上でとてもわかりやすいのです。 そして、さらに仕事を続けて行くうちに、それはチーム内だけでなく、施主や施工者、地域住民にとっ ても同じなのだということがわかってきましたね。
建築のプロならともかく、一般人である施主や 地域住民にとって、2次元の平面・立面・断面図 を見て、頭の中で立体化することは至難の技だ。しかし、建築模型ならばそれを容易に理解してもらえる。工藤氏らにとって、アイディアを練るためにも、またそれを他者に伝えるためにも、建築模型は欠くことのできないコミュニケーションツールだったのである。
(工藤氏)
その延長線上に現れたのが、ARCHICAD などの3次元CADです。
建築を立体で考え、立体で検討する
(堀場氏)
建築は立体的なものなのですから、立体的に考え、立体的に作るべきなのではないか。常にそのように考えています。
そう語る堀場氏も、工藤氏同様、建築模型を多用する建築家の1人である。平面を書き、壁を立ち上げ、屋根をかけて・・・という図面主体の流れでなく、いきなり立体物として考えたい、いや考えるべきだと同氏はいう。
(堀場氏)
頭の中にあるアイディアはすでに立体なのですから、それをわざわざ2次元化して図面に出力することは手間がかかりますし、建築を表現する手段としては精度も不十分です。だからこそ模型が必要だと考えます。模型を見ながら、この壁をこう曲げるとどう変化するか、どう建てるのが最良かなど、いきなり検討したいのです。特に、安価で作業性も良くて強度もあるダンボールが私は好きで、初期段階の検討などは、これでずいぶんと模型を作りました。
その延長線上にARCHICADなどの3次元CADの活用があるという点は、堀場氏も工藤氏と同じである。だからといって両氏とも建築模型を作らなくなったわけではない。今ではARCHICADを駆使してさまざまなレベルのスタディを行いながら、同時に建築模型は建築模型として作り続けているのである。
(堀場氏)
3次元CADに関しては、実際にデザインを行うためのツールとして使いたいという思いが強くあります。ARCHICAD自体のハンドリングが徐々に良くなってきていることもあり、少しずつですがARCHICADの比率が向上しつつあります。たとえばグレーチングなど細かい目が入った材料を重ねた時、どのようになるかを知りたい場合、それを模型で再現することは困難ですが、3次元CADなら実際に近い表現で作ることができ、確認もできますからね。角度を付けてみるとか、目のピッチを変えてみるなどの試行錯誤も簡単です。
昔ならば、頭で想像し、推測するしかなかった世界を、今は自分の目で確かめられるのだという。
ツールの進化が発想の幅を拡大する
(工藤氏)
このグレーチングの検討作業にしても、昔であれば手段がなく、比べようもなかったことが、今はARCHICADを使って何十通りも比較検討した上で、設計者自身が納得して選ぶことができる。作り手としては検討の幅が広がり、納得できるまで粘れるのです。ただし、それが単純な効率化に繋がっているわけでは必ずしもないと思います。むしろ仕事量は逆に増えたと考えるべきでしょう。選択の幅が広がり、粘れるようになった分だけ、作業量は増えているのです。
それはもちろん、デザインのクオリティを上げるための時間が増加したということを意味する。シーラカンスK&Hのようにチャレンジングな事務所にとって、3次元CADに代表される新しい技術・新しいツールは、自らのクリエイティヴの可能性を拡大する重要なカギなのである。たとえば同社の最新作品の1つである「金沢海みらい図書館」では、外壁に6,000個もの円窓を開けるなど、前例のない設計だったこともあり、ARCHICADや建築模型などを含むあらゆるツールを駆使して検証したという。
(工藤氏)
模型は1/50から1/10の巨大なものまで作り、CGも四季折々の日照をシミュレートしました。また3Dバーチャル施設を作って原寸で投影し、立体映像をチェックするということにも挑戦しましたね。ここまでできるプロジェクトはそうそうありませんが、特殊なことをやろうと思ったら、こうした新しいツールを理解し、上手く使う必要があるのは確かでしょう。
(堀場氏)
だから、ARCHICADももっと手軽に使えるようになるといいですね。個人的には、ダンボールをカッターで切って模型を作るような気楽さで使えるツールになってくれると嬉しいです。今後は、他業種とのコラボレーションや国際間の時差を利用した活用などにもチャレンジしたいですね。
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